· 

マンションの寿命は実際どれくらいなのか?

渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

中古マンションのご購入を検討してる方から、マンションの寿命はどれくらいなのでしょうか?とか、築古マンションは価値があるのでしょうか?といったご質問を、受けることが よくあります。

 

では、そもそもマンションの寿命は実際のところ、何年程度なのでしょうか?

 

日本の税法上の鉄筋コンクリート造のマンションの耐用年数は47年となっています。

 

但し、これは法人税などを計算するうえでの統一された基準で減価償却費を計算するための規定された紙面上の年数であり、実際のマンションの寿命ではありません。

 

マンションはしっかりと修繕を行っていれば100年は大丈夫というお話もありますが、下記の観点で判断することも重要なテーマだと思います。

 

◆耐震性

日本は地震大国であり、大きな地震が日本各地で頻発しており、マンションを購入するうえで、耐震性能は外せない大きな要因の一つです。

 

具体的には、1981年6月以降に建築確認申請を取得した物件が新耐震基準で、それ以前のものは旧耐震物件となります。

 

旧耐震のマンションでは、コンクリートの性能から鉄筋の量、施工法などが異なっているため、大きな地震に対する耐力が新耐震基準の建物に比べると残念ながら低く、実際に大きな地震が起きた際にも、旧耐震の物件の方がはるかに倒壊や崩壊という被害が出ています。

 

では、そうした旧耐震基準のマンションは耐震診断を受けて、耐震改修工事を行えば問題は解決するのかというとそう簡単な話ではありません。

 

耐震改修工事を行っても、現行の耐震基準と同等の耐震性が確保できるわけではなく、あくまでも倒壊などを防ぐという意味で、一定の効果があるということになります。

 

マンションの場合、柱や梁に囲まれた部分に鉄骨の筋交いを増設するなどの耐震改修工事を行うことになりますが、美観性の問題もあり、なかなか耐震改修に踏み切りにくいという事情もあり、直下型の地震があった場合には倒壊する可能性が高くなってきます。

 

◆物理的な経年劣化

建物全般に言えるのは、寿命というのは修繕の状況によってかなり変わってきます。

 

建物を長くもたせようと思えば寿命を伸ばすことは、限度はありますが不可能ではないと言われています。

 

実際、ヨーロッパでは数百年経った家でも人が住んでいますし、日本の古刹もしっかりと建物としての機能を残したまま現存する建物も多いです。

 

新耐震基準のマンションで、定期的に構造躯体や防水・仕上げ、配管などの修繕を適正に実施していればかなり寿命は延びると考えられています。

 

マンションの寿命はマンションの管理に左右される事になりますので、ご自身の住んでいるマンションや今後購入しようと考えているマンションの管理状況(修繕履歴と長期修繕計画書)はしっかりと確認しておくべきです。

 

建物は築年数によって修繕箇所も増えていき、その分費用もかかってくることになりますが、建替えとなると費用が更にかかるので、ある程度の修繕費は考慮しておく事が必要となります。

 

◆機能的劣化

マンションの寿命は物理的な劣化だけではなく、機能的劣化も考慮する必要があります。

 

新築時には最新設備として導入したものも、時代の移り変わりと共に、高機能製品が開発され普及することにより、相対的に古く使いにくいものとなってしまいます。

 

このような現象を機能的劣化といい、エレベーターや防犯システム、給排水設備の給水方式などが代表的な例です。

 

当時は最新だった設備でも、新たな製品やシステムが開発されることで、いずれは新築時の付加価値が失われてしまうのです。

 

◆社会的劣化

居住者のライフスタイルや世の中のニーズの変化に対し、機能や設備が不足してニーズを満たしていないことで建物の価値が下がってしまうことを社会的劣化といいます。

 

社会的劣化の代表例としては、バリアフリーやユニバーサルデザインへの対応が挙げられます。

 

特に築年数が古いマンションではエントランスや廊下内に段差があったり、エレベーターがない、階段に手すりが付いていない等、高齢者や障害のある方にとっては、住みにくくなっている社会的劣化が大きな問題となっています。

 

最近は宅配ボっクスは標準化されつつありますし、グレードの高いマンションでは単純なオートロックだけでなく3重の防犯システムを採用しているマンションも増加しています。

 

以前は天井高は建築基準法で定める居室の床から天井までの高さは2.1mであれば良かったですが、現在は2.4mが標準となっており、これも社会的劣化の一例であり、建物を壊さない限り天井高を2.4mにすることは出来ない物件が数多くあります。

 

再開発や区画整理などによるインフラ整備やマンション建替え円滑化法などによって旧耐震の古いマンションも建替えされているものも増えてきています。

 

特に、都心部の好立地にある旧耐震マンションは、東京都区部の新築マンションが1億円をゆうに超える価格帯となり、開発できる土地も無くなっているいま、特に注目されています。

 

先述した通り、新耐震だから大丈夫という事ではないので、ご自身の住まわれているマンションであれば、修繕状況は総会などで常に議題にあがっている題目かと思います。

 

他人任せにせず、自発的にご自身のマンションの状況を把握するために総会への出席や、修繕の専門部会などに参加してみては如何でしょうか?

