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都心のオフィスビル市況とビルの大小による賃料差について

2021年8月の都心5区のオフィス空室率
2021年8月の都心5区のオフィス空室率

渋谷区で主に中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

今日は、8月の都心五区のオフィス市況と、ビルの大きさにより募集賃料にどれくらいの差がでるのかを見てみたいと思います。

 

いつも通り、都心5区のオフィス市況については三鬼商事株式会社の「最新オフィス市況」を使用させて頂きますが、ビルの大小による賃料は三幸エステート株式会社が公表している「オフィスマーケットデータ」を参考にさせて頂きます。

 

トップクラスの大型ビルが多く集まる千代田区でも「丸の内・大手町エリア」の賃料と中小ビルが集積する「外神田・岩本町エリア」では募集賃料が、大規模ビルで坪1万5,000円以上、小型ビルでも坪1万2,000円以上の開きがあります。

 

また大規模ビルを100とした場合、大型ビルが80前後、中型ビルで70前後、小型ビルで60前後程度まで賃料坪単価に違いが出ます。

 

ここで利用しているデータは全て募集賃料で共益費も含めた形となっています。また消費税は、現在、国から総額表示で示すように通達が出ていますが、ここで利用する2社の募集賃料データはいずれも消費税は含まれていません。

 

消費税は預かり消費税と支払い消費税を相殺して差額を税金として納める仕組みのため、消費税込みの総額表示にしてしまうと正確な市況を反映しないためだと思います。

 

消費税を加味したい場合には坪単価のデータに消費税を加えれば、支払総額の目安がわかります。

2021年8月のオフィスビル市況 

都心五区のオフィス市況は平均で6.31%の空室率となっています。

 

既存ビルの7月の空室率は6.25%から8月は6.20%と0.05%と悪化しましたが、新築ビルの空室率が7月の11.42%から10.61%に改善されたため、全体としての空室率は小幅な悪化にとどまっています。

 

賃料単価は13ヶ月連続で下落しており、1年前の2020年8月比で坪1,890円下落しています。新築ビルは1年前と比較して坪3,226円も下落しています。

 

前月と比較して空室率が若干ですが改善したのは千代田区、中央区、新宿区の3区です。

 

空室率が最も低いのは4.49%の千代田区で、最も空室率が高いのが8.49%の港区になります。

ビルの規模別による賃料単価の差について 

上記は三幸エステートが公表しているオフィスマーケットデータから、中小ビルが比較的多く存在しているエリアを各区1エリア抽出してグラフ化したものです。

 

ビルは大型化するほど募集賃料が高く、小型ビル程安くなっています。

 

先述しましたが、大規模ビルに比べ、小型ビルは値段が安く、約6割前後の価格で借りれることになります。

 

ちなみにビルの大きさの定義はワンフロアの面積が

大規模ビル 200坪以上

大型ビル  100坪以上200坪未満

中型ビル  50坪以上100坪未満

小型ビル  20坪以上50坪未満

となっています。

 

またこれらのデータはあくまでも募集賃料データを使ったものであり、定借か普通借、契約期間、フリーレントの有無やその期間などの諸条件や値引き交渉等多岐にわたるため、実際の契約賃料とは乖離があるおそれがあります。またビルによっても築年数や駅距離などにより価格は変動します。

 

但し、募集賃料より成約賃料の方が高くなることはありません。あくまでも平均募集賃料なので、事務所移転の際の参考にすれば良いと思います。

 

これらのデータには消費税が除かれた外税表示となっていますので、目安として利用するのであれば、消費税税率10%を加える必要があります。 

 

また、逆のケースで弊社がビルオーナーから依頼を受けて賃料を決める際には、周囲の競合するオフィスビルのプラスポイントとマイナスポイントを数値化して、競合ビル分析表を作成し、賃料を決定します。

 

いかにフリーレントがあった場合とない場合の実際の支払家賃の差の計算式を紹介します。

 

 

(例)データで坪単価15,000円と表示されたエリアで20坪を3年間借りた場合の総額家賃支払の計算方法

   15,000円×20=月額30万円×1.1(消費税)=330,000円(月額家賃)

   33万円×36ヶ月(3年)=11,880,000円(総額支払家賃)

   となります。

 

   これに仮に3ヶ月のフリーレントが付いた場合の実効月額家賃を求める際には

   33万円×(36ヶ月-3ヶ月)=10,890,000円(総額支払家賃)

   10,890,000円÷36ヶ月=302,500円(消費込みの月額実効家賃)

   となります。

   

   フリーレントを獲得できた場合、月額27,500円 3年契約で990,000円得することになります。

 

現在はマイナス金利のためほぼ利息は考えなくて良いですが、金利が高い場合やインフレ時には最初にフリーレント期間を設けるか、契約期間終了時手前でフリーレント期間を設けるかによっても支払家賃の総額が違ってきます。