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住みたい街と住みやすい街のギャップ!

渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

2022年3月3日にリクルートが毎年恒例の「住みたい街ランキング首都圏版」を公表しました。

 

前回2位だった恵比寿駅が4位になり、吉祥寺駅が3位から2位に浮上し、大宮駅も4位から3位に浮上しました。

 

不動の1位は5年連続の横浜駅でした。

 

急上昇したのが、近郊観光地の川越駅で前年46位から30位、前年101位から59位の江ノ島駅などで、流山おおたかの森駅も前年39位から16位と急上昇しています。

 

コロナ禍を反映して、郊外の商業集積地や海が近いエリアの駅も上昇しています。

 

でもこの集計はあくまでも「住みたい街のランキング」なので、いわば「住みたい理想の街」です。

 

一方で、「住みやすい街」のランキングは、フラット35の融資機関であるアルヒが、住環境、交通の利便性、教育・文化環境、コストパフォーマンス、発展性の5つの基準を設定して評価したもので、平均的な家族が「本当に住みやすい街」を選定したもので、コストパフォーマンスに優れた郊外の駅が多く選ばれています。

 

「住みたい街ランキング」では10位中5駅が23区内の都心部の駅が選出されていますが、「住みやすい街ランキング」では都心部の駅は月島駅のみとなっています。

 

下記の表の黄色の部分は23区内の駅を示しています。

参照 株式会社リクルートのSUUMO住みたい街ランキング2022首都圏及びアルヒ株式会社本当に住みやすい街大賞2022を基に作成
参照 株式会社リクルートのSUUMO住みたい街ランキング2022首都圏及びアルヒ株式会社本当に住みやすい街大賞2022を基に作成

住みたい街と住みやすい街の違いとは?? 

「住みたい街」と「住みやすい街」との決定的な違いは、不動産の価格です。

 

不動産の格言で「住む人の年収で住むエリアが決まる」というものがあります。

 

世の中、全てがお金では決してありませんが、現実的に親の相続や宝くじの当選等で多額の現金を所持していない限り、一般家庭のサラリーマンが、麻布や広尾等の数億円もする高級マンションを購入することはできません。

 

仮に購入出来ても、恐らく、住み続けるのは大変だと思います。

 

横浜駅や浦和駅は郊外とはいえ、駅徒歩10分以内の中古マンションでも人気がある物件は1億円を超える物件もあります。

 

大宮駅も駅から徒歩10分以内の中古のファミリータイプマンションでも6,000万円~8,000万円程度します。

 

吉祥寺駅や鎌倉駅だと駅徒歩10分以内は1億円を超える感じです。

 

JR山手線内(池袋駅~品川駅)の駅徒歩10分以内であれば1億円以上の物件がごろごろあり、2億円を超える物件も珍しくありません。

 

逆に、「住みやすい街」の1位の辻堂駅や2位の川口駅では、駅徒歩10分以内のファミリータイプのマンションだと4,000万円前後から物件が出てきます。

 

3位の多摩境駅では同条件で3,500万円程度から物件が出てきます。

 

築年数や広さなどのが同条件の平均的な物件で比較すると、「住みやすい街の中古マンションの価格」と「住みたい街の中古マンションの価格」の差はおおよそ約半分から三分の一の程度となっています。

住みやすい街の注意点とは?? 

住みやすい街の注意点は、ハザードマップ上、浸水リスクが高いエリアが多いことです。

 

昔から高級住宅地は高台にあるのが基本で、周囲には大きな公園や神社などがあるケースが多く、都心部で言えば、江戸時代の藩邸があった場所などです。

 

一方で、主要な国道1号線やJR東海道線、国道14号線やJR総武線より南側は埋立地が多く、軟弱地盤で津波の被害の可能性もあります。

 

明治時代の富国強兵制度による日本強靭化計画では、経済と物資輸送の要である、これらの主要国道や鉄道は、地震等の災害が起きた場合でも機能するように、津波等が極力こない場所につくられています。

 

日本は国土が狭く、山地や河川も多く、また、元来、人は川に近い場所に集落をつくり街を発展させていったので、浸水エリアを全て回避すること自体矛盾することで不可能ですが、イメージとして上記のことを頭の片隅に、残して頂ければ幸いです。

 

1位の辻堂駅は、駅周辺は問題ありませんが、湘南新道(県道30号線)より南側へ南下すると津波のリスクがあるエリアが出てきます。

 

2位の川口駅は東京都との境になっている荒川がはん濫した場合、川口駅周辺を含む広大なエリアで3m以上浸水する可能性があります。

 

船堀のある江戸川区はその大部分が浸水する可能性があります。

 

月島駅エリアは埋立地で軟弱地盤の可能性が高いですが、ハザードマップ上は浸水予想地域には指定されていませんが、月島を除く周辺エリアの多くは、浸水リスクがあるため社会インフラが駄目になる可能性があります。

 

また、浸水リスクとは違いますが、新秋津駅は西武池袋線の秋津駅との乗り換えによる朝夕の通勤ラッシュにより周辺の道路の混雑が問題になり、TVにも取り上げられたことがあります。

 

このように今回選ばれた「本当に住みやすい街」にもいくつかの落とし穴があり、特に浸水リスクは非常に重要な点なので、これらの選ばれた駅の物件を購入する際には、しっかりとハザードマップ等で確認しておくことが必要です。