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災害時には自宅マンションに留まりましょう!

渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

都心部や郊外ではマンションが増加しており、これに伴い大震災が起きた際にはご自宅がマンションの場合には、地域の避難所に避難するのではなく、「ご自宅にそのそのまま留まりましょう!」という動きが広まっています。

 

現に東京都は人口の6割以上が集合住宅に暮らしています。

 

集合住宅でも特に鉄筋コンクリート系で建設された新耐震以降のマンションであれば、倒壊などによる犠牲者は少ないとされています。

 

もちろん火災が発生した場合などは、避難する必要がありますが、建物に大きな損傷が無ければ、自分のマンションに留まる方が避難所に避難するよりも心身への負担が軽減されます。

 

東京都などでは、電気や水道が止まっても1~2週間分の備蓄を各家庭が行うように推奨しています。

 

現に、震度7クラスの地震が発生した場合、電気が1週間、水道が1~2週間、ガスが2~5週間程度かかるとされているので、東京都が推奨している基準は、ある意味妥当な量かと思います。

 

但し、自衛隊などによって援助される水や食料などの緊急物資が届くのは、主として各地域で定められた避難所で、1,000戸を超えるような大規模マンションでも無い限り、各々のマンションに、自衛隊などが避難物資を運んでくれるということはあまり考えられません。

 

そのため、災害復旧が長期にわたる場合には、避難所に底をついた水や食料などの救援物資を受け取りに行く必要がありますが、ある程度地震の揺れなどが収まった状態で避難所に行くのと地震直後のパニック状態時に避難所に向かうこととを比較すれば、ご自宅のマンションに留まることは、かなりリスク低減に繋がると考えます。

 

そのためご自宅のマンションに籠城することはかなり有効な手段だと言えます。

 

管理組合として、マンションに留まることを念頭において、災害時に各住戸の状況がわかるように知らせる「無事ですマグネットシート」を配布するマンション管理組合も増えています。

 

地震が起こった際には、館内放送で、このシートを表玄関の目立つ場所に貼ってもらうように呼びかけ、万一貼られていない住戸があれば、声掛けや救助に向かうことができ、マンション内の状況が把握できます。

マンションに留まる際の問題点 

ただし、マンションに留まった際には大きな問題点があるのも事実です。

 

最大のネックは、トイレと高層階の孤立です。

 

マンションの場合、たとえ、建物の構造体が無事でも大きな 揺れにより、給水管や排水管が破損する恐れがあり、その場合、室内のトイレが使えなくなります。

 

排泄物の放置は不衛生で、精神的にも健康面でも非常に悪影響を与えるため、家族の人数分の簡易トイレを備えておくことは非常に重要です。

 

最近のマンションでは敷地内のマンホールを利用して仮設トイレを数か所、迅速に設置できるようにしていたり、ベンチが竈に早変わりできる等の防災に優れた分譲マンションも増えていますが、多くは大規模なマンションで、そのマンションにお住まいになっている住民に対しては数が少なすぎます。

 

排水管が損傷していなければ、ペットボトル等の水をトイレのタンク内に入れれば、トイレは使用可能なので、消費期限が切れたペットボトルは捨てずに、ベランダやあまり利用価値が無いデッドスペースなどに保管しておくことも重要です。

 

とにかく、簡易トイレ、水、携帯用コンロ、懐中電灯はある意味、三種の神器プラス1と言えます。 

 

水は飲料水と食事だけでも1人当たり1日3リットルは必要と言われているので、1人当たり1日4リットルは最低限欲しいところです。

 

宅配型のウォーターサーバーであれば1つのボトルが12リットル程度のものが多いので、3人家族であれば、ボトル1つで1日持つ計算になりますし、平時は家まで配達してもらえるので、2リットルのペットボトルをいちいち購入して、ため込むよりも、ある意味有効かもしれません。

 

タワマンなどの高層階の孤立防止には、上層部に食料や飲料水などの備蓄倉庫を設置することが有効です。

 

エレベーターが長期間停止する場合、非常用エレベーターも使えなくなる可能性があるので、1階だけに備蓄倉庫を用意しておくのは現実的ではありません。

東京とどまるマンション 

災害時において救援物資が供給されるまでの間、自宅での生活を継続するためには、防災マニュアルや防災訓練、備蓄等の防災活動による備えが重要です。

 

そのため、東京都では、停電時でも水の供給やエレベーターの運転に必要な最小限の電源の確保(ハード対策)や、防災マニュアルを策定し、居住者共同で様々な防災活動を行う取組(ソフト対策)によって、自宅での生活を継続しやすい共同住宅(マンション等)を「東京とどまるマンション」として、普及啓発活動を行っています。

 

 

既に補助金制度は先日(2025年1月15日)に終了してしまいましたが、「東京とどまるマンション」に登録している分譲マンションの管理組合や賃貸マンションのオーナーを対象にした、簡易トイレやエレベーターに設置する防災キャビネットなどの防災備蓄資機材の購入への補助金の効果もあって、2024年12月末日現在で、登録したマンション数は583件にのぼります。

 

登録基準は

◆非常用電源に関する登録基準(ハード対策)

 停電時の水の供給やエレベーターの運転に必要な電力の供給が可能な電力供給設備が設置されていること

 ・設置例 コージェネレーションシステム、自家発電設備、太陽光発電システム及び蓄電池など

 

◆防災活動に関する登録基準(ソフト対策)

 防災マニュアル策定と以下のいずれかの防災活動を実施していること

 ・防災活動 防災訓練の実施、飲料水・食料の備蓄、応急用資器材の確保、連絡体制の整備

 

耐震性を有していれば、ハード対策のみ、ソフト対策のみでの登録も可能になっており、登録住宅の名称、所在地や登録対象となった設備等については、東京都のホームページ等で公開しています。

 

登録によって3つのシールを用意しており、登録ステッカーの下部に、登録要件に応じた記述が表示されます。

・ハード対策(稼働計画日数3日以上) 「共用部における高度な非常用電源設備」

・ハード対策(稼働計画日数3日未満) 「共用部における非常用電源設備」

・ソフト対策             「防災活動」

マンション籠城のメリット 

最後になりますが、多くの人が暮らしているマンションには実に多彩な人材が揃っている可能背が高いと言えます。

 

医師や看護師、工務店の社長や警察官、消防士や阪神・淡路大震災や東日本大震災など実際に経験した人など、様々な知識や経験を持っている人たちが住民として暮らしている可能性が高く、マンションは一つの小さな社会が形成されており、これをうまく活用すれば、マンションは自主避難場所として十分機能する可能性が高いと言えます。

 

逆に大規模マンションの住民が一斉に避難所に集まれば、避難所は簡単にパンクしてしまい、かえって二次災害となる可能性が高くなります。

 

これらの点から、大震災発生時にマンションに留まるという選択肢は非常に有効と言えます。

 

強いて言えば、さらに来る南海トラフ大地震に備え、管理組合がしっかりとした体制を整えることが出来るように事前に準備しておくことがなにより重要です。