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中古物件を購入してリフォームするという選択(その1)

渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行なっている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

ファミリータイプの都心部の新築マンションの価格が1億円を超える時代となり、新築マンションの購入を諦めて、住宅購入の現実的な選択として中古住宅を検討する方が増えています。

 

住宅はそこに住む人が実際に住まいとして使う中で、クロスやフローリングに傷や汚れが付いたり、剥がれたりします。

 

また、お風呂は黒カビ等が発生、キッチンは基本毎日使うので、換気扇やグリルに油が付着したりと、前の所有者の方の生活感が感じられたり、経年による劣化などが気になるため、中古住宅を購入する場合には、同時にリフォームも実施しよう考える方がたくさんいらっしゃいます。

 

特にここ10年余りの間に個人の方が「中古マンション+リフォーム」をマイホーム購入の選択肢のひとつとして、考えているという事が、顕著に表れてきていると感じています。

 

リフォームと聞くと、雑誌やテレビで紹介されるような家屋全体をリニューアルするようなイメージを持たれる方が多いと思いますが、実際にはクロスの貼り換えや設備の入れ替えなど最小限のリフォームを行うケースが多いのが実情です。

 

但し、間取りの変更なども踏まえた大規模なリフォームを行う場合には、実は結構手間暇がかかり、リフォーム費用も高額になります。

 

更に、この高額なリフォーム費用を金融機関からの借り入れで賄おうとすると、工務店等から事前に見積もりを取ったり、工事のスケジュールをしっかり決めておかないと、希望の金額を借り入れることが出来なかったり、物件購入時の住宅ローンよりも割高な金利となるリフォームローンでしか借りられない、最悪リ―フォムのための資金が用意出来ずに購入を諦めてしまうといった事になりかねません。 

 

そこで今回は、中古+リフォームの問題点と購入手続きの進め方についてご説明いたします。 

リノベーションとリフォームの違い 

中古+リフォームのお話をする前に、まず、説明しなければならないのが、リノベ―ションとリフォームの違いです。

 

中古マンションの購入基礎セミナー等を開催すると、リノベーションとリフォームの違いを教えてくださいという質問を幾度となく受けるのですが、実は、明確な定義はなく、不動産会社や建設会社が、時と場合によって使い分けをしている実情があります。

 

リフォームではなくリノベーションという言葉が多く使われる理由は、リフォームは賃貸住宅の原状回復義務の範囲内として見られがちで、大した工事をしたとは見られないため、特に築浅物件等の場合にはクロスの張替え、トイレやキッチン周りの設備の交換と室内クリーニング程度でも、受けを良くするために、リノベーション物件として売り出すと言うのが実情かと思います。

 

そのような中で、平成21年(2009年)5月に一般社団法人リノベーション協議会が発足、現在は正会員が608社、賛助会員189社等からなる一大民間組織として、活動しており、再販買取業者といわれる多くの不動産会社や建設会社が加盟しています。

 

また、リノベーションコーディネーターという資格制度を創設し、年1回の試験を行い、リノベーションに関わる人々の質の向上を目指したり、工事や検査、保証などに対する統一規格を定め、これに適合した住宅を「適合R住宅 」として認定しています。

 

詳細は一般社団法人リノベーション協議会のホームページをご覧ください。

 

この協会が認定する「適合リノベーション住宅(適合R住宅)」とは、「検査」→「工事」→「報告(開示)」→「保証」→「住宅履歴」の「統一規格」に則り、品質基準に適合した住宅を指します。

 

適合リノベーション住宅は、きちんと検査をしたうえで必要な改修工事を施し、その記録を住宅履歴情報として保管するので、点検やメンテナンスがしやすく、将来売却するときにも役に立ちます。

 

また、不具合があった場合でも、アフターサービス保証があるので、安心して選べるリノベーション住宅と言えます。

 

但し、アフターサービス対象の箇所や保証内容は、住宅のタイプや施工内容によっても異なりますので、協議会に加盟しているそれぞれの企業が発行するアフターサービス保証書を参照するようにとしています。

 

リノベーション物件として売り出されている中古マンションの販売図面に記載されている「R1住宅」とは、区分所有マンションの専用部分を上記の統一規格に則りリノベした物件ということになります。

 

一般的な考えで言うと、リノベーションは室内を大幅に改装して、新築と同レベルまで仕上げる工事。

 

リフォームは間取りなどはそのままで、汚れていたり、古くなった設備の入れ替えを行う工事。

 

という感じとなります。

 

これ以降のお話ではリフォームとリノベーションが混在する場面がもございますが、上記内容によって使い分けをしていますので、あまり気にせずにお読み頂ければと思います。

中古物件をリフォームする場合の問題点 

中古物件をリフォーム又はリノベーションする際の最大の問題点は費用の捻出です。

 

