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京王電鉄の決算で見る鉄道利用者の動向

渋谷区を中心に中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

今日は京王線の決算説明資料から、コロナ過での鉄道利用者の動向をみていきたいと思います。

定期利用者と定期以外の利用者数は共に大幅ダウン 

2020年度の京王線の利用者数は対前年比で約33%の減少と大幅な落ち込みとなりましたが、運輸収入はわずか1%程度の減少で済んでいます。

 

2019年度の対前年比での利用者数は約1%弱の減少で、運輸収入が約2%程度の減少となっているのと比較すると、コロナ禍の影響が丸1年の間続いている2020年度の稼ぐ力は目を見張るものがあります。

 

では、なぜこのような結果になったのでしょうか?

定期外利用者数は減るも運輸収入は増加

安倍政権下のもと、一般のサラリーマンの方々の多くは感覚として、経済が好調のようには感じていないと思いますが、非常に緩やかではありますが、好調な経済が長く続いていました。

 

そのため定期及び定期外利用者の全体数はコロナの影響が出ていない2018年までは緩やかですが増加しています。

 

注目すべきは定期外利用者数の増加です。経済活動が活況であれば当然、営業の機会も増え、現役世代も定期外での電車移動も増えますが、更に大きなインパクトを与えているのが、会社をリタイヤ又は毎日会社へ通う必要が無くなったシニア世代の方々の増加とその行動力です。

 

リタイア又はリタイア手前のシニア世代が2015年以降増加し、更に活発に動いた結果、定期外利用者が年増加しています。

 

しかしながらコロナの影響が本格的にでた2020年度の定期外利用者数は減少となりました。主な理由はコロナによる重症化リスクが高いシニア世代が一斉に外出を控えたからです。

 

にもかかわらず、運輸収入は微減にとどまっています。一体なぜでしょうか?

大企業のテレワークが本格的に進んでいる!? 

この大きな理由は、テレワーク等の普及により、会社に毎日通勤する必要が無くなったサラリーマンの方が定期券の購入を止めた(止めさせられた?)のが大きな要因と考えられます。

 

2020年度の通勤定期の利用者数の減少は約58%にのぼります。

 

中小企業で働く方は日本全体の働いている人の数の中で約7割弱と言われており、テレワーク導入を主導する大手企業の数は限られていると言われていますが、私の親族を含む関係者やお客様の中には、会社が事務所の賃貸借契約を終了したり、オフィスを売却したという話が実際に相当数出てきています。

 

週に1回、又は月に2回から3回程度の出社で良くなったために、会社が定期を廃止し、実費精算しているという話が多く出ています。

 

東京都心部に移り住む方は30代から40代の子育て世帯を中心に増加していますが、まだまだ都心近郊から通勤する人の数は相当数おり、この方々が定期外利用者として、運輸収入の増加の大半を担っているものと思われます。

 

定期外利用者数のうちシニア世代の外出自粛により電車利用が大幅に落ち込む一方で、定期券が支給されなくなったサラリーマンの多くが切符を購入して電車を利用することによって、運輸収入が増加しました。

 

定期は土日利用も関係ないので、休日に定期を使って行動してきた人も、今度は休日の移動の際には、自腹で切符を購入する結果、割安な定期よりも切符を購入する方が増え、運輸収入にプラスに働いている一因になっていると推測されます。

 

実際には、定期が無くなっただけで、同じようにスイカやパスモを使用するので、あまりいくら使ったのか実感が湧かないのも定期外利用者の増加に寄与しているかもしれません??

 

今回は京王線の決算説明書で、テレワークの普及状態との因果関係を考察してみましたが、他の路線でも同じような現象となっています。既にニューノーマルな時代が現実化していると言えるのではないでしょうか?