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大規模修繕工事の適正な周期

渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

マンションの管理の重要性が指摘され、定期的に分譲マンションで大規模修繕工事を行うことは、当たり前の事になっています。

 

そのような中で、大規模修繕工事を行う周期は一般的に12年~15年程度とされていますが、最近は修繕工事の間隔をもう少し引きの伸ばそうとする動きが多くなっています。

 

修繕工事は、大きく分けて、事前修繕工事と事後修繕工事の2種類に分けられます。

 

事前修繕工事とは劣化の兆候が見られた時点又は劣化の状況に限らず、材料や設備の耐用年数を決めておき、故障や劣化の有無に限らず、修繕を行うという考えで、事後修繕工事とは、劣化が進み、修繕を行わないといけない状態や設備などが壊れてから直すという考え方です。

 

事前修繕工事で代表的なものは、各部屋についているディスポーザーや給湯器をマンション全体で一括で新規に取り換えるという考え方です。

 

ディスポーザーはその使用頻度や使い方、製品自体の当たりはずれでかなり製品の寿命に違いがあり、給湯機も同様です。

 

基本は各家庭で壊れたから直すという事後修繕工事が一般的なのですが、これらの製品がマンション内の数件のお部屋で壊れた場合、そろそろ各家庭で頻繁に壊れるであろうという事を見越して、管理組合でアンケ―トを取り希望者を募り、まとめて発注し、工事費用を安くするという手法です。

 

昨今は、給湯機が故障したのですぐに修理又は交換して欲しいと言っても工事業者が手配出来ないとうのはざらです。

 

特に冬季に給湯器が壊れ、何日もお湯が出ないという事態は最悪です。

 

最近の事例では納品までに1ヶ月かかると言われ、在庫がある知り合いの業者からなんとか工面して給湯器を用意してもらいました。

 

そのため、ある一定期間を経過した給湯器を故障の有無にかかわらず交換するというのは、ある意味一つの重要なリスクヘッジの手段として考えることは、理にかなっています。

 

後は鉄部の塗装工事は事前修繕が良いとされています。

 

理由はマンションの「至るところで錆が発生してから、塗装工事をしたのでは、鉄部の錆がコンクリート内の鉄筋まで浸食し、鉄筋を腐食させ、コンクリートが爆裂する可能性があるからです。

 

鉄部の錆が進行するとコンクリート内の鉄筋が錆により膨張し、コンクリートを中ら破壊しかねないからです。

 

事後修繕工事とはその言葉通り、壊れてから、又は劣化してから直すという手法です。

 

大規模修繕工事を行うにあたり、外部の修繕には足場工事が必須ですが、足場はあくまでも仮設工事なので、工事が終われば撤去するものなのですが、この足場仮設工事は非常に大きなコストがかかります。

 

例えばコーキングの一部が劣化しているのだけで、足場を組むのは不効率です。

 

外壁のタイルが複数個所で劣化しており、外壁塗装も複数個所で剥げているなど足場が必要な工事が複数箇所で必要で、耐用年数的にも限界と判断されてから工事を行うのが事後修繕工事となります。

 

マンションの外壁部分は、大きな道路に面している側の方が排気ガスの影響で汚れや劣化が激しくなります。

 

また太陽が当たる南側の方がコーキング等の劣化は激しくなり、建物が複雑な形状程、角にゴミがたまりやすくなります。

 

このように同じ建物でもその立地状況により、劣化や汚れる箇所に違いがでます。

 

これらを大規模修繕工事を行う前の事前調査でしっかりと把握し、劣化が激しい部分には予め、耐久性が高い材料を使用するなど細かな設定をすることにより大規模修繕の周期を伸ばすことも可能となります。

マンションの寿命から判断する大規模修繕

マンションの寿命については、12月28日掲載の「マンションの寿命は実際どれくらいなのか?」12月29日掲載の「東京都のマンション建替から見るマンションの寿命」でお話させて頂きましたが、50年程度が建て替えが行われる目安、すなわちマンションの寿命と考えられます。

 

但し、これは、政府の方針で地震の際に倒壊の恐れがある旧耐震物件を積極的に建替えを推進している状況も鑑みる必要があります。

 

新耐震物件であればマンションをわざわざ地震対策のために、壊す必要もないので、その分マンションの寿命は延びるはずですし、品確法が定められた2000年4月以降のマンションで等級2以上であれば、更にマンションの寿命が長くなりますので、理論的にはそれらのマンションの寿命は60年以上は普通、物件によっては100年以上十分持つマンションとなります。

 

マンションの寿命考慮し築60年まで大規模修繕工事を行うと考えた場合、12年周期では5回の大規模修繕工事が必要になりますが、15年周期であれば4回の大規模修繕工事で済むことになります。

 

仮に大規模修繕工事を18年周期とした場合は3回で54年、4回で72年となりますので、少なくとも私は15年~18年に1回大規模修繕工事を行うことが適切だと考えます。

 

足場工事に多額のお金が必要になるのであれば、ゴンドラ式という手法があるのでは?というご質問を受ける時があるのですが、私はゴンドラ式はあまりお薦めしていません。

 

タワマンの大規模修繕工事に利用される建物全体を囲む方式で足場のように固定した足場が上下動する方式であれば良いですが、部分的にゴンドラで作業を行う方法では手の届きにくい箇所は手抜き工事をされる恐れがあります。

 

私は、リーマンショック後不良債権処理の業務と同時に数年の間は生き残るために、1職人として大規模修繕工事の現場にも携わっていましたが、人間の心理として不安定な高所作業は不安定な足場では適切な工事を行うことはできません。 

大規模修繕工事の周期は15年~18年が理想 

仮に大規模修繕工事を15年周期で60年に4回目の修繕工事を行えば、少なくとも次回修繕工事が必要になるまで、築75年となります。

 

最近は大規模修繕工事で使用する製品や材料も技術の進化に伴い、性能が向上しています。

 

価格は多少高くても耐久性のある製品や材料を使用すれば18年周期でも十分許容範囲内だと思います。

 

そうなれば4回目の大規模修繕工事で72年+18年で90年間マンションを健全な状態で保てる可能性があります。

 

最近は晩婚化が進み30代半ばから40代でマンションを購入するので新築マンションを購入した場合は100歳を超えるまでマンションは問題無く暮らせるという事になります。

 

15年周期の大規模修繕工事で計算した場合でも、築20年の物件を40歳で購入した場合は40年+(75-20)=95歳までは中古で購入したマンションに住めることになります。

 

厚生労働省が公表した令和4年の健康寿命は男性72.5歳、女性は75.45歳なので76歳を健康寿命とし、そこまで購入したマンションで暮らしその後は、高齢者施設に移り住むと仮定した場合、中古マンションは築40年程度のマンションを購入しても大丈夫ということになります。 

 

但し人の一生はどのようなことが起こるか全く予想不可能なので、上記の内容はあくまでも、こういう考え方もあるという程度でご理解頂ければと思います。