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マンションのクレームで最も多いのは上階からの音問題

渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

マンションで最もトラブルになるのが上階からの音です。

 

音のトラブルにもいろいろな種類があり、例を挙げると、椅子を引きずった際の音、スプーンをおとした際の音、スリッパで歩くパタパタという音、ハイヒールのかつかつと歩く音、壁にドリルで穴をあける際の音(リフォーム時やピクチャーレールの設置時)、子供が飛び跳ねた際のドスンという音など実に様々な音があります。

 

戸建であれば、例えば2階の子供部屋でお子様が飛び跳ねてもさほど気になりませんが、マンションの場合は家族ではない第三者でしかも、予告なく、天井から音が響いてくるとなると、1回や2回であればまだしも、週に何回もとか長時間にわたったり、夜間となるとクレームの原因になってしまいます。

 

だからと言って、音が天井からしても必ずしも真上の階の方の音ではない場合もあるのでやっかいです。

 

住民同士のトラブルにならないように住人を特定せずに、掲示板に音がでててしまう場合の例を挙げて注意喚起をするのが一般的かと思います。

 

上記を踏まえ、マンションの音の対策はどのようにしているのか見てきたいと思います。

 

鉄筋コンクリートで出来ている構造床のことをスラブと言い、その厚さをスラブ厚といいますが、基本、スラブは厚ければ厚いほど遮音性は高くなります。

 

以前は180mmのスラブ厚のマンションが標準的でしたが、今は200mm以上が一般的となっています。

 

高級マンションの場合は床スラブが250mm以上の物件もありますが、床の厚さが増すと基本重量が重くなり、柱や梁が太くなったり、小梁が増えたりするので、コンクリートの中が中空(ボイドとは空隙の意味で発砲スチロールが埋め込まれています)になっているボイドスラブ工法を採用するマンションが主流となっています。

 

このボイトスラブ工法を採用し、アツトフレーム工法を利用すれば室内空間がすっきりさせることが可能です。

 

ボイドスラブ工法の場合のスラブ厚は250mm~350mm程度が一般的です。

 

ボイドスラブ工法は、遮音性に優れていると言われていますが、ボイドスラブ工法にも様々な種類があり、決して遮音性に優れているとはいえないものもあります。

 

床スラブが厚い場合には重量床衝撃音に対して効果があります。

 

次に内装で利用する床材の遮音性について、お話しします。

 

マンションの床材には遮音等級を示すL値という指標があります。

 

L値には、LL(Level Light)とかLH(Level Hight)の2種類があり、LLは軽量床衝撃音、LHは重量床衝撃音のこととなります。

 

先ほどお話ししましたが、重量衝撃音に対しては床スラブ厚で対処するので、マンションで使用する床材の場合は、LHよりもLLの方が重要と言えるかもしれません。

 

そのため、単にマンションの遮音等級で、L等級というと軽量床衝撃音のLLを指すのが一般的かと思います。

 

この床材で示される遮音等級で最も使われている床材はLL45が多いと思います。

床衝撃音の具体的な数値 

ではこの40や45という数値は何を意味するのでしょうか。

 

上階の床で生じる音が下の階にどの程度で聞こえるのかの基準として、決められている遮音等級をL値(エルチ)またはL等級(エルトウキュウ)といい、音の伝わりにくさを表しています。

 

この床衝撃音は建築学会が定めた基準で上記の表の通りとなります。このL値は数字が小さいほど、遮音性能がよいことを示しています。

 

LLとは軽量床衝撃音で、スプーンなどが床に落ちた時に響く、小さくて、高い音で、LHとは重量床衝撃音のことで、子供がはしゃいで床でジャンプした際のドンという大きくて重たい音を指します。

 

この2種類の音は、それぞれ階下への響き方が違っているので、対策方法も違います。

 

マンションで求められる遮音性能は、この両方の音に対する対策でそれぞれ遮音等級が定められています。

 

但し、先述したように、重量床衝撃音(LH)はマンションの構造自体であるスラブ厚がかなり重要な要素になるので、床材は軽量床衝撃音(LL)を重視する形となります。

 

マンションの管理規約などで決められている遮音等級は、新築時には既に規定の等級を満たしている床材を使用しているので問題ないのですが、15年近く経つと、リフォームを検討される方も多くなります。

 

その際には必ず管理規約で、室内修繕の規約を確認して規定内の等級を満たす床材を使用するようにしてください。

 

多くの場合は「LL45以上を使用すること」という文言が入っているかと思います。

 

また、まれに、築年数が相当数経過しているマンションの中にはスラブ厚が薄く、現状の床材が絨毯(ジュウタン)となっているケースの場合は、多くの場合床材にフローリングを使用することは出来ません。

  

床材の性能から推定されている「推定L等級」は、生活実感と結びつけることで理解しやすく、便利なものですが、あくまでも一定の想定条件の下での推定指標に過ぎないため、実際には、この想定条件とは異なるマンションではそれぞれ条件や空間性能も違ってくるにも係らず、「L45以上の床材を使えば、音の問題は心配不要」と思われてしまう、又は、そのように誤認させてしまうような説明を販売員がしてしまうシチュエーションが少なからずあるように感じています。

 

マンションは床スラブ・戸境壁が他の住戸とつながっている構造のため、上下階やお隣の生活音が響いてくるケースがあるのは致し方のないことといえます。

 

生活音の伝わりを完全に遮断することは現実的に困難で、仮に過度な対策をした場合には、かえって住み心地に大きな影響を及ぼしてしまいます。

 

また、同じレベルの音であっても、生活する時間帯やそこに住まわれる方個人個人の感じ方は大きく異なります。

 

各マンションデベロッパーは、時代の要請に応じて、更に二重床二重天井にするなどの遮音対策をいろいろ施してきた経緯がありますが、大切なのはそこに住まわれる方の音に対するマナーや、それぞれの気遣いが大切だと思います。 

 

現在お住まいの方やこれから中古マンションを購入して、ご自身でリフォームをしたいと思ってる方は、もちろんリフォーム会社などで確認するべき事項なので、全てをご自身で確認する必要はありませんが、ご自身のご自宅ですので床材の使用制限に関する事項などについては、事前に確認いただく方が良いと思います。

 

中古マンションの場合は内見の時に、居住者(売上)に上階からの音の有無は必ず確認するべき大切な事項だと思います。

 

また、ご購入の決断をする前に事前に管理規約を確認する事も大切です。

  

生活音は仕方がない事ですし、小さいお子様がいらっしゃるご家庭は下階の方に迷惑がかかるかなど心配される方も多いと思います。

 

実際、元気なお子様が飛び跳ねてしまうことによる音と振動で、マンションから戸建に引っ越しをよぎなくされる方が、かなりの数になるのでは無いかと、内見案内をしていると時折感じてしまいます。

 

そのような事にならないよう、マンションのお部屋を選ぶ際には、1階住戸や下階が駐車場になっている住戸、斜面の住戸で下階が無いなどの住戸を選ぶことや、最初から戸建てを購入するといったアドバスも可能ですので、事前にご相談頂ければ幸いです。