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中古マンションは本当に値上がりしているのか?(その1)

渋谷区を中心に中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

今日は首都圏の中古マンションの上昇が続いていると報道されていますが本当に価格は上昇しているのか検証してみたいと思います。

中古マンションの価格は10年前と比較して約1.5倍! 

2021年6月24日の日経新聞の朝刊に「安い日本」とした1面コラムで首都圏の中古マンション(70㎡)は20年間で2400万円台から3800万円台になり、400万円前後にとどまる会社員の平均給与の約9倍となり、30代~40代の持ち家比率が55%から5割を切り、家を所有する者と持たない者との差が広がり、「プア中間層」が増加しているとの記事が掲載されていました。

 

上記の表は弊社がレインズタワーで公表されている首都圏の中古マンションの成約データを基に2021年6月とそのちょうど10年前にあたる2011年6月のデータを使って表にまとめたものです。

 

これによると平均専有面積がほぼ変わらずの同サイズで約65㎡に対し、価格差が1,384万円(約1.55倍)、㎡単価でも1㎡当たり21万円(約1.51倍)となっており、10年前と比較して価格が約1.5倍強に跳ね上がっていることがわかります。

 

ここ5~7年程前くらいから建築費が急ピッチで上昇をはじめ、それ以前であれば、マンションの仕様はどんどん進化して良い品が使われており、それに伴う中古マンションの建物自体のグレードアップによる価格上昇でしたが、今は都心の一等地を除いて、マンションの仕様は足踏みまたは、よりコストが安い品への移行が進んでいます。

 

そのため仕様的には2010年代中頃までに完成した物件のグレードの方が、ここ4~5年で完成したマンションよりも実質的に建物の価値が高い物件が多いかも知れません。

 

建築費の高騰による築浅物件の価格上昇や、ゼロ金利政策による金余り減少とコロナ禍の国の緊急事態による公的資金の市場への大量放出等により、定価が無い株価や土地、マンションにそれらのだぶついたお金が流入して価格の上昇に繋がっています。

面積と築年数は? 

コロナ過により急速にテレワークが普及しつつあり、以前より広い面積を求める方が増加していますが、広くなる分価格の上昇に直結するために、10年前と比較して首都圏の中古マンションの成約平均面積は約0.6㎡しか広くなっていません。

 

平均築年数は10年前と比較して4.1年も増えています。市場に出ている物件の主流は新耐震物件ですが、都心の中心部に行くほど旧耐震物件は多くなっています。

 

近年、再販買取業に進出する不動産会社が増加した結果、リノベーションした旧耐震の物件を販売する不動産会社が増加している影響もあり、築年数が10年前より伸びているものと思われます。

 

また再販買取業者が増えれば当然価格競争となり、中古マンションの仕入価格自体が上昇し、更に建築費の高騰によるリノベーション工事費用が嵩み、それが成約価格を押し上げている要因にもなっています。

現在は超売り手市場 

登録物件数は月により隔たりがあるので一概には言えませんが、現在は10年前と比較して完全な売り手市場となっています。

 

新規登録で10年前と比較して約1割の減少、在庫で約15%程度の減少となる一方で成約件数は10年前と比較して約1.43倍、成約率は3.47%上昇の約8.84%となっており、超売り手市場になっていることがわかります。

 

ということで成約データのみで見た場合にはかなりの勢いで中古マンションの価格が上昇していることがわかります。

 

但し、先述しましたが、最近は不動産会社が中古物件を買い取り、リノベーションして売り出すいわゆる再販買取業者の物件が多く、10年前はこの市場に参入している不動産会社はごく少数しかいませんでした。

 

当然、一般消費者はなるべく綺麗な築浅の中古マンションを購入し、リフォーム費用を最小限に抑えるか、中古マンションを購入し、リフォームは別途自己資金か、もしくは、通常の借入よりも金利が高いリフォームローンを組み、工務店に発注する手法が一般的でしたので、その分の費用差が出てきます。

 

10年前は「中古マンションの購入+リフォーム費用」でしたが、今は、「内装工事が済んだ物件の購入」でそのまま住むパターンの比率が上昇していますので、比較が同じ土俵にたっていない面があります。

 

次回は実際にリノベ前の中古マンション自体はどの程度上昇しているのかについて検証してみたいと思います。