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2022年6月の都心のオフィスビルの空室率

渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

オフィスビル仲介大手の三鬼商事株式会社が毎月公表している最新オフィス市況によると2022年6月の都心(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)のオフィスビルの空室率は6.39%と昨年の2021年6月から13ヶ月連続で6%台の空室率が続いています。

空室率の上昇は一服し、一旦は踊り場へ! 

都心部のオフィスビルの空室率は2022年3月の6.37%から狭い幅の範囲で上下動しています。

 

然しながら、オフィスの空室率の上昇が下げ止まると考えるのは少しばかり、早計過ぎるかもしれません。

 

理由は3つあります。

 

1つ目は圧倒的に安定していた千代田区のオフィスの空室率が2022年4月から3カ月連続で5%を超える事態となっています。

 

千代田区は官公庁と日本の優良企業が集積するエリアで、大型のビルも多く、常に安定した入居率を誇っていましたが、空室率5%超えが常態化しつつあります。

 

2つ目は深刻な新築ビルの空室率です。今月に限ったことかも知れませんが、新築ビルの2022年6月の空室率が37.66%となっています。

 

2022年3月から5月までの3カ月間の新築ビルの空室率は20%弱と高い空室率が続いていましたが、ここにきて一気に2倍弱も空室率が上昇しており、簡単にはこの空室率を下げることは難しいと考えます。

 

3つ目は2023年には、都心部(東京23区)では新たに約145万㎡のオフィスビルが完成する予定となっています。

 

2021年約61万㎡、2022年は約49万㎡とかなり少ない新築オフィスビルの供給予定であったにもかかわらず、空室率が上昇しているのに、2021年と2022年の合計供給量を約1.3倍も上回る新築オフィスビルが2023年に供給される予定で、このままの状態が続けば必ず供給過多が加速し、更なるオフィスビルの空室が進むことになります。

 

ここ最近、日本橋界隈や東京駅から銀座付近に出かけることが多かったのですが、知らないオフィスビルが至る所に建っており、また、建築中の大規模な工事現場が複数あり、びっくりしました。

 

私が信託銀行へ出向していた2002年から2003年にかけては、勤務地が信託銀行の本店がある日本橋だったこともあり、また、オフィスビルの証券化の提案や新築オフィスビルの開発提案等の業務もしていたことから、千代田区や港区の大型のオフィスビルにちては、ほぼほぼ把握していたのですが、最近、このエリアに出かけるたびに、お上りさん状態になってしまっています。

平均賃料は23ヶ月連続で下落! 

世の中は需要と供給のバランスで動いていますが、当然オフィスビルも空室率が上昇すれば、賃料を下げてでもテナント獲得に躍起になります。

 

1年前の2021年6月のオフィスビルの平均賃料は坪21,160円でしたが、2022年6月の平均賃料は坪20,273円となっており、坪単価2万円割れ目前まできています。

 

新築ビルに至っては、2021年6月は坪30,037円と坪3万円台だった賃料が、2022年6月は坪24,400円となっており、1年前と比較して坪当たり5,637円も下落しています。

 

先述した2023年に完成するオフィスビルの中には、開発に何十年もかけ、コロナ禍前のオフィスビルの市況を元に、計画されたものもあり、工期も数年を要する大規模プロジェクトが含まれています。

 

そのため、このコロナ禍による空室率の上昇や賃料の下落をそのまま受け入れる訳には行かないはずです。

 

更に、資材単価や人件費、運搬費の上昇により、計画当初よりもかなり建築コストは上昇しているはずであり、オフィスビルの経営者はかなりの苦戦を強いられるはずで、オフィス系のリートの投資口価格も大幅に下落する可能性があると思います。

 

現在、テレワークワーク推進企業と通勤を復活させる企業、その双方を組み合わせた「ハイブリット化」を進める企業と、業界や企業ごとに、新たなワークスタイルが模索されていますが、コロナ禍前の状態に戻ることは無いという考え方が大半です。

 

なのでオフィスビルの空室率が1%を切るような状態には、戻らないと思います。

 

しかし、昨日の夜10時にNHKで放送された「太平洋戦争”言葉”で戦った男たち」という番組で、「日本に無差別に爆弾を投下したB29の乗組員が、日本本土に爆弾を落として米軍の基地があるテニアンに戻ってくると、テニアンで両親を亡くした日本の孤児たちと、野球をしたり、パーティに誘ったりして、本当に可愛がっていた。彼らは精神が完全に分裂していた。人通しのふれあいがあれば、決して戦争などおきないのに、、、」というフレーズが頭に残りました。

 

人が人とじかに触れあうことがなくなり、このままテレワークがどんどん進めば、更に、ネット間による誹謗中傷だけでなく、取引先の企業や社内の仲間通しでもギスギスした関係が増え、トラブルが増加するのではないか?と感じてしまいました。

 

イーロン・マスク氏が「従業員にオフィスに戻れ」といったり、グーグルの創設者が、シリコンバレーに優秀な人材が集まるのはなぜか?という言葉を発するように、新たなイノベーションや人としての愛情は、直接話し合う機会が絶対的に必要だと私は考えます。

 

時代遅れの一人のおっさんの戯言かもしれませんが、完全テレワーク化は更なる分断化を招く道だと感じてしまうのです。

 

少なくとも、完全テレワーク化は下火となり、通勤とテレワークをうまく両立したハイブリット化により、オフィスにコロナ禍前までは戻らないにしても、多くの人が戻ってくることを密かに願っています。