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心に沁み込む日本の建築傑作集 「東山旧岸邸」と「とらや工房」

東山旧岸邸のダイイングルーム
東山旧岸邸のダイイングルーム

渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行なっている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

旧東山岸亭邸は今は亡き安倍晋三元首相の母親方の祖父である、岸信介元首相が1970年(昭和45年)73歳のときに御殿場市東山に転居した際の晩年の邸宅です。

 

伝統的な数寄屋建築と現代的な住まいとしての機能の両立を目指した建物で、現在は登録有形文化財に指定されています。

 

建築家吉田五十八が設計、吉田五十八は成田山新勝寺本堂、五島美術館、外務省飯倉公館や吉田茂邸、秩父宮邸、岩波茂雄別邸や吉兆などの数々の料亭の設計でも有名です。

 

太田胃散の創業者、太田信義が58歳のときの子であることから五十八(いそや)と名付けれれ、母方の性が途絶えるのを防ぐために吉田姓を継いでいます。

 

数寄屋建築(すきやけんちく)とは一言で言えば、茶室(ちゃしつ)がベースになっている建築様式です。

 

案内の方にお伺いしたところ、安倍晋三元首相も首相就任後も何度も訪れた場所との事でした。

 

非常に落ち着いた邸宅で、数寄屋造りの真骨頂である自由な造りと、窓を額縁として庭園を眺めるという手法が際立っている邸宅です。

 

置いてあるソファや椅子に腰かけてみる事や庭園を散策することも可能です。

 

洋室のソファに座ると、テーブルに庭園の緑が写り込んで、とても幻想的です。

 

天井高が高く、開口部も広く、何時間でもいられるような特別な空間となっています。

 

入館料が大人300円、中学生と高校生は150円となっていますが、必見の価値がありますので、御殿場にお越しの際は、ぜひ立ち寄ってみるべき優れた建築物です。

 

建築データ

設  計 𠮷田五十八

施  工 水澤工務店 東京都江東区木場五丁目6番1号

造  園 岩城造園(現:株式会社岩城 東京都世田谷区深沢八丁目7番13号)

敷地面積 5,669.17㎡

延床面積 567.66㎡

竣  工 1969年(昭和44年)

 

東山旧岸邸の公式ホームページはこちら

とらや工房 

東山旧岸邸と隣接しているのが日本を代表するとらやの施設である「とらや工房」です。

 

和菓子の原点である。「おししい和菓子を気負いなく、ありのまま、素朴で、無骨にお客様や地域とのつながりを大切に・・・との想いで、自然を想い、和菓子を想うひとときを、お客様と作り手がともに過ごす場所」との事です。

 

とらやの店舗ではあまり見られない、まんじゅう、大福、あんみつやかき氷もあります。

 

建物は周囲の竹林と一体化しており、更に風鈴の音色が心地良く、岸邸と同様いつまでもいられるような空間です。

 

また、喫茶室の前には池があり、子供たちが、池の生物取りに夢中になっていますが、その声さえも一種の音色のようでこ心地よさを感じました。

 

ちなみに採れていたのはヤゴのようでしたが肉食のヤゴがいるのなら小魚もいるのだと思います。

 

販売所と喫茶室は内藤廣(ないとうひろし)建築設計事務所が手掛けています。内藤廣は建築家でもあり、東京大学名誉教授でもあります。

 

海の博物館(三重県鳥羽市:竣工1992年)で第18回吉田五十八賞を受賞していますので、旧岸邸とも縁があるものと思われますが、そのような記述はありません。

 

施工はスーパーゼネコンの鹿島です。

 

新入社員からゼネコンに十数年間在籍していた私はどうしても、昔の有力者である「岸信介」、和菓子の名門「とらや」、東大名誉教授の「内藤廣」、施工の「鹿島建設」が結びついてしまうのですが・・・

 

ここは、2003年に岸家から御殿場市に寄贈されたことから御殿場市が岸邸を中心とした文化施設を構想し、2007年10月にとらや工房が開業しています。

 

御殿場のアウトレットも良いですが、ここは心を満たす至上の空間でした。

 

心身をリセットするのであれば最高の場所の一つなので、ぜひお薦め致します。

 

とらや工房のホームページはこちら