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新宿区タワマン実態調査(町会や自治会から見たタワマンの立ち位置)

渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

新宿区では令和元年(2019年)に新宿区内にあるタワマン向けに様々な面からアンケート調査を実施して、その調査結果を2020年6月にインターネット上で公表しています。

 

12月25日と26日に続けてこの「新宿区タワーマンション実態調査報告書」の内容について、タワマンで暮らす人たちの意識や管理組合の考え方についてお話しさせて頂きましたが、今回はタワマンが所在する町の町会や自治会がタワマンをどう感じてるのかについての内容を見ていきたいと思います。

 

新宿区内のタワマンのある町会・自治会にインタビューした結果によりますと、地域住民とタワマン居住者との交流の必要性については、23 町会中 20 町会が必要と回答し、87.0%が必要と認識しています。

 

の理由として、防災・防犯が20町会中19町会(95.0%)であり、この内容は、居住者アンケートの中の参加してみたい地域行事で防災に関する活動が24.1%と最も多くなっており、町会とタワマン居住者の意向が重なっています

 

その一方で、23町会中20町会が交流の必要性について必要と回答していますが、22町会中10町会の45.5%が町会・自治会未加入のタワマン居住者に向けた地域行事への参加への呼びかけなどを特におこなっていないと回答しており、交流の必要性を認識してはいるものの、町会からの働きかけを行っていない状況となってます。

 

タワマンの場合はセキュリティが厳しく、特にハイクラスのタワマンはどうしても敷居が高く感じてしまい、町会の役員が最初から無理とあきらめてしまうケースもあるのだと思います。

新宿区内のタワマン 西戸山タワーホウムズ 
新宿区内のタワマン 西戸山タワーホウムズ 

タワマン居住者の町会・自治会への加入について 

タワマン居住者の町会の加入は、対象タワマン33 棟中、タワマン全体で加入しているタワマンは 9棟となっています。

 

その場合の議決権はタワマン1棟で1票が基本となっていますが、会費の負担割合で複数票の議決権を認めている町会もあります。

 

町会に加入している場合の会費の納め方については、居住者が個々に加入のタワマンは31.3%ですが、タワマン全体で町会に加入しているタワマンでは、88.9%が管理会社が一括納付する仕組みを採用しています。

 

私が以前マンション開発をしていた際には、町会費に関しては、管理組合として、町会に管理組合から一括で振込を行う方式を推奨していました。

 

タワマン居住者との連携・コミュニティについてのインタビューでは、タワマン内に町会のチラシを掲示している、祭礼で公開空地を利用している、町会防災倉庫(10坪)をタワマン内部に設置している、管理組合理事会の防災担当理事が、町会の防災部長を担っている等の回答が得られています。

 

また、学校、企業と連携したイベントを実施し、タワマン住民との交流を進めていると回答した町会もあります。 

 

タワマンに限定するのではなく、大規模なマンションの場合にはマンション内で管理組合とは別に自治会をつくり、その自治会が主体となって防災活動やマンション内でのお祭りを催しているケースも数多くあります。

 

今回の管理組合向けアンケートでもタワマンでの自治会組織の有無を尋ねており、総回答数27件のうち、管理組合内に一組織として自治会があると回答した管理組合が2件、管理組合とは別に自治会組織があると答えた管理組合が3件となっています。 

タワマンと町会の交流の活性化について 

町会へのインタビュー調査では、地域コミュニティの活性化や防災上、地域全体での連携が必要なことから、タワマン居住者の入会を歓迎する町会が、22 町会とほとんどで、うち9町会が、タワマン全体での加入を希望しており、11 町会が、タワマン居住者個人での町会参加を希望しています。

      

その一方、管理組合向けアンケートでも町会への加入について、「あまり思わない」が8組合、「全く思わない」が3組合あり、理由について、4組合が「必要性を感じない」、4組合が「忙しい」と回答しています。 

 

管理組合の意識がうすい場合は、防災に関する情報交換を通じた交流の促進から始めるなど、個々のマンションや町会のそれぞれの意向を踏まえた関係づくりを進めていくことが重要としています。 

 

管理組合向けアンケートでは、27組合のうち14組合で自主防災組織がないと回答しており、町会の防災活動に組織として参加については、参加している、今後組織として参加したいとの回答は、合わせて9件となっています。

 

その一方、居住者向けアンケートでは、町会・自治会が行う防災訓練に積極的に参加しようと思うかとの問いに、3分の1以上が参加したいと考えています。

 

こうした状況から、自主防災組織の立ち上げのサポート等防災をきっかけとしたタワマン内交流の活性化支援を行い、地域との連携を強化するため、地域コミュニティ事業助成等各種助成金の活用の働きかけや、公開空地等タワマン内の施設を活用した交流事業の支援など、タワマンと地域団体との交流・連携の機会を作っていくことが重要としています。 

番外編~タワマン居住者向けのインタビューについて~ 

新宿区のタワマン実態調査(居住者編)では、アンケート調査に回答してくれた調査結果を載せていますが、この新宿区の調査では、インタビュー方式でも調査を行っており、興味深い内容も含まれていましたので、番外編としてご紹介したい思います。

 

これにより、よりマンション内の具体的な活動内容がわかっています。

 

今回の居住者インタビュー調査では、42棟中15棟を対象とし、タワマンごとに1名から最大8名、計53名の方にインタビューを行っています。

 

マンション内での交流に関して 

コンサート、ハロウィン、クリスマス、餅つきなどのイベントを開催し、棟内交流を図っているマンションが15棟中8棟となっています。

 

そのうち、マンションに自治会がなく管理組合が主催又は補助しイベントを実施しているマンションも4棟となっています。

 

地域との交流に関して 

地域との交流がない(53 人中 29 人)ということについては、基本的に、居住者向けアンケートと同様の傾向となっています。であった。

 

そうした中で、地域イベントへの協賛金や公開空地の提供などの協力、理事会内に町会担当を置くなどの個別の取組事例があることがわかりました。 

 

防災に関して 

居住者向けアンケート結果と同様に不安がないと答える方がいる一方、大規模災害時のインフラの停止、エレベーターの停止等、現実に令和元年の台風19号で被害のあった武蔵小杉のタワマンの事例から、不安があるとの意見が出ています。

 

地域の避難所運営訓練への参加等、積極的な取組事例もあった一方で備蓄物資の不足や非常用電源の稼働時間等の課題は認識しているものの、具体的な取組に至っていない等、居住者向けアンケートで明らかになった状況が本インタビュー調査でも同様の状況が確認できています。 

 

その他 

子育て環境については、居住者向けアンケートでも確認できたキッズルーム、パーティールーム等付帯設備を活用した交流が居住者の一部にとどまるとの話もある一方で、子育て世代の居住者グループがマンション交流イベントを企画しており、行政の支援を望むという話も出ています。

 

高齢者施策については、居住者向けアンケートでは現在及び今後に関しての心配事について、現在はないが将来的に心配があるが 46.9%で最も多く、高齢者支援について検討部会を立ち上げたタワマンや災害時に避難支援が必要な方の名簿登録を始めるなどの具体的な取組を行っているタワマンもあることがわかりました。

 

その他、近隣マンション管理組合理事会と情報を共有したいので、行政に交通整理を望む等の話も出ています。