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中古物件を購入してリフォームするという選択(その2)

渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行なっている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

前回に続き「中古物件+リフォーム」についてのお話です。

 

まずは、不動産会社やリフォーム会社の選び方についてです。

 

実際の順番として、不動産会社に物件の相談と同時にリフォームの相談も行えば良いのでしょうか?

 

多くの不動産会社は、当然ながら不動産業が主となるので、リフォームを実施できるといっても小規模な工事になる場合が多く、特に中古戸建ての場合は、建物全体の構造体の安全性も考慮しなければならず、こういった住宅性能を含めたリフォームは、片手間で出来る作業ではないため、建築士事務所登録を行っているリフォーム会社に依頼する必要があります。

 

もちろん建築士事務所登録を行っている不動産会社や、逆に、建築士が在籍していないリフォーム会社もかなりの数にのぼります。

 

但し、中古+リフォームで失敗しないためには、最低限、建築士事務所登録を行っている、そして、中古取引時のリフォームが得意なリフォーム会社等を選択する必要があるのですが、一般の方でリフォーム会社の善し悪しを見分けるのは困難です。

 

実は私たちでも、実際に取引があるリフォーム会社で無いと怖くて、使えません。

  

そのため結果的に、不動産会社もしくは不動産会社がお勧めするリフォーム会社を選択するか、ネットなどで見つけたリフォーム会社に依頼することになります。

 

「中古+リフォーム」の相談をしてリフォーム会社の話題になった時に、「信用できますか」「大丈夫ですか」と聞いても、当たり前ですが事業者は当然「できます」としか回答しません。

 

そこで皆さんにとっておきのマジックワードをご紹介します。

 

それが

 

「あなたの会社では既存住宅売買瑕疵保険をかけることができますか?」 

 

この質問の回答がYESの場合、そのリフォーム会社は最低限の条件をクリアしていることになります。

 

既存住宅売買瑕疵保険とは中古住宅の購入にあたって、構造躯体と雨水の侵入に対して最長5年、最大1,000万円の保証を受けることが出来る制度で、国が消費者保護を目的に制度設計した仕組みです。

 

新築の場合は、瑕疵保険の加入(新築は10年)もしくは供託が義務化されていますが、中古住宅の場合は任意になっています。

  

瑕疵保険に加入するためには、住宅瑕疵担保責任保険法人による検査に合格する必要がありますので、検査で一定基準の性能をクリアしていることが証明される(もしくは不具合箇所を修繕する)ことと、中古住宅でも保証が付くという点で、安心・安全な中古住宅取引を実現するには欠かせない制度と言えます。

 

住宅瑕疵担保責任保険法人は現在、株式会社 住宅あんしん保証、住宅保証機構 株式会社、ハウスプラス住宅保証株式会社

、株式会社 日本住宅保証検査機構(JIO)、株式会社 ハウスジーメンの5社となっています。

 

先ほど瑕疵保険をかけることができる事業者は最低限の条件をクリアしていると説明しましたが、瑕疵保険の手続きを行う事業者を制度では「検査会社」と言いますが、この検査会社への登録を行う条件が建築士事務所となっています。

 

検査で指摘事項があった場合は修繕工事が必要になりますが、ここで修繕した内容も含めて保証するという仕組みから、修繕工事を行うリフォーム会社と検査会社が同一でなければならないとする保険法人もあります。

 

その結果「検査会社=リフォーム会社」と認識しておくことが現実的です。

 

◆一定の条件をクリアしたリフォーム会社を選別できる

◆保険手続きで検査が必要なので最低限の性能を確保できる

◆中古住宅でも保証がつく

 

上記内容を担保できるため、中古住宅を購入してリフォームすることをご検討の方にとっては、非常に価値のある既存住宅売買瑕疵保険という制度となります。  

瑕疵保険 

今トレンドワードと言えば、大手中古車販売事業者の不正問題です。消費者の目が届かないことをいいことに数々の不正を行ったとして非難の声が上がり、管轄する行政や警察までもが動き出して、更に数々の不正が明らかになっています。

 

この問題の根っこの部分にあるのは「中古だから何か問題があって当たり前」という概念です。

 

中古住宅にも同様のことが言えます。

 

