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サブリース契約の問題点とは?

渋谷区で主に中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

今日は、2020年6月に制定された賃貸住宅管理業法についてお話したいと思います。賃貸住宅管理業法では、サブリース事業に関して、サブリース業者だけでなく、サブリース事業に関与する建設会社、住宅販売会社、FPなどの営業行為に関しても、かなり厳しい規制を設けています。

 

サブリース業者を「特定転貸事業者」、サブリース契約を「特定賃貸借契約」と定義して、誇大広告等の禁止や不当勧誘等の禁止を全面的に打ち出しているのです。なぜこのような厳格な規定を定めたかについて話したいと思います。

借地借家法32条の賃料増減請求権は悪徳サブリース事業者にとっては伝家の宝刀!?

借地借家法32条の条文は下記のとおりです。

 

「建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下、その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。」

 

この条文は、解釈の仕方によって、不動産オーナーにとっては非常に不利な法律となります。簡単に言ってしまえば、近隣の相場と比較して家賃が高くなったら、契約の条件にかかわらず賃借人(サブリース業者)から「家賃の値下げを行います。」と一方的に言われてしまう可能性があるのです。

 

サブリース事業を行う業者は建設請負も行っている場合が多く、自社の建築仕様で建物を建設してもらい、相場賃料から80%前後の賃料を保証してサブリースを行うのが一般的です。

 

しかし、一部で「初期の価格設定を相場の借り上げ賃料以上に設定した事業収支を作成」したり、「家賃が上がり続けます。」「35年間家賃が変わらない安心の一括保証です。」「維持管理費はかかりません。」等いろいろ、魅力的な営業提案をしておきながら、数年後には借地借家法32条を持ち出し、「借地借家法は強行規定であり、自社も厳しいので家賃を下げざるを得ません。」等の内容で、賃料を一方的に下げるというケースが問題になっています。

 

悪く言うと、サブリース業者は自己資金をほぼ使わずに、自分達が管理しやすい新築物件を不動産オーナーに建設してもらい、そこで特命工事で儲けて、その建設資金に見合った利回りを確保できるバラ色の家賃設定を行い、3年後には周辺相場と乖離したので、支払家賃を減額します。と平然と言ってくる可能性があるのです。

 

実際にそのように減額されて裁判になっているケースも多々あるのです。

 

本来であれば、事業そのものを運営している賃借人(サブリース業者)の方が強者のはずだと思うのですが、サブリース事業といえども、その形態は賃貸借契約であり、借地借家法32条が適用され、賃貸人(不動産オーナー)が強者、賃借人が弱者という戦時下における強硬規定の法体系がそのまま適用されてしまうのです。 

賃貸住宅管理業法が借地借家法の問題点を解決する?? 

最高裁の判例では、サブリース契約の法的性質は賃貸借契約であり、借地借家法が適用される契約であり、当然強行規定である32条が適用されるというのが原則となっています。

 

一方で、契約締結前後の事情を総合的(契約前後の値段設定の決め方やサブリース会社の提案内容等)を総合的に配慮する必要があるとしています。

 

今回の賃貸住宅管理業法では、サブリース業者のみならず、サブリース事業に関与し何らかのインセンティヴを受ける者も含めて、広告や勧誘に規制と罰則を設けています。

 

サブリース事業は賃貸借契約であるが故に、借地借家法第32条の強行規定が適用されるという法体系を変えずに、サブリース業者等の不当な勧誘や広告には、賃貸住宅管理業法の罰則が適用され、この罰則が適用された場合には、「判例の中の契約締結前後の事情を総合的に判断」という内容を「賃貸住宅管理業の事情に応じた罰則」が補完する形となるのではないでしょうか?

 

私はサラリーマン時代に住宅管理の協会に入会していたので、サブリース業者とは数社面識があり、多くの会社が真面目にやられていました。

 

現在、弊社は全宅(ハトのマーク不動産協会)の下部団体である全宅管理という不動産管理会社が集まる団体の賛助会員になっています。

 

この団体には数千戸以上、中には1万戸以上の賃貸住宅を管理している会社も数多く入会しており、多くの代表者の方がサブリース事業は基本的に利益相反になる可能性が高いのでやらない。サブリース事業をオーナから求められて展開している企業では、サブリース事業を行う場合には、「オーナーにはしっかりとリスク説明を行っている」と団体設立当初の10年前から言われていました。

 

これらの方々は高い志を持った方が多く、一部の悪徳業者の振る舞いが、健全に管理業を行っている企業があるにもかかわらず不動産管理業界全体のイメージをダウンさせているとして、今回の法律制定に深く関わっていたようです

 

今後、健全なサブリース業者が発展していくことを望みます。