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住宅ローン利用者の実態調査から見た一番多い借入方法とは?

変動金利は支払額が上昇する可能性があります。
変動金利は支払額が上昇する可能性があります。

住宅ローン利用者はもともと変動金利を選択する人が多いのですが、ここ数年は更に変動金利を選ぶ方が増えています。

 

独立行政法人住宅金融支援機構が行った調査(2021年6月29日公表)では、変動金利を選択した方が68.1%、固定期間選択型が20.7%、全期間固定型が11.2%となっています。

 

固定期間選択型を利用する77.1%が当初の固定金利の期間を10年以上に設定しています。

 

全期間固定型ではフラット35を利用した人が約6割となっています。

 

新築マンションを購入した人の75.6%、中古マンションを購入した人の69.4%が変動金利を選択しています。

 

住宅のタイプ別でも「注文建替え」で変動金利を選択する人が41.7%と一番少ないですが、その他の新築建売や注文新築等の戸建ては66%~68.9%の範囲の人が変動金利を選択しています。

 

新築マンションの場合、変動金利を選択する人が他の住宅タイプよりも多いですが、その理由はデベロッパーが提携している銀行を利用すると変動金利の適用金利が非常に低い場合が多く、この提携ローンを利用する方が多いことが影響しているのではないかと考えられます。

 

新築戸建てや注文新築も大手の不動産会社やハウスメーカーが売主の場合には提携ローンがあり、借入当初の毎月の支払い額だけを見れば、最もが少なく抑えることが出来る変動金利を選択する方が多いからだと思います。

 

借入先別では銀行を選択した人の73%が変動金利を選択しています。労働金庫を選択した人の53.7%が変動金利を選択しています。

 

労働金庫は私が良く利用させて頂いている金融機関のひとつですが、私のお客様はほぼ全員が今までは変動金利を選択していらっしゃるので「半分ちょっとしか変動金利を選ぶ方がいない」というのは意外でした。

 

まあ、審査が通った方はどなたでも変動金利の場合は0.625%なので、安い金利を追求するのであれば、りそな銀行や最近ではみずほ銀行が安い商品を出しているのでそちらを選択するのかも知れません。

 

労働金庫は、労働組合に加入している勤労者もしくは生協に加入している人を融資対象者としており、通常であれば年収の8倍近くまで借り入れることが可能で、リフォーム一体型でも借り入れが可能です。

 

そのため、自己資金をあまり出したくない方や中古マンションを購入してフルリフォームをする方が利用されることが多いのかも知れません。

 

変動金利型の場合は融資比率は物件価格に対して90%~100%の方が32.4%、諸経費まで借りる、いわゆるオーバーローンの方が13.4%となっています。

 

オーバーローンの方は購入時の諸経費まで借りる方とリフォーム一体型でリフォームをする方に二分されます。

 

私が住宅を購入した十数年前は物件価格の2割+購入諸経費は自己資金で用意するのが最低ラインと言われ、金利も2%を超えていました。

 

それを考えると、今は、住宅購入者は非常に有利な条件で住宅ローンを組むことが可能で、羨ましいくらいです。

 

ただ、気を付けないといけないのは、いくら安く、また、多額の資金を借り入れることはできても、それはあくまでも借金であり、必ず最終期日までに返済しなければいけないので、その点は良く考慮した方が良いと思います。

 

まだ先と考えていても、あっという間に人生は過ぎ去っていきます。私も、自分は若いと思っていたのに、気づいたら、いつの間にか50代半ばになっておりました。(笑)

 

住宅ローンを組む方の世帯年収は変動金利や固定金利等にかかわらず半分以上の世帯が600万円~800万円の範囲となっています。

 

変動金利型を選択した人の返済負担率は15%超~20%以内が26.9%、10%超~15%以内が21.7%、20%超~25%以内が19.2%となっています。

 

私の経験上、家だけでなく旅行や外食も楽しみたい方や趣味がある方は、返済負担率は最低でも25%以内に抑えるべきです。そうでないと車も所有していたりすると、貯金も出来ず、子供の教育費も十分に出せなくなる可能性があります。 

金利上昇を甘くみては行けない!  