多くの方が人生の中で最も大きな買い物と言われるマイホームを購入する際に、「部屋の内装や設備は交換したので中古住宅でも安心です」と口だけで説明されてもそう簡単に納得できるものではありません。

 

また、不動産会社から「新耐震だから」「築浅だから」と言われて物件を購入した後で、実際に何かあると「中古だから何か問題があって当たり前です」という話になりがちです。

 

瑕疵保険の検査は現況で問題がないことを証明するものではなく、「中古だからこそ、何か問題があって当たり前」という前提で、購入する物件の悪いところを見つけることが目的で、指摘箇所を修繕した結果、最長5年最大1,000万円の安心が得られるという考え方となっており、そもそも発想が全く異なります。

 

もちろん瑕疵保険基準で全てを補えるわけではありませんが、瑕疵保険の検査基準は主に住宅の劣化に関するものになりますので、リフォーム業界で曖昧だった建物の劣化性能を判断するひとつの重要な目安にもなります。

 

リフォーム会社から「古い家だからこれくらい直しておいた方が良いです」と説明を受けるよりも「瑕疵保険に加入するにはこれくらいの修繕が必要となります」と説明された方が購入者はより安心して判断しやすいと言えます。

 

また、瑕疵保険の制度は第3者である住宅瑕疵担保責任保険法人が保険を付けるということにも意味があります。

 

検査で見落としがあった場合やリフォームに問題があった場合、通常であれば依頼者である不動産を購入された皆様が直接事業者に指摘し、改善を交渉する必要があります。

 

しかし、この消費者と事業者の直接のやり取りしかない構造が問題を更に悪化させる要因となります。

 

瑕疵保険の制度では、万が一の事故の場合、第3者である住宅瑕疵担保責任保険法人という存在が機能します。

 

事故の報告や保険金の請求は検査会社が住宅瑕疵担保責任保険法人に行うのですが、事故が発覚した際に、検査会社が倒産していた場合、住宅所有者が住宅瑕疵担保責任保険法人に直接請求できるという仕組みもあります。

 

瑕疵保険に加入するというのは、住宅に対する保証だけでなく、信頼できるリフォーム会社選びの判断材料や、実施するリフォームの妥当性、第3者である住宅瑕疵担保責任保険法人の存在など、不透明になりがちな中古住宅取引で安心・安全を確保する具体策と言えるのです。

リフォーム一体型のローンを利用する手順 

では、実際に、中古住宅の購入とリーフォーム費用の合計額を金融機関から借入れを行い、大掛かりなリフォーム(フルリノベーション)をする際の進め方の概要をご紹介します。

 

1.初めに住宅購入とリフォームにかかる費用の予算を決める。 

 

不動産購入のために出せる自己資金とご自身の借入限度額の合計金額を計算します。

 

今は低金利なので、最大で年収の13倍まで借りることが可能と言われていますが、一般的には年収の7.5倍程度を上限として考えた方が良いです。

 

理想は年収の6倍~7倍程度以下です。

 

同時にそれぞれの家計にあわせて無理の無い適切な返済可能額も把握して、無理の無い予算をたてることが何より重要です。

 

(例)自己資金200万円で年収が600万円の場合

 200万円+4,500万円(600万円×7.5)=4,700万円となり、これが諸経費も入れた総額の予算となります。

 

一番やっかいなリフォーム費用の予算決めですが、今はネットやリノベーションの専門誌などで、リフォームの内容と費用も掲載されている場合が多いので、自分が行いたいリフォームのイメージとあった掲載物件などを参考にして金額を決めます。

 

今回はリフォーム費用を1,000万円と仮定します。

 

そうなると物件にかけられる費用は諸費用込みで3,700万円となります。

 

物件の購入諸経費は仮ですが8.5%と想定した場合、中古物件に出せるお金は約3,400万円(3,700万円÷108.5×100)になります。

物件購入予算3,400万円

   諸経費 289万円  

リフォーム代1,000万円

    合計4,689万円

 

2.予算が決まったら、次に行うのが物件探しとリーフォーム会社の選定

 

予算が決まったら、次に不動産会社を訪問し、具体的な物件探しを始めるのですが、同時に予め調べておいたリフォーム会社も訪問します。

 

