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建物解体時のアスベスト検査費用はいくら?

渋谷区を中心に中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

建物解体時にアスベストが建材に含まれているか含まれていないかを検査する場合の費用についてお話したいと思います。

アスベスト検査費用は1検体3万円~5万円程度 

結論からお話ししますとアスベストの含有検査は1検体あたり3万円~5万円程度です。

 

検査件数が多くなればその分コストは下がります。マンションの専有部分のみだとアスベスト含有が疑われる箇所が多くても2箇所程度なのでその分1検体当たりのコストは上がります。

 

中にはマンションの専有部分の検査費で、1検体採取のはずが、他の場所も取られて、別途検体採取費用で人件費分も請求され、1回の調査で10万円近くも取られたという話も聞いたことがあります。

 

逆にネットではアスベスト専門という肩書で税別20,000円~、最短3日で試験結果がわかると宣伝する業者もいますが、あくまでも最低価格が「20,000円から」なので、実際にお願いしてみると、もっと高くなる可能性も十分あり得ると思います。

 

アスベスト専門業者と言っても、アスベスト除去工事だけでは絶対量が少ないので他の解体工事も行っているはずで、営業の謳い文句で「アスベスト専門」と記載している企業が実際には多いと思います。

 

私が今回依頼したのは築40年超のRC造の建物で6検体採取したので、含有調査が1検体33,000円、採取費用が1検体5,500円なので1検体当たり、税込38,800円でした。1検体あたり5万円程度かかると言われていましたが、それよりは安かったです。

 

腑に落ちなかったのが、検体採取は1検体5分もかからないで作業が終わるので、実際に採取にかかった時間は6検体で30分程度です。採取費用だけで税込33,000円かかっており1時間当たりで換算すると税込66,000円という価格になります。

 

写真を撮影する人間と二人で来たとしても一人当たりの時給が税抜で30,000円となります。日雇いで現場作業員を1日雇っても15,000円程度なので、とてつもなく高い金額となります。

 

私がゼネコン時代に見積を依頼されても見積段階では、お金を請求できないのに、現地でヘラやカッターを使ってアスベストの含有が疑われる外壁材を採取するだけで、お金を取れるというのは、なんとも不条理だと思いました。

 

しかし、別の見方をすれば、アスベスト検査を行う会社自体が限られており、検査数もあまり多くないこと、人体に影響を及ぼす可能性のある材料検査という特殊事情もあり、この金額はある意味仕方ないのかも知れません。

アスベスト検査の内容は??  

検査結果については添付の画面のような報告書(6検体で30頁弱)が届きました。

 

今回の分析方法はJIS-A 1481-1に基づく偏光顕微鏡による定性分析でしたが、実際にはX線を用いたX線回析分析もあるそうで分析方法は、今回の顕微鏡による分析と2種類あるとのことです。

 

また試料調整で450度電気炉で1時間過熱したと記載してありましたが、試料の乾燥や有機物の除去を目的として過熱処理を行う場合があるようです。

 

定性分析でアスベストが検出された場合には定量分析を行います。このときにギ酸(カルボン酸の1種で無色で刺激臭があり人体には有害な物質)処理を行ったと記載してありました。

 

アスベストが検出された場合には、アスベストの含まれる場合には、アスベストの種類、外観色、層割合、層別アスベスト推定含有率が表示されます。

 

ここで、少しでもアスベストが検出されれば、建物解体時には飛散性の危険レベルに応じて適切な除去を行わないといけないことになります。

 

前回のブログにも掲載しましたが、4月1日に改正されたアスベストに関する法律では、アスベストの含有が懸念される建物に関して、必要な知識を持つ者が竣工図面や建物の状況を調査して、アスベストの含有が疑われる部分については、検査を行うという判断になります。

 

建物の解体を依頼する所有者にとっては、アスベストは出ないに越したことはないので、出来る限り検査をしない方向で進めたいというのが本音だと思いますし、逆に解体業者は、いい加減なことをすると法令違反となるためそれこそ死活問題になるので、適切に見極めようとします。

 

とは言っても2022年4月1日からは80㎡以上又は解体補修等の工事請負金額の合計額が100万円以上の場合は、アスベスト使用の有無に関わらず、事前調査結果を元請業者等が都道府県等に報告しなければならなくなり、更に2023年10月1日以降は石綿含有建材調査者に事前調査をさせなければならくなるので、今後一層、規制が厳しくなります。そのため、今年から来年3月までは建物の解体工事現場が急激に増えるかもしれません。

アスベスト検査費用と解体費用は高止まり?? 

法令改正を機に新規参入を目指す企業が増加した場合、価格競争が生まれ、アスベストの検査費用や解体処理費用は安くなるのでしょうか?

 

建設現場は「汚い」、「きつい」、「危険」の3Kと言われ、また、建設業に従事する方の高齢化により、人手不足が深刻化しています。

 

私がゼネコンに新入社員として入社し、現場にいた際は土曜日は休みではありませんでしたが、今は土日休みのゼネコンが当たり前になりつつあり、また人材確保のため給与水準もあげています。

 

更に、一定規模以上の建物へのアスベスト検査の義務化やアスベストがあった際の除去費用、またSDGsの高まりによる、廃棄物処理の分別化やCO2削減の徹底化等を考えれば、建物解体費用が今後安くなる要素が見当たりません。

 

ということから、今後建物解体に要する費用は高くなることはあっても安くなることは無いと思われます。

 

一戸建を相続で受け継いでも、既に自分自身で家を所有している人は、受け継いだ家を放置してしまう場合も多く、いざ家を売却しようとしても、築30年越えの戸建てはほぼ残置物扱いになってしまいます。

 

更に、家を壊して更地にしないと、土地が売れないという案件もかなり増加しています。

 

自分が幼いころから青春時代を過ごした家を取り壊すのは忍びないことではありますが、不要であれば早急に建物を解体しないと、高額な解体費用を支払うはめになるかもしれません。