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不動産オーナーからサブリース業者は解約できない??

渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

前回は借地借家法第32条の賃料増減額請求の強行規定の条文はサブリース契約をした際に、オーナーにとってリスク要因となり得るとの話をさせて頂きましたが、仮に一方的に家賃を下げられた場合、契約不履行を理由にサブリース契約をオーナーから解除することは可能なのでしょうか?

 

結論を言うと借地借家法第28条(更新等の拒絶要件)が問題となり、そう簡単にはオーナーからサブリース契約を解除することはできません。

 

これも賃料減額請求と同様に、一部のサブリース業者が法律をかざして、なかなか契約解除に応じないケースがあります。

借地借家法第28条(更新拒絶等の要件)とは? 

借地借家法第28条は下記の通りです。

 

建物の賃貸人による借地借家法第26条(建物賃貸借契約の更新等)の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のはか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

 

とされています。

 

満室保証や滞納保証がつき、当事者いずれか一方の申入れにより賃貸借契約は解約ができる旨の特約がついたサブリース契約であるにもかかわらず、サブリース業者が空室を理由に家賃の支払義務を怠ったとしてオーナーが解約を申し入れましたが、解約に応じずに物件を占有していたため、サブリース業者に対して、オーナーがおこした裁判の判例の概要は下記の通りです。

 

借地借家法第31条と同様に、満室保証契約や滞納保証契約というサブリース特有の特約があったとしても、サブリース業者に建物を使用収益させ、その対価をオーナーへ支払うという形態は賃貸借契約であり、借地借家法の適用となり、当然、借地借家法第28条が適用される。

 

そのうえで、更に、自由な解約の申入れの定めは借地借家法第30条の定めにより無効であるという判決内容でした。

 

借地借家法第30条とは「この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは無効とする」という、いわゆる強行規定です。

 

この判例では、サブリース業者はサブリース事業を行ううえで、根幹をなす本建物は経済上必要不可欠なものであり、更に、オーナー側が立ち退き料を支払うとした提示額が少なすぎたため、どちらが本建物を必要としているかを考慮するとサブリース業者にその必要性があるとしました。

 

言い換えれば、所有者であるオーナーよりも約束を守らないサブリース業者が利用する方が大切だという内容です。

オーナーにも知識が必要 

先ほど提示した裁判例では、裁判官は、サブリース業者が契約書にわざわざ特約として、自由な解約ができると記載して、オーナーと契約した件に関して、オーナー側から信義則に反すると主張がでたのに対して、自由な解約の申入れがそもそも無効であるから、サブリース業者が借地借家法に基づく主張をすることは信義則に反しないとして、オーナー側の請求を退けています。

 

オーナーの自己使用の必要性が低かったため、このような判決が出たものと思われますが、サブリース業者がそもそもオーナーからの自由な解約は無効とわかっていても、意図的に契約書に特約で条文を入れ、裁判になった際は、それがとがめられない。という判決にはおどろきです。

 

ちなみに、オーナーが自己使用する必要性が高かったり、建物旧耐震物件で老朽化が著しかった場合等緊急性が高い事案に関しては異なる判例が出ています。

 

賃貸住宅管理業法ではサブリース業者であれば当然知っている内容をわざと告げない行為(事実不告知・不実告知)は第29条(不当な勧誘等の禁止)として罰則規定が設けられており、恐らくこの判例を意識したものではないか?と個人的に感じています。

 

さきほど判例の内容を見る限り、オーナーは相手にいわれるままではなく、自らも法律知識を学ぶか、又は弁護士等に契約条文のチェックをさせないと、ダメだと言うことです。

 

いかに契約書が重要かと改めて感じさせられます。

 

また、余談ですが借地借家法第38条(定期建物賃貸借)の場合は、家賃を減額することは出来ないと特約で定めることにより、借地借家法第32条の適用はなく、家賃の減額請求は出来ません。また契約期間の満了により契約を終了することができ、賃貸人(オ-ナー)からの解約はできません。