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解体工事見積書の見方と発注方法

渋谷区を中心に中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

今日は相続等で住まなくなった実家を解体する際の解体工事会社の選定方法や見積書の味方等のお話をしたいと思います。

解体工事の見積書の比較一覧表
解体工事の見積書の比較一覧表

業者の選定方法について 

老朽化した建物がたったままの状態で土地を売却する際は、

①買い手の不動産会社や仲介業者に解体業者を紹介してもらう。

②知人に紹介してもらう。

③ネットで検索。

が一般的だと思われます。

①は購入先の不動産会社からの紹介であれば、解体工事に関するトラブルはほぼありませんので安心です。また、仲介会社からの紹介の場合も、ある程度その仲介会社との付き合いがあるため、トラブルは少ないものと思われます。

 

但し、不動産業界は多かれ少なかれ不動産会社と解体業者の間では協定等が結ばれているケースが多く、解体工事費用に5%~10%程度のマージンが上乗せされている場合が多いと言えます。

 

このマージン分は何かトラブルがあった際の安心料と言えるかもしれません。

 

②はよくありがちな話ですが、知人程度の付き合いの方から紹介を受けるのは極力控えたほうが良いと感じます。

 

私も仕事柄、お客様の失敗談を良くお聞きするのですが、ロータリークラブの仲間からの紹介とか、知人の知人からの紹介で、「家を建てる際にぼったくられた」「ひどい目にあった」といった建築や解体工事にまつわる話が本当に多いのです。

 

ロータリークラブのメンバーの多くは社会奉仕を行い、高度の道徳水準を守って活動をされていますが、やはり中には商売目的で入会する方がいるのも事実です。最初はとてもやさしかったけど、おかしいと思って内容を確認したら態度が急変した等々のお話は、枚挙にいとまがありません。

 

そのため、完全に私の個人的な感覚ですが、よほどお互いにビジネスで関係を築いている方や幼なじみ等で昔からの無二の親友である、実際に取引がある不動産会社で信用がある等の方以外から安易に、解体業者や建設会社は紹介してもらわないほうが良いと感じます。

 

③は、解体業者や建設会社のホームページだけでは、その会社がどのような会社であるか、見極めることは結構ハードルが高いと思います。

 

解体業者を選定する一括無料見積サイトはいくつかありますが、先日、地方で解体業者選定を依頼されたため「一般社団法人あんしん解体業者認定協会」というサイトを利用して、業者の紹介をしてもらいましたが、なかなか良いシステムだと感じました。

 

私は、不動産会社の社長であり、ゼネコンでの経験や実際に不良債権処理の際のドサ回り時代にアスベストの中間処理業者等の資格を持つ建設会社(弊社株主)で産廃を中間処理場まで運ぶ仕事もした経験があるので、解体工事の内容の確認から断りの連絡まで全て私自身で行いましたが、これらも場合によっては、全て代わりにやってくれるようで、解体や建築に詳しくない方には大変助かるシステムだと感じました。

解体工事の見積もりは3社程度が妥当?? 

では実際に解体業者を選定する場合には何社くらいに声をかければ良いのでしょうか?

 

私が勤めていたゼネコンでは5社以上の相見積もりは基本お断りしていました。然しながら、上司の意向等で中には7社での相見積もりに参加ということもあり、そのようなときは完全にやる気が出ませんでした。

 

かといって何度も仕事を頂いている企業からの特命だと、なんとかその想いに報いようと必死の半面、後から追加工事が極力出ないように安全を見すぎて見積金額が逆に高くなってしまったり、甘えから金額が高めに出てしまうこともあり、ここでの社内調整が難しかったような気がします。

 

結論から言うと、基本1回しかない解体工事は3社程度の見積もりが妥当と考えます。

 

1社では比較が出来ず、4社以上では精査する方も大変、2社よりも3社の方が適切な比較が可能だからです。

 

また、私はいつも、見積もりに参加して頂く会社には競合会社がいても最大で4社以上には声掛けしないことを必ず伝えています。また、仕事を発注しない会社には、謝りの電話をいれるようにしています。