 

これから購入する場合については、修繕履歴のチェックと長期修繕計画書などを取り寄せて、どのように修繕が行われているかについて確認することが重要です。

 

詳細がわからない場合はエージェントに確認してもらう事をおすすめします。

建物の寿命について 

国土交通省が2013年(平成25年)に公表した「中古住宅の流通促進・活用に関する研究会」での資料によると、日本の中古住宅の住宅寿命は27年と短く、アメリカは66.6年、イギリスは80.6年となっており、特に日本の戸建住宅は築後20年で価格はほぼゼロになるとしています。

 

これから推察すると少なくとも、アメリカの66.6年からイギリスの80.6年程度を考慮した場合、メンテナンスをしっかりと行えば住宅はもつという事になります。

 

但し、そもそも住宅の品質が悪ければ、いくら修繕をしても限界があると思います。

 

そこで耐久性のある建物を調べる手法の一つとして、新築住宅の住宅性能表示制度があります。

 

新築住宅の住宅性能表示制度の中の劣化対策等級では、等級1が建築基準法レベル、等級2は今後2世代にわたる耐久性(50年~60年)、等級3は3世代にわたる耐久性(75年~90年)を維持できるという考えで等級表示をしており、鉄筋コンクリート造のマンションの場合は、下記の基準を満たせば等級3となります。 

出所 国土交通省 
出所 国土交通省 

この等級3のレベルで建てられたマンションで修繕を適切に行えば、建物寿命は75年~90年ということになります。

 

更に、長期優良住宅認定制度で長期優良住宅の認定を受けた建物は100年超えの耐久性を有するとしています。

 

問題点は住宅性能表示制度は2000年4月から始まった制度で、それより前に建設された物件では、同様の数値を調べるのは技術系の専門家でないと難しく、また、住宅性能表示制度は、あくまでも任意の制度なので取得しているマンション自体が少ない事です。

 

長期優良住宅の認定制度は2022年10月から新基準となっているので、中古マンションではまずありません。

 

比較的わかりやすい指標としては、国土交通省の「期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新による価値向上について(平成25年8月)」がとても参考になります。

 

この研究報告の資料によると、鉄筋コンクリートの寿命については実態調査で50年以上、物理的寿命で117年、構造体としての耐用年数は120年、延命した場合は150年、固定資産台帳の滅失データからは鉄筋コンクリート造の住宅は68年という数値が公表されていますので詳細は下記の表をご覧ください。

出所 国土交通省 
出所 国土交通省 

マンションの建替事例 

日本のマンションの草分け的な物件としては同潤会アパートがあります。

 

同潤会は1924年(大正13年)から1933年(昭和8年)の間に、東京13か所2,225戸、横浜2か所276戸のアパートメントと、コンクリート造の共同住宅1か所140戸を建設しましたが、築65年~70年程度でバブル期に多くの建物が取り壊されており、確か現存する物件は無く、青山アパートメントが表参道ヒルズの一角に再現し、同潤会と名付けた店舗として利用しています。

 

取り壊しが決まった際の青山アパートメントは築年数は80年近く経過していました。

 

2022年4月時点で国土交通省が把握しているマンションの建替え実績累計270件、約22,000戸の内、マンション建替円滑化法に基づく建替事例等(担当型59件、団地型42件)での建て替え決議時の平均築年数は単棟型で37.7年、団地型で43.5年となっています。

 

2024年4月1日時点でのマンションの建替えの実績は下のグラフの通り、累計で297件、約24,000戸となっています。

渋谷区内で取引された築50年以上のマンションの販売事例 

最後に渋谷区内のマンションで今年1年で実際に成約した事例を添付させて頂きます。

 

昨今の都心部の極致型マンションバブルを反映して、古くなったマンションの建替えを見越して購入されている方もいると思いますし、まだまだこれから築古物件に住もうと考えている人や海外の投資家など、それぞれ異なる思惑のある人が購入しています。

 

下記の表は実際に過去1年以内に渋谷区で取引された築50年以上、50㎡以上で、オーナーチェンジ物件以外の一覧表です。

 

年間で24件売買事例があるので毎月2件づづ築50年以上の物件が売れていることになります。

 

但し、注意点があります。

 

築古物件は耐震性の問題と、設備の老朽化による漏水が必ずと言っていいほど発生する確率が高く、上水が漏水した場合は水圧の関係上元栓を止めないと大量の水が噴き出し、被害が拡大します。

 

下水の場合は特に汚水は最悪で悪臭と消毒処理に大変な労力を要します。

 

感覚的で申し訳無いですが、不動産業に携わってから3年~5年に一度くらいは何らかの形で漏水事故の現場を見たり、対応をしていると思いますので、築古マンションをご購入する場合には水回りには細心の注意を払い、保険にも必ず入ることをお薦めいたします。

 

また50㎡~70㎡程度の物件を購入する場合には、総戸数が50戸以上でリノベ済の2階以上の物件を選んだ方が良いと思います。