渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。
都心部に住む方の多くが憧れるタワーマンションですが、数十年後に、大規模修繕工事に要する費用が足りなくなり、修繕積立金の大幅な値上げや、一時徴収の必要性が出てくる可能性があります。
一応、この定義に当てはまる高層マンションをタワマンと呼んでいます。
タワマン第1号と呼ばれているのが、1976年竣工の21階建ての与野ハウス1号棟になります。
それ以降はあまりタワマンの建設は行なわれませんでしたが、2000年頃から増え始め2003年以降は急増し、更に超高層化、大型化しています。
そのため、タワマンの管理方法は理論的にも管理的にもまだ確率していないと言われています。
2.エレベーターなどの設備費が高い
高層マンション10階建て以上、高さ31mくらいであれば、エレベーターの取替え費用は2,000万円~3,000万円程度ですが、40階越えのタワマンになると1台当たり1億円以上と一気に値段が跳ね上がります。
更に、災害時の救助で使用される非常用電源付きエレベーターは、高さ31mを超える建物に設置が義務づけられており、多くのタワマンに備えられていますが、この非常用エレベーターの交換費用も高額となります。
また、屋上のヘリポートや高層階へ水道水を運ぶ高圧給水ポンプや、大規模修繕工事や窓ガラスの清掃などに使用される小型クレーンの屋上設置など、タワマン独特の設備のメンテナンス費用が必要になります。
大規模タワマンの場合は低層階に飲食店などのテナントが入るものも多く、屋上まで煙を上げるダクトや排気設備も大規模かつ高性能になります。
3.豪華な共有設備
大規模なタワマンの多くはエントランス部分の天井高を高くして見栄えを良くしており、移動式の昇降機を利用しないと設備の交換や点検ができません。
また、コンビニ的な売店を設置しているところもあり、それらの設備の更新費用も必要になります。
また都心部の高級マンションにも当てはまる事ですが、2008年前後からは内廊下タイプのタワマンが増加し、内廊下部分の冷暖房設備の取替えにも多額の費用がかかります。
4.割安な修繕積立金と高い管理費
大規模なタワマンは、24時間体制のコンシェルジェサービスやジムやサウナ、シアタールーム、来客用宿泊施設などがあるケースが多くこれらの設備の更新費用に加え、管理費用自体が割高になる傾向にあります。
分譲時はデベロッパーの系列会社などが管理を担う体制としているため、管理会社の見積も合わせなどがありません。
そのため系列会社が十分な利益を得られる管理費の設定とするために毎月の管理費を削減させる訳にはいかないので、修繕積立金をその分割安な設定になる段階式積立方式とし、少しでも管理費と修繕積立金のトータル金額が安くなるように見せることが多く、この修繕積立金の費用を後回しにすることが、数十年後に修繕積立金の不足を招くことになりかねません。
令和6年6月にマンションの修繕積立金に関するガイドラインが改定さましたが、それより前の2000年~数年前までに竣工したタワマンの多くは毎月の管理費が1万円に満たないケースが大半を占めていました。
5.特殊要因
タワマンは利便性の高い駅近立地の物件が多く、土地の利用の制約から必然的に駐車場をタワーパーキングにせざるを得なくなります。
ただでさえ、割高な機械式駐車場をタワーパーキングにすることで更に維持費や更新のための工事費用は高くなります。
また、湾岸エリアにタワマンは数多く建設されていますが、塩害により内陸部の建物よりも建物の劣化スピードがはやくなります。
私が投資顧問会社の役員をしていた際に浜松町でホテルを建設したのですが、建物をファンドに引き渡す際の点検時に、屋上部分の鉄部がわずか1年で錆びついていたことを思い出すとちょっと怖い気がします。
6.建築費の高騰
これもタワマンに限ったことではなく、マンション全体に言えることですが、2010年以降、アベノミクス、消費税増税、東京オリンピック、コロナ禍、ウクライナ紛争などによる資源高や建築物価の高騰が続いているのに加え、職人の高齢化に伴う大量離職による職人不足、地球温暖化対策も考慮すると、今後建築費が安くなる要因は見当たらないと言われています。
国土交通省では長期修繕計画の見直しを概ね5年に1度が望ましいとしていますが、5年に一度の見直し自体に費用がかかることはもちろん、立案した当時は万全の設定だったとしても、5年の間に更なる物価上昇により長期修繕計画案が破綻する可能性もあります。
そのため長期修繕計画を立案する際には、毎年0.5~1%程度の物価上昇を見込んで検討する必要があるかもしれません。
