· 

新宿区タワマン実態調査(管理組合編)

渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

新宿区では令和元年(2019年)に新宿区内にあるタワマンの管理組合向けにアンケート調査を実施し、28管理組合30棟から回答を得た調査結果を2020年6月にインターネット上で公表しています。

 

調査した管理組合のマンションの概要は 、完成年が新しくなるにつれて、敷地面積及び建築面積が大きくなり、地上階数も高層化、大規模化の傾向が見て取れます。

 

駐車場については、100%以上稼働しているマンションは1件のみで、空きの目立つ状況で、駐車場の外部貸しをしているケースも10件という状況です

 

新宿区のタワマンでは車を所有していなくても不自由が無い点と30代40代を中心にカーシェアリングが浸透しており、車は所有するものではなく、必要な時だけ借りるという意識に変化していることが背景にあるのではないでしょうか?

 

居住者の属性については、最も多い世帯主の年齢層が40歳以上60歳未満のマンションが78.3%と最も多く、世帯構成は、ファミリーであるマンションの割合が60.9%と最も多くなっています。

 

また、世帯主の年齢層が65歳以上の割合が3割程度のマンションが50%と最も多く、築年数が経過するにつれて65歳以上の割合が増加傾向にあります。

 

所有者や管理者が不明で放置されていると思われる空き室については、無いとの回答が92.3%となっており、タワマンは他のマンションと比較して、放置されている状態の空き室は少ないとの結果が出ています。

 

外国人の所有者については、特に問題が無いとした回答が53.6%で最も多く、次いでルールを守らない人が多いとの回答が28.6%あり、国ごとの生活習慣の違いによる問題が垣間見られるタワマンも少なからずあるという結果となっています

 

管理組合運営については概ね適切に行われており、総会は全てのマンションで開催されています。

 

但し、総会の出席割合(委任状・議決権行使書による出席を除く。)については、「1割未満」と「1割以上3割未満」を合わせて80.0%となっており、総会への直接参加は非常に低い状態となっています。 

 

役員の任期については、2年が48.0%と最も多く、次いで1年が40.0%となっています。

 

役員の改選方法については、半数改選が 45.8%と最も多く、次いで全員同時改選が41.7%となっています。

 

全員同時改選の場合、全ての役員が入れ替わると、今までの経緯がわからなくなることもあり、特に大規模修繕工事が絡む場合にはあまり好ましいとはいえないと思います。

 

専門委員会の設置については、52.0%のマンションで設置されていました。 

 

民泊については、全てのマンションが許可していません。

 

懸念事項としては、不特定多数の人が出入りして不安といった声やルールを守らない利用者がいるなどの回答があり、これらはタワマンに限らず都心部の総戸数が多いマンションに共通する課題といえます。

 

管理組合又は自治会におけるマンション内コミュニティとしての取組については、防災対策、祭り・イベント開催、リサイクル・資源回収が主な内容となっています。

 

マンション内コミュニティを活発にすべきかについては、思うとの回答が 64.0%であり、完成年が新しいマンションほどコミュニティを活発にすべきとの考えをもつ管理組合が多いと言えます。

 

町会の加入状況は、マンション全体でまとまって地元町会に参加が42.3%で最も多く、次いで居住者が個別に参加が38.5%となっています

 

マンション全体で町会に加入したいかについては、あまり思わないと全く思わないを合わせて84.6%であり、その理由としては、必要性を感じない、忙しくて町会の活動に参加できないなど様々な意見があるようです。 

 

防災に関しては防災組織の結成と防災マニュアルの作成については、どちらも半数程度であり、その結成・作成時期については、どちらも東日本大震災後の平成26年以降が半数以上となっています。

 

町会の防災活動への組織としての参加については、参加しておらず、参加する予定はないとの回答が62.5%であり、参加している、参加していないが今後組織として参加したいとの回答はどちらも 20%前後となっています。 

 

