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マイホームを買う前に収益不動産は買ってはいけない!?

渋谷区で主として中古マンションの売買仲介をおこなっている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

30代前半で年収が1,000万円を超える一流企業で働くビジネスマンや勤務医、収入が安定している公務員の方がマイホームを購入しようとして、住宅ローンの事前審査を行い、金融機関より謝絶(審査が落ちてしまうこと)されてしまうケースがあります。

 

その原因の多くは、収益不動産に投資しているためです。

 

収益不動産は収入があるので、「収益不動産を購入しても住宅ローンの審査には影響はありません。」という営業トークに惑わされてはいけません。

 

多くの場合、収益不動産の購入はマイホームを購入の大きな妨げとなります。

収益不動産の購入は結婚前の単身者が多い!?

富裕層と言われる方の多くが不動産投資を行っているという事実は、疑う余地はありません。

 

そして不動産投資が富を得るための重要な手段というのも事実です。

 

また、それらの富裕層の方々は、現物の不動産投資だけでなく、株式投資や債券への投資などを行っており、「卵はひとつの籠にいれるな」という投資の基本原則の基にリスク分散をしています。

 

この考えはとても正しいのですが、独身時代にワンルームマンションへの投資を行ったために、マイホームを購入する際の住宅ローンが通らずに、マイホームの購入を断念したというケースが実は非常に多いのです。

 

特に、勤務医の方やネット系企業、収入の安定している公務員の方にこのケースが当てはまります。

 

更に年齢層で言うと、不動産投資を行う世代は日本の年金制度へ不信感を持っており、将来に対する不安がある20代後半から30代の方が非常に増えています。

 

今は晩婚化が進んでおり、厚生労働省の発表によると令和3年の平均初婚年齢は夫31.0歳。妻29.4歳となっており、結婚前に不動産投資を行っている方が一定数存在していることになります。

 

独身であれば、自分の稼いだお金は自由に使えるので、結婚前に不動産投資を始める方が結構多いのです。

 

結婚してしまった後は、基本夫婦別々にお金を管理していたとしても、数千万円かかる不動産投資を奥様又はご主人に黙って行うというのは心理的にハードルがあがるため、収益不動産を販売する不動産会社は、収入がある程度ある独身の30代前後の方を主要なターゲット層のひとつとして営業攻勢をかけるのです。

節税対策としての不動産投資は有効でも、住宅ローンにはマイナス要因!? 

年収が多い方ほど、累進課税制度により、税金の支払が多額になる日本では、高額所得者の方の多くは、税金の支払は日本国民である以上当然の義務として認識していますが、出来る事なら少しでも税金の支払いが安くできればと思っています。

 

老後の安定資金の確保と節税対策が出来る不動産投資は、魅力的に映りますが、実は大きな盲点があります。

 

それはタイトルそのままで、投資用不動産への投資金額は住宅ローンを借りる際には大きなマイナス要因となってしまうのです。

 

車のローンやクレジットによる多額の買い物も、住宅ローンの審査に多少は影響がでる場合がありますが、一番大きなリスクは投資用不動産への投資です。

 

収益不動産への投資は、ほぼ全額を借入で賄うことが多いのが実情です。

 

例えば3,000万円の新築の投資用分譲マンションを購入する場合、頭金100万円で後は諸経費も含めて全額ローンというパターンの場合は債権額は3,100万円程度となりその時点でオーバーローン(不動産の価格よりも借入額が多い事)となっています。

 

35年で金利1.7%の変動金利で購入した場合、毎月のローンの支払額は約85,000円程度となり、毎月の管理費と修繕積立金が仮に20,000円とした場合、毎月の収益不動産に対する支払いは105,000円となります。

 

賃料が月額80,000円入ったとしても毎月25,000円の赤字プラス固都税がかかり、年間40万円程度の赤字となります。またサブリースは安定していますが、築20年以上経過した物件が、同じ金額でサブリースをしてもらえる保証もなく、原状回復費用も考慮すると金融機関の審査部では、収益不動産の評価はかなり厳しく、多くの場合、大きな負債を持っていると判断されます。

 

その結果、年収1,200万円の方で本来7,500万円程度のマイホームの購入が可能な方が、投資用ワンルームマンション1室を所有していたために、3,000万円台のマイホーム用のマンションを購入するために金融機関に住宅ローンの事前審査を申込み、「審査に落ちてしまう」ということが起こるのです。

 

投資用不動産に融資をする金融機関は、住宅ローンも取り扱っている場合がありますが、投資用不動産に融資している部署は、投資用不動産を購入する個人よりも投資用不動産の売買を行う企業に重きを置いており、個人の与信を重視する住宅ローンの部署とは全く性質が異なります。

 

そのため、追加で投資用不動産のローンは通っても、マイホームを購入するための住宅ローンは審査に落ちるという悲劇が起きるのです。

 

例外として、例えば、金融機関の評価額が4,000万円する投資用不動産のローン残高が半分以下の場合や、逆に何十億円も既に投資用不動産を所有している方などは、マイホームの購入が可能となる場合もあります。

 

資産形成の一環として収益不動産を購入するという選択肢は、全く否定しませんし、また資産形成のための有効な手段です。

 

但し、大前提として収益不動産のご購入は、マイホームを購入してからにした方が無難です。

 

奥様とマイホームのご購入を決め、いざ、事前審査の際に、「実は収益不動産を所有しています」と申告され、審査落ちした際の奥様の落胆ぶりを何度か目の当たりにしている私としては、このような新たな悲劇は、繰り返して欲しくはありません。

 

独身の方で、将来結婚してマイホームのご購入を少しでも考えている人は、投資用不動産のご購入は再度、慎重に考えましょう。