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中古マンションは本当に値上がりしているのか?(その2)

渋谷区を中心に中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

今日は、渋谷区内のファミリタイプの中古マンションの販売状況を使って、中古マンションの価格が本当に上昇しているのかを検証してみたいと思います。

渋谷区のファミリータイプの中古マンションの2021年8月19日現在の販売状況
渋谷区のファミリータイプの中古マンションの2021年8月19日現在の販売状況

渋谷区のファミリータイプの中古マンションは1億円超え! 

渋谷区のファミリータイプの中古マンション(60㎡~80㎡)の販売件数は2021年8月19日現在で、126件あり、平均専有面積は68.57㎡で価格は約1億300万円となっています。

 

築年数の平均が約22年となっており、築1年から築50年超の物件まで様々ですが、平均単価を押し上げているのは、主として築年数が3年未満の代官山から恵比寿、表参道エリアの物件で坪単価が700万円から1,000万円程度となっています。

 

2014年の渋谷区の成約データ(55㎡~80㎡)を見ると専有面積の平均が約65㎡で、成約価格が約5,600万円でしたので、7年程度で約1.8倍に価格が跳ね上がっています。

 

これを見る限り都心部のマンションは郊外を含む首都圏よりも、更に急ピッチで中古マンションの価格が上昇していることがわかります。

再販買取物件の増加も価格上昇の要因のひとつ! 

近年マイナス金利等による金余りにより、再販買取事業に進出する不動産会社が増加しており、これが価格上昇の大きな要因のひとつになっています。

 

中古マンションの所有者から売却を依頼されるのは、ほぼ三井のリハウス、東急リバブル、住友不動産販売等の仲介大手の独占状態であり、中小の不動産会社は弊社も含め、この大きな壁を超えることがなかなかできません。

 

そのため、中小の不動産会社は、中古マンションの売り手市場が続いているため、金融機関から低利で資金を調達し、自らが中古マンションの買い手となり、リノベーションして売り出すという戦略に活路を見出そうとしています。

 

しかしながら、この分野には既にイーグランド、インテリックス、トータルエステイト等の大手以外にも急成長しているエフステージや未来都市開発、新築分譲マンションが得意であった大京穴吹不動産や仲介大手の一角であったオークラヤ住宅も参入しており、まさに群雄割拠の様相を呈しており、買取価格が上昇し、更には、建築費の高騰も重なり、再販買取された物件の市場価格は上昇しています。

 

仲介大手はフルリフォームが必要な中古マンションの売情報を自らのルートや金融機関等から得て、再販買取業者に流します。そこで再販買取業者と売主から仲介手数料を両手でもらい、更に、リノベーションし終わった物件の情報を優先的に得られる場合もあり、そのような場合、1物件で仲介手数料を売り手と買い手双方から最高で4回も得られることになります。この仕組みが既得権益として存在しており、業界でも問題視されながらも、この仕組みは維持されたままになっています。

 

弊社ではリノベーション会社と組んで、中古マンションを購入者が自らの理想に近い形でリノベーションを行う案件を比較的数多くやらせて頂いており、金融機関も「中古マンションの購入+リノベーション」という仕組みにだいぶ対応して頂いているのですが、先述した権益が存在するため、なかなかリフォームしていない状態の物件を購入するお手伝いをさせて頂くことが難しくなってきています。

 

施工不良等が後を絶たない状態で、なかなか中古マンションを個人が購入して、工務店等に依頼することは難しく、だからこそ、再販買取業者がその心配と手間を省いているのですが、この既得権益の仕組みがもう少し改善されれば、売り手は価格をあげることができ、買い手は安く購入できるので、なんとかこの仕組みを変えることは出来ないか?と日々悪戦苦闘しています。

 

話を本題に戻しますが、レインズに掲載されている澁谷区内の売情報全126物件のうち20件が売主が不動産会社となっている再販買取物件となっています。率にして約16%となっています。

 

先述したように大手仲介に仲介手数料を支払って、リノベーションして、自分の会社の利益も加えるため、当然価格は、何もリフォームしていない物件よりも、数百万円~1,000万円程度高くなります。

 

今回は渋谷区で検証しましたが、沿線で検索するとエリアによっては全売出物件の30%越が再販買取物件というケースも珍しくありません。

 

これが、中古マンションの価格上昇の要因のひとつとなっています。但し、管理体制が良いマンションの場合であれば、機能を大幅に向上させたリノベーションをすれば、その物件(部屋)の価値は上昇するのが当たり前であり、一概に中古マンションの価格(何もリフォーム等されていない部屋)が上昇している訳では無いので、その部分はしっかり認識したうえで、中古物件の市場を見ながら物件選びをすることが重要です。

 

注意:ここではリフォームとは壁紙の張替えや間取りを変えない工事、古くなった設備の単なる交換等をさし、リノベーションとはフルリフォーム案件を主に想定して記載させて頂いています。

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渋谷区の中古マンション売出一覧(60㎡~80㎡).pdf
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