タワマンの物理的寿命は100年と言われていますが、60年の修繕計画では1戸当たり約2,200万円(修繕積立金は毎月約3万円相当)を用意する必要があるとする試算もあります。
通常のマンションであれば修繕費用は1,800万円程度(修繕積立金は毎月約25,000円程度)、更に建替えをする場合の平均負担額は、国土交通省の2017年~2021年での調べでは資材高などで1住戸当たりの負担額は1,941万円となっています。
通常のマンションであっても、これほどの金額が維持費としてかかり、その後、建て替えた場合には更に2,000万円近い費用が区分所有者に重くのしかかるので、タワマンの場合には、さらに負担額が増えるので、かなり資金に余裕がある人でないと長期にわたってタワマンの所有者で居続けることは難しくなる恐れがあります。
高額な維持費用がかかるタワマン
マンションに住めば、タワマンに限らず、修繕積立金以外にも維持費として管理費が必要になります。
仮に、ファミリータイプのマンションの管理費を月々2万円程度とし、車を所有している場合は駐車場代が月々1万5,000円、固定資産税、都市計画税を月割りの額に換算した金額はおおむね1.3万円(年額約15.6万円)、地震保険を含む火災保険の費用2.5千円(5年で15万円)、修繕積立金を月額2.5万円とした場合の月々の支払額は約7.6万円程度かかる計算となります。
マンションを購入して車を保有している場合、タワマンでなくても、維持費だけで、単身用マンションが借りられる金額となり、都心部のタワマンであれば地価も高いので毎月の維持費用は8万円を超える負担となります。
毎月この維持費を負担しながら、住宅ローンや日々の生活費、子どもの学費なども支払わなければならないこととなり、一般家庭のサラリーマン世帯にとっては、マンションを所有するための金銭の負担は非常に重いものとなります。
勿論、都心部の1億円近く又は1億円を超えるタワマンを購入できる方はそれなりの年収が無ければそもそもタワマンの区分所有者になること自体厳しいのですが、ペアローンなどでギリギリの予算で購入した方にとっては、月々8万円を超える維持費は、かなり経済的に厳しいものとなります。
年収が1,000万円を超える方は、本人もそれなりのステイタスがあると思いがちで、日々の生活も外食も多く、維持費が高い外車を購入、海外旅行に年2回行くなど散財しがちな傾向にあり、その結果、転職や入院などのアクシデント等で管理費や修繕積立金が支払えなくなるケースが往々にして見受けられます。
維持費用を支払えなくなった住民(区分所有者)は、多くの場合、マンションを売却して転居するか、滞納するかのいずれかしか選択肢が無くなり、滞納が半年以上続くと、滞納金全額を支払うこと自体が厳しくなってきます。
管理が厳しいマンションでは、3~6カ月以上滞納したら、すぐに弁護士に委託し、期日までに支払を求めるケースも多くなります。
滞納したら即、弁護士案件とするのは、一見残酷に見えますが、滞納した住民にとっても管理組合にとっても、滞納額が少額の内にマンションを売却したほうが、双方とも損害が少なくなります。
管理組合としては、人生何が起こるかわからず、更に日本の会社もジョブ型雇用が一般的になりつつあるなか、長期を見据えた修繕積立金計画を区分所有者に予め示すことにより、滞納などを事前に防ぎ、結果マンションの健全な維持管理につながります。
マンションは居住形態としては、セキュリティ面で優れ、駅近に住めるなど多くの利点がある一方で、維持費用がかかります。
特にタワマンの場合は、その傾向が顕著です。
十分な支払い能力がある人が住むには、タワマンは極めて居心地の良い住みまいとなる一方で、無理して購入された方にとっては、後々無理して購入したつけが回ってくる可能性が非常に高く、リスクのある住宅購入であると言えます。
また、資金不足の一番大きな要因は、管理組合(区分所有者)の維持管理への無関心さにも起因しています。
タワマンに限らず、中古マンションを購入するなら、エリアや駅からの距離、日当たりなどと同様に、マンション管理組合の運営状況にも着目したうえで購入するべきです。
特に、下記のグラフが示すように、購入してから数十年後に多くの方が50代半ばを過ぎると年収が減っていきますが、逆にマンションの維持管理費用は増えていきます。
このため、修繕積立金の徴収方法を段階式積立方式ではなく、均等積立方式に早期に変更する方がよりベターな選択と言えます。
また、区分所有者の入れ替えは、マンションの住民の高齢化を遅らせることができ、様々な年代が暮らす魅力あるマンションになる可能性を秘めており、ある程度マンション内の住戸が売買され、流動化することも重要なポイントになってきます。
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