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湾岸エリアのタワマンは首都直下地震に耐えられるのか!?

渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行っている株会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

2022年5月25日に東京都から「首都直下地震等による東京の被害想定」が発表されました。

 

首都圏の湾岸エリアにはタワマンが多く建っていますが、これらのタワマンは津波等の被害にあわないのでしょうか?

 

下記の図は南海トラフ巨大地震が起きた場合の津波の高さや最大浸水深を想定した図の一例です。

東京湾岸エリア内の最大津波高は2.5m未満 

東京都が公表したシミュレーションは上記以外にも何パターンかありますが、上記の図を見る限り、江東区で最大津波高は2.47mで、中央区、港区、品川区、大田区、江戸川区はいずれも最大津波高は2mを超えますが、2.1m~2.4m以内に収まっています。

 

わずかな津波でもその破壊力と被害の大きさは、はかり知れませんが、東日本大震災の際の津波は最大で数十m以上だった事と比較すると、軽微なものといえます。

 

また、津波による最大浸水深は人の住んでいない中央防波堤外側埋立地で1m以上2m未満、羽田空港や工場や倉庫のある城南島で0.3m未満となっています。

 

人が住んでいるエリアとしては、多摩川が大きく蛇行している大田区の六郷エリアが0.3m未満、若しくは0.3m以上1m未満、平和島競艇場で0.3m未満、勝島運河(立会川駅東側)で同じく0.3mの最大浸水深となっています。

 

この結果から見る限りでは、湾岸部分のタワマンは津波の被害を受けないであろうと想定されます。

 

但し、上記はあくまでも首都直下型地震が発生した際の津波の高さや、浸水する深さの想定であり、大雨や高潮等による堤防決壊の想定では無い点に注意が必要です。

 

地球温暖化による異常気象に伴う浸水リスクは各地域の浸水ハザードマップ等で別途確認しておく必要があります。

電力、上下水道は直ぐには復旧しない?? 

東京都が公表した資料「身の回りで起こり得る災害シナリオと被害の様相」では、震災発生から1週間後の状況を下記のように想定しています。

 

電力:発電所の停止などによる電力供給の不足により、計画停電が継続する場合には、エレベータが使用できなくなるリスクがある。

 

水道:断水・濁水は段階的に解消するが、浄水施設等の被災がある場合には断水は継続するリスクがある。

 

下水:排水管等の修理が終了するまで、集合住宅では、水道供給が再開してもトイレが利用不可になるリスクがある。

 

との内容になっています。

 

例えば三井不動産レジデンシャルでは、2011年にマンションの防災基準を強化策として

・災害発生時に居住者の生命や財産を守る対策として、免震構造の採用、長周期地震動対応、エレベータ対策

・災害発生後の居住者のライフラインを確保するため、電気の確保、水の確保、液状化対策

・各居住者による共助活動を円滑にするために、防災備品や防災倉庫の設置、震災マニュアルの作成

を掲げて取り組んでいます。

 

具体的には、エレベータは復旧しやすい耐震クラスで最上級のものを採用、非常用発電設備の燃料を法定分より増量して備蓄、設備稼働が普及するまでの目安の3日間の非常用発電設備の燃料を計画的に有効利用、雨水を共用トイレの排水用に利用するために非常用水貯留槽を設置、飲料水に対しては各居住者の自主的な備蓄を促す以外に、全居住者1日分の飲料水を共用防災備品で用意するなどの対策です。

 

また、下水に関しては排水管等の修理が終了するまで、集合住宅では、水道供給が再開してもトイレが利用不可になるリスクがあるとの事ですが、「可とう継ぎ手」を採用することにより」、液状化現象で生じた地盤のずれによる損傷を低減させる等の対策を行うとしています。

 

これらの強化策は、2011年(平成23年)12月以降に設計を開始した新築マンションに対して行っているとのことです。

 

同様に三菱地所レジデンスは「ザ・パークハウス」の災害対策を2011年10月以降に設計を開始するプロジェクトで強化しており、免震構造や耐震構造、防災倉庫の設置、非常用電源に加え、湾岸物件に対しては、隣接防潮堤の高潮・津波に対する対応基本条件の開示、液状化への対応基本条件開示、液状化発生時の外部設備配管更新新対策を掲げています。

 

これらを勘案すると、2013年から2014年以降に完成したマンションであれば、かなりの対策がとられているということになります。

 

但し、東日本大震災前に設計された物件では、東京都が想定した「身の回りで起こり得る災害シナリオと被害の様相」で指摘されたリスクが顕在化する可能性があります。

 

また、マンション自体は地震による倒壊リスクは極めて少ないものの、震災後、3日間でインフラが普及すればあまり大きな問題は生じないのですが、東京都のマニュアルでは1週間以上復旧しない可能性があるとのリスク表示がされており、緊急事態に対応できる3日間を過ぎた、残りの4日間をどう過ごせば良いのかが問題となります。

 

地震が起きないことに越したことは無いのですが、食料や飲料水、携帯用ガス缶などは消費期限があるため、定期的な交換が必要になりますし、大量に備蓄するのは、経済的にも物理的にも問題があり現実的ではありません。

 

となると、高層階に暮らす方々はこの4日間は外に出なくても良い食糧確保等をしておかないと、何十階もある階段を上り下りしなければならないことになります。

 

湾岸エリアは倉庫や工場等の跡地である広大な敷地が残されており、広大な土地を比較的確保し易かった事や防潮堤の設置等により、高潮や津波に対する安全性も高まり、タワマンがどんどん建設されました。

 

また、建築技術や防災意識の高まりにより、建物もほぼ倒壊するリスクは無く、津波も最大で2.5m程度であれば防潮堤を超えるリスクも低い。

 

逆に生活するうえでは、震災リスクを凌ぐ、スーパーや保育施設等の併設による利便性、パーティルーム、会議室、テレワーク環境、シアタールーム、ジム等の共用施設の充実、部屋からの眺望の良さ等多くのメリットがあります。

 

これらを勘案すると、かなりの面で暮らしやすく、防災面でもかなりの安全性が担保されているという結果が導きだされます。

 

但し、注意点は、先ほどの震災復旧が4日以上になった場合です。

 

それとこれはまた別のお話になりますが、海に面した湾岸エリアは塩害により建物が痛みやすい点と高さ60mを超えるタワマンは大規模修繕工事を行うことができるゼネコンが限られているため、大規模修繕工事の費用が割高になる点がマイナス面といえます。

 

これらプラス面とマイナス面を比較したうえで、湾岸エリアのタワマンの購入を検討された方が良いと思います。