「購入する物件が決まっていないとリフォーム会社に相談できない」は思い込みです。

 

これから住宅購入をするのでリフォームを依頼したい旨を伝え、既存住宅売買瑕疵保険の手続きができるかどうかを確認し、実施したいリフォームのイメージを雑誌やネットなども利用して伝え、どれくらいリフォーム予算を確保しておくべきかの目安を教えてもらいます。

  

ここで重要なのが予算が1,000万円であれば、リフォーム会社にはまずは2割減の「800万円程度が予算です」と伝えましょう。

 

私の経験値から感じることは、必ずと言っていい程、当初の予算よりもリフォーム費用は確実に高くなると言うことです。

 

キッチンやトイレ、クロスからフローリングに至るまで、必ずリフォーム会社が、オプション等も含めてスタンダードタイプと魅力的な機能が付いたキッチンやスタイリッシュな部材などを予め用意してあり、営業を仕掛けてきて、高額な方を薦めてきます。

 

特にシステムキッチンは標準タイプと高価格帯の製品差は顕著でグレードにもよりますが数十万円から数百万円も価格が違うことがあります。

 

その場合、多くの方がせっかくなので、良い品を選ぼうという事になり、それらが積もり積もって、大幅な予算オーバーになってしまうのです。

 

これは人間の本性かも知れませんが、せっかく自分なりのリフォームを行うのであれば多少高くても良い物を選ぼうという心理に傾きます。

 

特にキッチン廻りは、女性の心をくすぐります。

 

という訳で、極力予算内に抑えたいと思っても最低でも1割程度予算オーバーになる方が、少なく見積もっても8割くらいの数になると思います。

 

リフォーム会社数社を訪問することにより、実際に夢をかなえる事が出来る範囲や予算などがわかってきます。

 

そこで、リフォーム費用が確実にあがることがわかれば、予算構成を修正し、その修正した予算を物件探しを依頼している不動産会社に伝えます。

 

多くの場合、予算オーバーになるので、今回は1,000万円の予算に対して、200万円の予算オーバーとして試算します。

物件購入予算3,230万円

   諸経費 270万円  

リフォーム代1,200万円

    合計4,700万円

となり、物件本体価格の上限は3,230万円となり、この予算に収まる範囲で再度物件探しをすることになります。

 

ここで重要なポイントがあります。ポータルサイトで新しく掲載された物件があるたびに、その物件を掲載している不動産会社に電話をして、内覧するのは決して得策ではありません。

 

ポータルサイトに掲載できる会社は売主様との間で媒介契約を結んだ業者、すなわち売主様サイドの仲介会社であり、売主様を最も大切にします。

 

そのため、多くの場合、人気物件なので直ぐに売れてしまいます等の営業トークで言われるがまま、値下げ交渉や諸条件の相談もあまり出来ずに、契約させられてしまう可能性があります。

 

複数の物件を客観的に精査し、売主様サイドではなく、買主様サイドにたって、比較検討をしてくれる不動産会社をパートナーとして選ぶことが最終的に自分自身にとって最も良いマイホームを手に入れる近道となります。

 

物件の内見などを行って購入しようと思える物件が見つかったら、リフォーム会社にその物件を見てもらいます。

 

他に購入希望者がいないのであれば、できれば買付申込前にリフォーム会社にその物件を見てもらいたいのですが、取引の状況によっては買付申込の後になる場合もあります。

 

ここでリフォーム会社に依頼するのが、リフォームの概算見積書の作成です。

 

物件が決まっていますので、物件の状態を見ながら、この物件を購入した場合の実施したいリフォーム内容を伝え、リフォーム費用を確認します。

 

この際に瑕疵保険の検査基準で指摘事項となり得る部分がないかについても見てもらえるとより安心して購入判断を行うことができます。

 

このリフォーム費用と物件価格が購入予算に収まっていれば、取引を進めても問題ありません。

 

予算が足りない場合はリフォーム内容を削るか、借り入れ可能限度額を超えない範囲で購入予算を増やすことができるかを検討します。

 

3.金融機関に事前審査をしてもらい、不動産売買契約へ!