解体工事の見積書の比較方法 

上記に掲載しているのは、今年、実際に私が関与した建物の解体工事の見積比較表です。勿論、金額等は変更を加えています。

 

実際の見積書は大中小の項目にそれぞれ分かれており、各社によって、工事の内容が同じでも、名称等が異なります。

 

小項目での分類は細かくなり過ぎるので中項目で、同じ工事の内容を揃えて表にするとわかりやすいと思います。

 

ご覧頂ければわかる通り一番安い金額の業者と他の2社では1,000万円以上の開きがありますが、この価格の開きの原因を探りたいと思います。

 

まず、細かい部分言うと、足場や重機を自社で持っているか持っていないかで、養生や重機の部分で見積もりに差が出てきます。

 

最も大きな差が出たのは、アスベストの処理費用と諸経費の考え方です。

 

アスベストはマニュアル通りの積算をすればものすごく高い金額になります。その金額を提示しても誰も工事を発注しないと思います。実際の工事の際の段取りまで考えた見積もりか、単純に積み上げた見積もりかによって価格に雲泥の差が生じます。

 

ゼネコン時代に私は一時代を築き、昔長者番付の常連だったお爺ちゃん先生に徹底的にしごかれ、一時期その設計事務所の名刺を持たされて営業に出ていたこともあります。

 

その先生に、設計図面は1本線を引けば、その分見積もりは高くなるのが、当たり前。概算図面と実施設計との乖離、そして、所長の儲けるセンスまで考慮してゼネコンの営業マンは仕事を取るんだ!と耳に胼胝ができる程言われたことが、今となっては貴重な経験になっています。

 

余談になりますが、このお爺ちゃん先生は、東京大空襲で焼け野原になった東京を見て、金の卵がそこら中に落ちていると感じたそうです。凄い!!

今回、一番金額が安かったA社に解体工事を依頼したのですが、A社は受注必達であった大型公共工事の仕事が取れず、数十人いる社員を遊ばせるわけにはいかないとのことで、支店経費や本社経費として見積もりに7%~13%(例えば支店経費5%、本社経費7%等)程度入れる、いわゆる一般管理費をゼロにして見積もりを出してきました。この部分が決定的な工事金額の差になって表れました。

 

このようにその企業の懐具合によっても見積額には大きな差がでます。

 

そして、一番重要なのは、その会社自体の作業員等が主体で解体工事を行っているか否かです。建設工事は職種が多岐にわたるため多くの下請け業者を使います。

 

その企業が全て一般管理費を見積額に計上した場合、元請会社はその見積額に、また一般管理費を上乗せするため、工事金額が雪だるま式に高くなります。

 

今回依頼した解体業者はコンクリートの再生利用も自らの会社で行っており、限りなく、下請けを利用しない企業でした。

 

実際に、工事をお願いするにあたり、この解体業者の中間処理場まで足を運び契約をさせて頂きました。

 

解体業者の役員は、こんな汚い中間処理場まで足を運んで頂いた発注者はいません。と恐縮されていましたが、私としては実際に処理場まで持つ解体業者であるかも確認するために、伺うことは必然でしたが、逆にこちらから発注者をお連れしてお邪魔したことも結果的に良い方向につながり良かったと感じています。

 

今回、残念だったのが吹き付けアスベストレベル1が出てしまったことです。解体の規模が地方の案件としては比較的大きく、更にアスベスト除去費用が建物解体処分費用とほぼ同等の金額となり、土地の売値に近いくらい、かかってしまうことです。

 

地方は大きな家も多く、今後それらが相続になった場合、建物解体費用が土地代を上回ることが頻繁に起きる可能性があり、そうなると空家が一気に増加する可能性があり、由々しき問題と言えます。

 

最後になりますが、最終的には土地を購入して頂くデベロッパーの意向に沿った解体工事を行ってもらえるかは今後、何度か確認しに行く必要がありますが、アスベストレベル1の撤去工事は実際に見たことが無いので、これもまた良い経験だと思っています。