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マンション売却で利益が出たらどうなる?

渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

最近、都心部の中古マンションの価格が上昇していることとテレワークの普及により、都心部に居を構える必要がなくなった一部の方が都心部に購入したマンションを売却しています。

 

実際、物件価格自体、購入したときよりもかなり高く売却出来た方も多くいらっしゃいます。

  

そのような場合、利益に対して税金がかります。

 

今回は売却した際の事例を参考にして、実際にかかる税金や手許に残るお金の計算をしたいと思います。

居住用財産を売却した場合の計算例
居住用財産を売却した場合の計算例

取得費には仲介手数料等を加えることができるが、償却費相当額を控除する必要がある! 

上記の表では購入した値段と売却した値段の差額は700万円となり、かなりの利益が出ています。これに後で説明する短期譲渡所得に課せられる税金を差し引いたとしても6,317,033円とかなりの利益が出ています。

 

単純な差額では多くの利益が出ていますが、実際には、物件を購入するには一般的に5%~8%程度の諸経費がかかるので、しっかりと計算するのであれば、この諸経費まで含めて計算しなければいけません。

 

上記の事例で言えば、購入時に諸経費が別途約344万円かかり、更に売却時には、売値から諸経費約178万円をマイナスする必要があり、あわせて522万円も諸費用がかかっています。

 

このように総費用で見た場合、物件の表面的な売却益は700万円ですが、実際の利益は約178万円となります。

 

(上記の計算方法は、ご自身のお住まいを購入する際に投資目線で見ることも多角的な視野で見るという点で参考になると考え、記載させて頂きましたが、ご自身のお住まいと投資物件とは一線を置いた方が良いと思いますので、あくまでも参考程度に留めてください。)

 

この利益に対して、所有期間が5年以下なので、短期譲渡所得の税額が課せられ、実質の利益は68万円程度と、実際には10分の1程度になってしまいます。

  

ただ、別の見方をすれば、まる4年間、管理費と修繕積立金(月額3万円)、固都税(年13万円)で合計196万円を支払うだけで、都心中心部に近いエリアに住むことができ、更に利益68万円を引くと実際には4年間で128万円だけ住居費用として支払ったことになります。

 

これを賃料とみた場合、月額27,000円の賃料となります。※厳密にいうと住宅ローンの4年間の利息の合計額もプラスする必要があります。

 

本事例のマンションは都心中心部に近いエリアで70㎡のファミリータイプで賃貸相場は20万円を超えていますので、ただ同然で暮らすことができたと考えれば、かなりお得感があります。

 

差額を貯金したとすると実に4年間で貯金額は830万円を超えることになります。

 

では、次に売却時に利益が出た場合の税金の計算方法をお話します。

 

物件を売却して、利益が出た場合には「課税譲渡所得金額」に対して所得税、住民税、復興所得税がかかります。

 

この課税譲渡取得金額の基本的な計算方法は下記の通りです。

売却価格-(取得費+譲渡費用)=課税譲渡所得金額

 

取得費には購入代金、仲介手数料、印紙、登記費用、リノベーション費用(改良費)を含めることができる反面、建物は経年により劣化していくので、経過年数に応じて減価償却費相当分を取得費から差し引かなければなりません。

 

この減価償却費相当分を取得費から差し引かなければならないのが、大きなポイントです。

 

個人の方から購入したマンションの場合は土地と建物が一体なので、建物の金額がわかりません。

 

このような場合のために、建物部分の計算方法が国税局から示されていますが、この計算方法は、次回ご説明します。

 

また、売却に要した仲介手数料、売却時にかかった登記費用、売主負担の印紙税も費用に入れることができます。

 

但し、管理費や修繕費、固定資産税のような資産の維持や管理費用は譲渡費用に含めることができません。

 

上記により計算した課税譲渡所得金額に対して、売却した年の1月1日において所有期間が5年を超えるもの(長期譲渡)と5年以下(短期譲渡)に分けて、それぞれ以下の税率がかかります。

長期譲渡所得の税額 課税譲渡所得金額×所得税15%・住民税5%・復興所得税(所得税×2.1%)=税額

短期譲渡所得の税額 課税譲渡所得金額×所得税30%・住民税9%・復興所得税(所得税×2.1%)=税額

 

譲渡するまでの所有期間が5年を超えるか超えないかで税率が倍近くも変わりますので、お住まいになって5年未満の方は売却時期は慎重に検討した方が良いかもしれません。

 

なお、今回は話が複雑になりますので、買い換え特例や3,000万円の特別控除のお話は、また次回以降にお話したいと思います。

購入価格より売却価格が安くなっても税金がかかる場合がある!! 

先ほど、税金の計算方法の中で、建物が経年により劣化していくのでその分を減価償却費として差し引く必要がある旨を記載させて頂きました。

 

ここが大きなポイントで、自分では売却した金額から取得費を除いたらマイナスなので、利益は出ていないと思っていても、税金がかかる場合があります。

 

例えば売却を考えているRCのマンションの建物価格が2,000万円だった場合、減価償却費は年間27万円となります。

 

そのマンションが建築されてから20年経過したマンションだと540万円の減価償却費相当分を取得額から差し引く必要があります。

 

単純に言えば3,000万円で取得した物件を2,700万円で売却して、300万円の損が出ていても、課税譲渡所得金額の計算上は240万円の利益が出たとみなされて、課税譲渡所得金額×所得税15%・住民税5%・復興所得税(所得税×2.1%)の税額487,560円がかかることになります。

  

実際には、例え利益が出た場合でも、買い換え特例等を利用する方が多く、譲渡所得金額にかかる税金はかからないケースが多いですが、特例はあくまでも特例なので、基本はここまで記載させて頂いた内容となります。