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マンションの建物部分の価格の出し方

渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

中古マンションを売却した際に、利益が出た場合は、税金の支払い義務が生じ、逆に損失が出た場合は、給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)する事が出来る可能性があるので、いずれにしろ、譲渡所得金額を算出をする必要があります。

 

譲渡所得金額を算出するには、建物の減価償却費用相当分がいくらになるのかを計算する必要があります。

 

この際に、建物と土地の価格が区分されていない場合はどうすれば良いのしょうか?

 

再販買取業者等の法人から購入した物件であれば、土地には消費税がかからないため、消費税額がわかれば、逆算して建物価格を出すことが可能です。

 

但し、個人から取得した場合、ほぼ100%、土地と建物はわかれていません。

 

この場合、税務署から、下記の「建物の標準的な建築価格表」が公表されていますので、これを基に、まずは建物の価格を求めます。

 

この表は国土交通省が発表している「建築着工統計」の「構造別:建物の数、床面積の合計、工事費予定額」表を基に、1㎡当たりの工事費予定額を算出(工事費予定額÷床面積の合計)したものです。

建設された年により建物価格は全く異なる??

では具体的に上記表を使って、年代の違うSRC造マンションで「建物の取得費」計算してみましょう。

 

建物の取得費には購入にかかった諸費用も含める必要があるため、まず、建物価格を計算し、土地と建物の比率を計算し、その比率で按分した諸経費分を建物価格に加えたものが「建物の取得費」を計算する基礎となり、そこから経過年数分の償却費相当分を計算します。

 

経過年数とは建物が建築された年月日からその建物を購入した日までの経過年数を言います。

 

例えば2000年に建築されたマンションを2015年に取得したのであれば、経過年数は15年となります。

 

細かいことを言うと、経過年数は半年以上を1年、半年未満は切り捨てで計算します。

 

(計算例)

購入価格はいずれも6,000万円、諸経費も同じ8%と仮定します。取得日はいずれも2015年(平成27年)とします。

 

2006年(平成18年)築の80㎡のSRC造のマンション 購入価格6,000万円 諸経費480万円 総額購入費6,480万円

建物代=13,640,000円(170,500円×80㎡)

土地代=46,360,000円(60,000,000円-13,640,000円)

 

上記の価格での土地と建物の按分割合は下記の通りとなります。

 

土地:建物=77.3%:22.7%

 

上記割合で諸経費を土地と建物に案分すると

土地3,710,400円

建物1,089,600円

 

となるので建物の取得費は13,640,000円+1,089,600円で14,729,600円となります。

 

2006年のSRC造の80㎡のマンションの建物取得費は14,729,600円

 

2009年(平成21年)に建築された80㎡のマンション 購入価格6,000万円 諸経費480万円 総額購入費6,480万円

建物代=21,216,000円(265,200円×80㎡)

土地代=38,784,000円(60,000,000円-21,216,000円)

 

同じく、上記の価格での土地と建物の按分割合は下記の通りとなります。

 

土地:建物=64.6%:35.4%

 

上記割合で諸経費を土地と建物に案分すると

土地3,100,800円

建物1,699,200円

 

となるので建物の取得費21,216,000円+1,699,200円=22,915,200円となります。

 

2009年のSRC造の80㎡のマンションの建物取得費は22,915,200円

 

わずか3年しか建築時期は異なっていませんが、約820万円も建物の価格が変わることになります。 

減価償却費相当額を控除した建物の取得価格と税金の計算 

では実際の「取得価格」がいくらになるのか計算してみたいと思います。

 

いずれの場合も2015年に物件を取得したと想定していますので

 

2006年築の物件が経過年数9年、2009年築の物件が経過年数6年となります。 

 

建物の減価償却相当額の計算式は下記の通りとなっています。

 

減価償却相当額=「建物の取得価額×0.9×償却率×経過年数」

 

居住用建物などの非業務用建物で(鉄骨)鉄筋コンクリートの場合の償却率は0.015となります。

 

余談ですが事業用の場合は償却率は0.022となります。

 

2006年(平成18年)に建築された80㎡のマンションを2015年に取得

14,729,600円×0.9×0.015×9年=1,789,646円(償却費相当額)

取得費64,800,000円-1,789,646円=63,010,354円

 

2006年築のマンションの取得価格63,010,354円

 

2009年(平成21年)に建築された80㎡のマンションを2015年に取得

22,915,200円×0.9×0.015×6年=1,856,131円(償却費相当額)

 

取得費64,800,000円-1,856,131円=62,943,869円

 

2009年築のマンションの取得価格62,943,869円

  

となり、税法上の計算では、築年数が3年異なるだけで、それ以外は全く同条件同価格で購入したマンションでも、築年数が古い2006年築のマンションの方が資産価値が高いという計算になります。

 

ここまで計算したので、仮に両方も2021年に同額の6,600万円で売却、譲渡費用がいずれも230万円かかった場合の譲渡所得の金額は

 

譲渡所得金額の計算式=収入金額(売却値段)-(取得費+譲渡費用)なので

 

66,000,000円-(63,010,354円+2,300,000円)=689,646円

 

66,000,000円-(62,943,869円+2,300,000円)=756,131円

 

いずれも課税利益が発生しますが所有期間が5年を超えているので税金は長期譲渡所得の税率となり

 

2006年築のマンションの税額(譲渡税)は689,646円×0.20315≒140,100円

 

2009年築のマンションの税額(譲渡税)は756,131円×0.20315≒153,600円

 

となり、今回の計算上では築年数が古い2006年築のマンションの方が税金の支払が少なくなる(資産価値が2006年築のマンションの方が税法上高い)結果となりました。

 

ただし、マンション売却で利益がでたらどうなる?でも記載しましたが、マンションを売却した際に譲渡益がある場合には、3000万円の特別控除の特例等があるため、譲渡税を支払う方はあまりいません。