マンションの公開空地を避難場所として利用した方がよいかについては、思うとの回答が 48.0%で最も多く、わからないとの回答も20.0%となっています。

 

公開空地とは、タワマンなど大規模なマンションを開発する場合に、敷地の一部を誰でもが利用可能な歩道や公園などにして誰でも自由に利用可能にすることにより、容積率や高さ制限、斜線制限等を緩和することができるもので、この手法を総合設計制度といいます。 

新宿区内のタワマン 富久クロス
新宿区内のタワマン 富久クロス

新宿区のタワマンの修繕積立金と管理費 

修繕積立金については、100円/㎡超~200円/㎡・月であるマンションが半数であり、総戸数が少ないほど修繕積立金の単価が高い傾向となっています。 

 

修繕積立金が足りているかについては、足りていると、どちらかといえば足りているの合計と、足りていないがそれぞれ48.0%となっています。

 

また、築年数が経過するにつれて修繕積立金が不足する傾向となっています。

 

令和6年6月に改訂された、マンションの修繕積立金に関するガイドラインでは、20階以上のタワマンは240円/㎡~410円/㎡・月、平均で338円/㎡・月が修繕積立金の目安となっています。

 

更に機械式駐車場がある場合は、その分は別途となっており、新宿区内のタワマンの修繕積立金の積立額は同ガイドラインの半額程度の状況となっており、今後の大規模修繕工事の際の資金不足が懸念されます。

 

また修繕積立金を値上げしたことがある管理組合は14件、63.6%となっており、36.4%の管理組合が修繕積立金の値上げを行ったことが無いという結果になっています。

 

管理費については、200円/㎡超~300円/㎡・月であるマンションが41.7%であり、総戸数別や築年数別での大きな差異はありませんでした。

 

通常は管理戸数が少ない場合は割高になり、500戸以上の大規模マンションの場合も、共用部の施設の維持費や24時間有人管理などによる人件費などの負担で高くなる傾向にありますが、タワマンの場合多くがある程度の戸数がある大型なマンションと想定されるため、あまり大きな差異が見られなかったものと思われます。

 

国土交通省が行った令和5年度のマンション総合調査のデータでは、調査対象のマンション全体の菅里費(使用料・専用使用料からの充当額を含む管理費総収入)の平均値は230.1円/㎡・月となっていますが、20階以上のマンションの管理費の平均値は338.5円/㎡・月となっています。

 

管理費が足りているかについては、足りていると、どちらかといえば足りているの合計が88.5%でしたが、築年数が経過するにつれてどちらかといえば足りているの割合が増加する傾向となっており、また都心部の高級マンション程管理費が高くなる傾向にあります。

 

管理費及び修繕積立金の滞納については、ないと、1%以下を合わせて82.2%となっています。 

 

タワマンの設備・建物についての不具合については、築年数が経過するにつれて不具合の箇所が増える傾向となっています。

 

平成21年以降に建設されたタワマンでも、66.7%は、設備故障や地下の漏水など、何らかの不具合を抱えている状況となっています。

 

大規模修繕計画については、作成中を含めると、全てのタワマンで作成しており、大規模修繕工事の実施は半数のタワマンが行っていました。

 

また、設備の大規模修繕については、各修繕部位について今後5年間に工事実施予定と予定なしの回答が大半となっています。 

今後の取り組みと要望について 

今後の取組については、現在取り組んでいる、又は今後取り組んでいきたい事項に関しては、防災が最も多く、次いで防犯、高齢者の支援、コミュニティづくりの順となっており、築年数が経過するにつれて高齢者支援の割合が高くなる傾向となっています。

 

他のマンションでの取組事例についての情報を知りたいかについては、思うとの回答が76.9%となっています。 

 

行政への要望として、新宿区が行っているマンション関連事業の認知度については、ほとんどの事業で知らないとの回答が半数以上ありましたが、ほとんどの事業について、知らないと回答した管理組合がマンション関連事業の活用や参加を検討したいとの回答が、活用・参加の予定はないとした管理組合を上回っています。