調査では、今後1年間の住宅ローンの金利の見直しについての意識調査があり、「ほとんど変わらない」が65%、「現状よりも上昇する」が20.4%となっており、金利が上昇するかも知れないと考えている人が多少増加しています。

 

また、商品性や金利リスクの理解度では約20%の人は十分に理解していると回答、ほぼ理解しているが35%前後となっており、逆に言えば、約半数の人は金利上昇等のリスクについて十分に理解していないまま金消契約を結んでいることになります。

 

住宅ローンだけで何冊も本が出ているくらいなので、ある程度ご自身で勉強しておかないと、金融機関でびっしり記載された契約約款及び契約に関する説明書を見せられ、要点だけを説明されてもわからいのは至極当然のことかも知れません。

 

金利上昇時の具体的な対応策については、約65%の人が何らかの対応が出来るとしていますが、見当がつかないと回答した人が約2割います。

 

また借換で対応と答えている人が13%程度いますが、短期金利が上昇した際には既に中長期金利は上昇していたり、金融機関が審査を厳しくしている可能性があり、実際には借換が困難になっている可能性もあります。

 

変動金利の場合、「5年据え置き+1.25倍ルール」というものがあり、多くの金融機関ではこのルールを採用しています。

 

変動金利の場合、半年ごとに金利の見直しがありますが、当初5年は金利が上昇しても返済額は変わりませんが、金利が上昇した分元金の返済が減ることになります。

 

また6年目に金利上昇分の支払いが発生しますが、今まで支払っていた額の1.25倍以上支払額は増えません。

 

元利均等支払で毎月10万円の支払いであった場合、12.5万円以上支払額は増えません。

 

かと言って安心はできません。金消契約の約款には金利が上昇した分や返済額が今までより125%以上になった分の残債は、金消契約終了時に一括して返済しなければならない。とする契約条項が記載されている場合がほとんどです。

 

金融機関は儲けの拠り所である金利を先に徴収するので金利が上がれば、当初返済できていたはずの元金が減らないまま金消契約の契約が終了してしまうので、その際に、全額を支払ってください。と記載されているのです。

 

中には、残った元金を再度5年程度期間を延長して支払う金消契約を結び直してくれる場合もありますが、基本は契約終了時一括返済となります。

金利が上がった場合の支払額の差はどれくらい?  

黒田日銀総裁のもと、マイナス金利が経済を支える大きな力の一つになっていましたが、新型コロナのパンデミックにより、株価は実体経済とは裏腹に高値更新中ですが、実態経済はあまり思わしくない状況が続いています。

 

ワクチン接種により、明るい兆しも見え始めている一方で、ウイルスも生き残りをかけて、変異しますので、そうやすやすと新型コロナのパンデミックが終息するとは思えません。 

 

このような状況下でマイナス金利を終わらせてしまうと、日本経済が本当にクラッシュしてしまうため、しばらくはマイナス金利が続くと思いますが、黒田総裁の任期が満了した後はどうなるかわかりません。

 

日本は少子化が続いており、また住宅もその状態の良し悪しは別としても、既に住宅は大量に余っている状態とSDGsの普及により、新築の住宅市場が経済に与えるインパクトは年々減少傾向にあります。

 

更に、コロナ禍による政府のコロナ対策により半端ない公的資金が消費されており、今後、かなりの増税が予想され、また、税制優遇もコロナ禍前と同様に続くか不透明です。

 

最近、メガバンクや一部の地方銀行では住宅ローンにかかわる人員の削減や、不動産決済時のブースの貸し出し等を行わない等かなり露骨な転換を行っています。

 

これは低金利のため、金融機関が、かつては強化していた住宅ローンの案件数の減少と利回り低下により、旨味がなくなったことを意味しています。

 

この流れはやがて政策にも現れ、住宅購入時の様々な優遇政策もやがて転換期がやってくるものと思われます。

 

上記の表は、現在の主要銀行の住宅ローンの最優遇金利が段階的に、上昇した場合を仮定して試算した表です。

 

3,000万円を30年で元利均等支払で返済する場合の利率による支払いです。

 

金利がいきなり1%上昇することは無いと思いますが、仮に1%あがっても1.25倍にはならないため、非現実的な数値とは言い切れません。

 

5年ルールが無い場合は直ぐに金利上昇分が毎月の支払額に反映されます。 

 

まだ先のことだとは思いますが、金利が上昇した際のリスクヘッジとして、緊急時の際に対応できる預金や許容範囲内での投資等を行って、もしもの際の備えを蓄えておく必要があると思います。