以前と比較して昨今はリノベーションという言葉が社会的に広く認知されてきたために、多くの金融機関で物件代金だけでなくリフォーム費用もあわせて低金利で住宅ローンを組むことができる商品を用意していますが、それでも、中古住宅の購入と同時にリフォーム費用を借りるには、不動産や建築の知識があまり無い方からすればかなりハードルが高い作業となります。

 

住宅ローンは借主の、勤務先や勤続年数、家族構成といった内容も審査対象になりますが、 主として年収によって借入限度額が決まってしまうため、この借入限度額に近い価格の物件を購入してしまうとリフォーム費用が捻出できない、という状況に陥ります。

 

もともと多くの人がマイホームを購入する際の希望は、自分の予算額より高くなりがちなので、リフォームやリノベーションをしたくて中古物件を購入したのにリフォームやリノベーションが出来ないという事になってしまうです。

 

このような状況に陥るのは「購入手続きの進め方が悪い」、又は、「そもそも購入手続きを知らない」、ということが主な要因となります。

 

実際に、多くの方の現実的な選択肢は、

◆クロスの貼り換えなど最低限のリフォーム

◆事業者(再販買取業者)によるリノベーション済み物件の購入

◆クリーニング程度で済ませ、リフォームせずに現況のまま我慢する

◆一旦物件を購入し、引渡しを受けた後で、業者を決め、別途リフォームローンを組んでリフォームを行う

という4つの選択肢となります。

 

一般的な不動産取引の流れとして、多くの方は住宅購入を考えた時、まず不動産ポータルサイトなどで物件情報を見始めます。

 

そして、良さそうな物件広告が見つかったら、広告掲載している不動産会社に問い合わせを行い、実際に物件を見学(内覧)して、気に入ったら契約手続きとなります。

 

それではリフォームを行う場合はどういう流れになるのでしょうか。

  

中古マンションは当然ながら、売主の居住年数や日々の利用方法により、傷み方がかなり違ってきます。

 

そのため「購入する物件が決まっていないとリフォーム会社に相談できない」と考えている方が多いため、多くの場合、リフォームの手続きは購入する物件を決めた「買付申込」の後か、場合によっては不動産売買契約の後からスタートします。

 

不動産売買契約後、すぐに住宅ローンの正式審査を行わなければならないのですが、リフォーム費用をローンに組み入れたい場合は、実は、本審査の前段階の事前審査で、ある程度の予算枠をとっておく必要があり、正式審査に当たってリフォーム工事内容を決定し、見積書などの資料を提出、不動産売買契約とほぼ同時に請負契約をする必要があります。

 

このように、一般的に行われている不動産取引とリフォームの手続きがマッチしておらず、結局、ローンを組むことが出来ずに、住宅ローン以外で現金で支払うことができる範囲でのリフォームに留まってしまうことが多いです。

 

どうしても金融機関からお金を借入し、大規模なリノベーションをしたいという方の現実的な選択肢としては、個人向けリフォームやリノベーションを多く手掛けている不動産会社や工務店等に依頼するのが一番確実です。

 

このような企業は、今までの経験値から、お客様のご希望を聞いて、リフォームの概算見積書を直ぐに作成できるシステムを構築していることが多く、工事の振れ幅も予測して見積書を出してくれます。

 

住宅ローンは自分で住むための家を購入する費用と諸経費、そしてリフォーム費用以外は融通してくれませんので、工事の振れ幅も見越した工事見積書でないと、追加工事が発生した場合には、資金ショートが発生してしまうことになります。

 

追加工事が無い場合には、請負金額からその分がマイナスとなり、最終の工事代金の支払を行う融資額も減額されることになります。

 

このような段取りが必要となるため、物件の購入費用とリフォーム費用を一体で融資を受ける際には、事前にリフォームをしてくれる業者を選んでおく必要があります。

 

この場合、物件を購入してから業者を選定するのは不可能ですので、特命でリフォームを依頼することになります。

 

当然、様々な業務を代理で行うため、コンサル料が別途かかったり、工事費用が一般的な相場よりも高くなる場合が多いですが、先述したように、建築や不動産に精通していない個人ではかなりハードルが高いので、任せた方が結果的に理想の住まいを取得できる可能性が高くなります。

 

特命がどうしても嫌だという方は、物件探しを始める段階で、このような一連の流れを代行してくれる不動産会社や工務店を複数社訪問して、工事費用やサービス等を聞いてから最終的に業者を決めた方が良いと思います。

 

ただ、前提として、「購入する物件が決まっていないとリフォーム会社に相談できない」というのは大きな間違いです。 

 

次回は不動産会社やリフォーム会社の選び方等についてお話します。