 

購入したい物件とリフォーム費用が決まったら、金融機関に購入したい物件の情報とリフォームの概算見積書を添えて、事前審査をしてもらいます。

 

事前審査で、提出書類に不備が無ければ、1週間から長くても2週間程度で結果が出ます。

 

この事前審査通過の書面と購入申込書をセットにして、購入の意志を伝え、競合等がいなければ、通常1週間以内に契約となります。

 

事前審査の書面がないと基本的には、売主様サイドは契約に応じてくれませんので、具体的な物件が決まる前に借入限度額に近い物件(この物件を当て物件と言います)を事前に選んで、その当て物件で事前に審査を出しておくという手法もあり、実際に多くの不動産会社で行っています。

 

但し、予算が限られている場合、どうしても築年数が古い物件が対象となるため、例えば、築30年を超える物件などは、購入者自体の審査は通過しても、物件で謝絶される場合があったり、物件の差し替えなのに、新規の事前審査と同程度に時間を要する場合があるので、基本は、築古の物件でリノベーションを行う場合には、本当に購入したい物件で事前審査をおこなったほうが良いと思います。

 

4.不動産売買契約後の手順

 

事前審査通過書面と買付による申し込みで、売主様が同意すると、その週の週末か翌週の週末には不動産売買契約となります。

 

不動産売買契約の日程が決まったら、住宅ローンの正式審査のスケジュールを確認して、それに間に合うようにリフォーム会社の見積書の内容チェックと請負工事契約の準備も行います。

 

不動産売買契約が終了したら、リフォーム会社ともリフォームの工事請負契約を結びます。

 

リフォーム会社も実際に何度も見積もりを行い、経費もかかっているので、ここで工事請負契約をすることにより、信頼関係を構築しておきます。

 

このリフォーム費用の見積書は、実際の工事費用に予め予想される追加工事の費用も含めてもらうのがコツです。

  

上記にあげた手続きがなぜ必要なのかと言うと、住宅ローンは住宅の購入とそれに関する費用以外は借入が出来ない契約のため、リフォーム工事の費用も確定して置かないといけないからです。

 

実際問題として、工事で追加費用が発生し、事前審査の際の見積額を超えてしまった場合は、一から審査のやり直しとなり、最悪、追加部分の融資が下りないという状況に陥ります。

 

見積書と請負契約があることによって、住宅関連費用であることが担保されます。

 

この際に、リフォーム会社とも融資利用の特約を付けた工事請負契約を結び、万一融資が実行されなかった場合(謝絶)のリスクヘッジをしておきます。

 

リフォーム工事は所有権移転後(物件の引渡し後)になりますが、不動産売買契約後、所有権移転までに既存住宅売買瑕疵保険の加入手続きを進めてもらいます。

 

おおよそ、このような流れで進めることができれば、リフォーム資金が足りない、家屋の不具合に気が付かないなどの状況を回避しつつ、全てとは言えませんが希望したリフォームを実現することができると思います。

 

また、大切なのは不動産会社の理解を得ることです。

 

リフォーム会社を中心に取引を進めても、物件の売買契約や住宅ローンの手続きなどは不動産会社の役割なので、不動産会社にも主体的に動いてもらう必要があるからです。

 

物件探しの段階で不動産会社に、まとまった規模のリフォームを行いたい旨を伝え、リフォーム会社と協力して取引を進めてもらうように依頼します。

 

但し、この作業は非常に煩雑で手間を擁するので、中古+リフォーム(リノベーション)を実際に行ったことがあり、手間暇を惜しまずに協力してくれる不動産会社を選ぶことが何よりも重要になります。

 

以上、概要となりますが、「中古+リフォーム(リノベーション)」のご説明をさせて頂きました。

 

「中古+リフォーム」は実は、新築注文住宅でしか実現できない「家づくり」を体験出来る絶好の機会です。

 

リフォーム(リノベーション)を行うことで資産価値が上げることはなかなか難しいですが、住宅購入の満足度が違いますし、その後の生活の質にも影響します。

 

それでも中には、私の売買実績の中には、中古住宅+リフォームでかかった費用よりも高値で売却させて頂いた事例もございます。

 

中古住宅をご検討の方は、積極的なリフォームもあわせてご検討してみてはいかがでしょうか。

 

弊社では「中古住宅+リフォーム(リノベーション)」の実績件数が50件を超えておりますので、安心してご相談ください。