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アスベスト除去費用にお金がかかる訳??

渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

数カ月前から携わっている、土地の売買のための病院の解体工事で、アスベストを取り除く工事が終わり、報告書が届きました。

 

今回アスベストレベル1があったのは煙突内で作業自体はわずか5日程度で終わってしまったため、都合がつかず実際に立ち会うことはできませんでしたが、解体工事会社からアスベスト撤去工事の報告書が届きましたので、その内容についてお話したいと思います。

 

この報告書を見れば、おおよその工事内容はわかるので、熟読しました。

 

レベル1クラスのアスベストの除去工事に関与したのはさすがに初めての経験で、改めて、アスベストの撤去には多額の費用がかかることがわかりました。

 

以前にもこの工事の見積もりの概要はブログに掲載させて頂きましたが、RC造3階建ての建物本体の解体費用(付帯工事等除く)が810万円、アスベストの除去費用が800万円とほぼ同額なのには驚きましたが、その理由は、全てが特注品を使っているからです。

特注品は全てが割高!!

高級品は利益率が高いというのは常識です。一番わかりやすいのが車で、トヨタで言えばレクサスが最も利益率が高いことはいわば暗黙の了解事項となっています。

 

部屋の内装工事で使うクロスも安いものでは㎡700円くらいからありますが、高いものだと㎡数千円もします。

 

新宿西口の新宿パークタワーのOZONEショールームに行くとびっくりするのですが、余裕で新車のベンツが1台買えてしまうくらいのシステムキッチンやダイイングテーブルなどが、所狭しといっぱい陳列されています。

 

これらの利益率はもの凄いと思います。名称は同じで、利用の仕方もほぼ同じなのに、デザインと使用している材料が高く、それに大幅に利益率をのせています。

 

ただ、これらの戦略はフェラリーと一緒で大量生産せずに、市場に数が出回らない営業戦略なので一概にはぼったくりとは言えません。

 

何でもプロ仕様とか特別仕様と名の付くものは、わずかな違いで、とても高額な値段に跳ね上がります。また、人はそれを魅力に感じてしまうです。

 

私がドサ回りで現場の丁稚をやっていたころ、ゴミを捨てるガラ袋をよく使っていましたが、安い麻袋だと、鉄の切れ端を入れようとすると途中で引っかかってしまったり、垂木に打ってある釘をつぶしておかないとそれが麻袋から出て危なかったりしますが、高い特殊繊維を織り込んだ麻袋だと引っかかりがなくて、ゴミを入れやすいのですが、1枚の単価は安いといえども大量に使用するので、高性能麻袋はマンションの室内のリフォーム等で使用し、土をいじったりする土木系では安い麻袋を使うのが半ば当たり前でした。

 

話を元に戻しますが、アスベストは外に飛散させてはならないので、特別仕様のゴミ袋や、除去したアスベストは、ダンプではなく、専用の廃棄物収集運搬車両による輸送になり、最終処分場はアスベスト専用の処分場で、場所は三重県でした。

 

更にわずか5日程度の工事のために、クリーンルームの設置、作業員の完全防護服の着用、工事前、工事中、工事後に大気中にアスベストが飛散していないかの専門機器を使って大気の測定。

 

はたまた特別洗浄剤、アスベスト工事のための標識、毎日の石綿取扱い作業実施記録、資機材点検記録(40年保管)の作成など、全てが特注品です。

 

当然規則で定められているので、それらが安くなるはずがありません。

 

これに加え、膨大な量の作業の事前届出書や完了報告書を役所へ提出したり役所の立入検査が行われます。

 

これに請け負った企業の利益が加算されるので、見積もり額は雪だるま式に高くなります。

 

ただあまり納得できないのは、先ほどお話したフェラリーであれば保有しているだけで逆に価値が更に上がったりしますが、建物の解体で発生するアスベストは全く価値がなく、健康にも有害で、更に役所から厳しい指導を受ける厄介者で、正に「百害あって一利なし」なので、あまりに高い工事費は問題だと感じています。

 

汚れ仕事は昔から値段が高いのはわかっていますが、あまりに高いと誰も解体工事をしなくなる。又は、黙って解体してしまうという悪循環が起きるのではないか?と危惧しています。

老朽化した建物は不動産ではなく、負動産になってしまう?? 

最近は防犯面や利便性、快適性などの様々な点から戸建てよりもマンションが人気となっています。

 

コロナ禍で郊外の中古の戸建てを見直す動きもあるにはありますが、築年数が経過した郊外の多くの戸建は買い手を見つけることが難しくなっています。

 

そのような状況下でも建物を壊して、更地にすれば売れるといったケースは多々あります。

 

両親が住む家を継がずに、都心でのマンション暮らしというパターンが、一般化しつつあり、昔であれば、郊外の中古戸建でも買い手が見つかりましたが、今は厳しい状況です。

 

更に人口が減りだした郊外の戸建てエリアはバス路線の減便や廃止もあり、土地の値段が下がる傾向にあります。

 

これに反して、建物の解体費用は年々上昇しており、この傾向は暫く続くものと思われます。

 

土地が少なくとも100万円以上で売れないと、建物の大きさによっては、親から相続した戸建て付きの土地が負の財産となる恐れがあります。

 

仮にアスベストが見つかった場合には数百万円別途でかかる可能性があり、その点を考慮した場合は、最低土地代が500万円以上にならないと、現金の持ち出しになる可能性があります。

 

今後は、郊外の相続が増えれば、更に相続放棄される戸建て付きの土地が多くなるかも知れません。

 

今年の7月に千葉県木更津市で土地の売買をやらせて頂いたのですが、取引した土地に向かう途中には、朽ち果てた建物が至る所にあり、既に、土地代が安い場所では、老朽化した建物を壊したくてもお金が無くて取り壊せないという現実に直面しているのだとひしひしと感じました。