· 

新古マンション転売狂騒曲

渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

2025年1月15日の日経新聞の朝刊の1面の見出しで「マンション転売過熱」としたうえで、中古マンション市場で完成後間もない「超築浅」物件の売り出しが増えているとの記事があり、これは中古マンションの売買仲介を行っている不動産会社として、肌感として感じている状況をデータで表した結果、肌感と実態が一致しおり、限定エリア型極地的バブルが起きている状況であると言えます。

 

新築物件の定義は、建物が完成した後、1年以内の未入居物件であれば、新築表記できますが、1年未満でも人が入居した時点で、新築では無くなります。

 

超築浅物件の場合、不動産の広告では新築未入居と表示される場合が多いです。

 

後は、スラングになってしまい、売り物件としての表示方法としては利用できませんが、車の場合ディーラーの販売ノルマ達成や、試乗車・展示車としての利用を目的に登録された車を「新古車」と呼びますが、新築から1年を経過した未入居物件の物件を、今回は「新古物件」呼びたいと思います。  

 

車でいう新古車は前のオーナーが存在しないため、新車と同等のコンディションで販売されますが、新古マンションの場合は、売主のデベロッパーから一次取得者である最初の買主(売主)へ登記は移転しますが、人は住んだことがなく、新築から1年超えの物件ということになります。

 

再開発の大型物件や大型タワーマンションは最初の売り出しから完成まで数年を要することもあるので、今のように不動産価格が上昇している局面では、かなりの差益が期待出ます。

 

私もレインズタワーのデータをグラフ化していますので、この状況をよく理解しています。

 

下記は都心3区(千代田区、中央区、港区)の成約価格、在庫価格、新規物件の価格の推移です。

 

中古マンションの価格は基本的に築年数が浅いほど、物件価格は高くなります。

 

このグラフを見ると2024年から一気に、新規に登録した物件と在庫物件の価格が上昇しています。

レインズタワーのデータを使用、2022年1月~2024年12月を暦年で比較 株式会社リアルプロ・ホールディングス作成

物件価格を押し上げるマンション名 

では、この都心3区の価格の押上要因となっているのは、新古物件が増加しているのに加え、まだ完成していない大型新築タワーマンションを早期に売却する動きが活発化しているためです。 

 

では、実際に築3年以内の築浅物件も具体的な物件名をいくつかご紹介させて頂きます。

 

【千代田区】

ザ・パークハウス麴町レジデンス(2023円6月築、RC造15階建、総戸数85戸)

PARK COURT千代田一番町(2022年9月築、RC造地下1階14階建、総戸数97戸)

 

【中央区】

HARUMI FLAG PARK VILLAGE T棟(2025年10月完成予定、RC造地下1階50階建、総戸数722戸)

パークタワー勝どきミッド(2023年8月築、RC造地下2階、45階建、総戸数1,121戸)

THE TOYOMI TOWER MARINE&SKY EAST(2027年6月完成予定、RC造地下1階54階建、総戸数2,046戸)

 

【港区】

AZABUDAI HILLS RESIDENCE(2025年10月完成予定、RC造地下5階64階建、総戸数970戸)

WORLD TOWER RESIDENCE(2025年3月完成予定、RC造地下2階46階建、総戸数389戸) 

 

といった具合に、千代田区を除いた中央区と港区でまだ完成していない大型タワマンが多く売り出されています。

 

これらタワマンの物件価格は広さにもよりますが、どれも1憶円半ばくらいが最低価格で5億の以上の物件も複数売りに出されており、中には10億円近い物件もあります。

2020年以降の築浅ハイグレードマンションも人気 

新古物件だけでなく、2020年以降に販売された希少立地のハイグレードマンションも価格を押し上げる一因となっています。

 

横浜駅北口に2023年12月に完成したTHE YOKOHMA FRONT TOWER(総戸数459戸、地下2階43階建)はペデストリアンデッキで横浜駅と直結してるタワーマンションでかなりの物件が売りに出されています。

 

横浜駅北口は飲食店が連なり、雰囲気を好まない方も多いエリアなのですが、駅に直結するペデストリアンデッキでつないだために、そのエリアを通らずにマンションに直接アクセスできるため、価値が一気にあがりましたが、実際に中古物件を購入している人は売り出している物件数と比較してかなり少ない印象です。

 

理由は売主のあからさまな強気設定の売出価格が、実需層に敬遠されているものと思われます。

 

渋谷区神宮前2丁目に2020年1月に建築されたTHE COURT神宮外苑は、国立競技場南側の都立明治公園横にある地下1階23階建、総戸数409戸のハイグレードマンションです。

 

最寄りの銀座線の「外苑前駅」や大江戸線「国立競技場駅」からは多少離れてますが、実需として購入している層の多くがが外資や企業の役員等公共交通機関を利用しない高所者層であり、神宮外苑再開発地区内唯一の分譲マンションという希少性から人気が高い物件となっています。

 

このように希少性の高い都心部や主要ターミナル駅近のタワーマンション物件には転売益を見込んで短期売買を行う海外を含む投資マネーが流入しており、新築物件の供給不足もあり、需要が高く、中古マンションの価格上昇の一因になっている一方で、高すぎる販売価格設定に実需が追い付かず、一部の物件では売り物件がだぶつき始めています。

ザ フロントタワー ヨコハマ
ザ フロントタワー ヨコハマ

東京23区内の中古マンションの上昇率が新築を上回る

2024年1月から10月に東京と大阪で売りに出された築1年未満のマンションは1,548戸と2014年1月から10月と比較して3.7倍に増えています。

 

中古マンションに占める割合も1.89%と10年前の0.81%と比較すると倍増しており、あきらかに転売目的と思われる売買が盛んになっているようです。

 

不動産市場が上昇局面にあると投資家は賃貸で地道に益を得るよりも、転売の方が収益が高く見込めます。

 

また、いつまでこの上昇局面が続くかは見通せないため、現在チキンレース的な装いになっており、物件が完成した後は、未入居でも管理費や修繕積立金が毎月かかるため、出来れば築1年未満で新築と表示できるうちに、売却したいと考えます。

 

築1年以内の中古物件の販売価格は東京23区内で2024年1月から10月で平均で1億5,653万円となっています。

 

実際の成約価格ではないものの、中古マンション市場は10年前から、2倍近く上昇しており、つい最近70㎡換算のファミリータイプの中古マンションの価格が1億円を超えたと話題になりましたが、今は1.5億円超えになっています。

 

実際日経新聞の記事によると東京23区の築1年以内の物件の直近10年の価格上昇率は2.6倍で、新築価格の上昇率1.9倍を大きく上回っているようです。

 

今回、日経新聞に協力した、不動産情報サイト「マンションレビュー」を運営するワンノブアカインドは、弊社でも取引させて頂いており、売り出し価格についてはかなり信頼性が高く、私の肌感とデータが、ほぼほぼ一致している感じがします。

 

強いて言えば、東京23区の中でも千代田区、港区、新宿区、品川区、目黒区、世田谷区、台東区、目黒区の立地が良い中古マンションの価格が非常に高くなっていますが、足立区、江戸川区、葛飾区、荒川区などで駅から離れており浸水ハザードの危険性が高いあまり良くない立地の物件価格の上昇は限定的で、更に多くの物件が売れ残っている感があります。

ザ コート神宮外苑
ザ コート神宮外苑