渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。
東京都では、マンションに対する様々な悩みや相談に対応するためのマンションポータルサイトを運営しています。
その中の、「建替え・改修・敷地売却」で、マンション建替法に基づく建替え・敷地売却事業事例一覧で、2013年(平成15年)~2024年3月末日までに認可したマンション建替えの事例をオープンデータとして公開しています。
このデータには、耐震偽装による建替えは含まれていません。
全部で94の事例があり、マンションの竣工年から事業認可を受けた年までの平均期間がわかります。
この平均期間は、言い換えればマンションの平均寿命であり、94事例の平均は46年となっています。
最も早く解体が決まったのは、2010年に事業認可を受けたクレストフォルム南町田で築12年ですが、事業の施行者がマンション建替組合ではなく、個人施行(伊藤忠都市開発株式会社)なので、例外扱いとすれば、2007年に事業認可受けた初台サンハイツが築29年で取り壊しが決まり事業認可を受けており、最も築年が浅く取り壊されたマンションということになります。
初台サンハイツは地上4階建で住戸数が40戸でしたが、建替え後は地上14階建住戸数86戸のマンションに生まれ変わっています。
最も築年数が経過していたマンションは2018年に事業認可を受けた丸山町南住宅1号棟及び2号棟で築63年経過していました。
地上4階建2棟で住戸数32戸のマンションが地上5階建1棟で住戸数が58戸のマンションに生まれ変わっています。
令和(2019年)以降のマンション建替えは33事例
令和(2019年)以降のマンション建替え事例は33件で、マンションの寿命は平均で49年となっています。
地震に対する耐震性の問題や築年数が古いためにマンションを建替えするのは大前提なのですが、都心部で新たにマンションを開発する土地が枯渇していることも大きな要因となっているようです。
マンションの建替え事業は多くの時間と労力を要する事業であり、また専門性も高いため、少なくとも何らかの形でマンションデベロッパーに参画してもらわないと事業が立ち行かなくなるリスクが高まります。
築古マンションの場合は、容積率を消化していないマンションも多く、建替えを行った場合、既存よりも2倍以上住戸数が増える事例も相当数あり、余剰住戸を販売することにより、デベロッパーも採算のあう事業として参入しやすく、建替え費用の出費もかなり抑えることが可能になります。
更に、東京都のマンション再生まちづくり制度を利用すれば更なる補助金も期待できます。
そのため、今まで事業認可がおりたマンション94事例では建替え前のマンションの住戸数よりも住戸数が平均して83戸も増加しています。
逆に住戸数が減ったのは1物件のみで、2018年に認可が下りたライオンズマンション一番町第2で地上9階建117戸のマンションが地上14階地下1階建97戸となり、住戸数は20戸減っています。
これは日本で最も路線価が高いエリアと言われる千代田区番町エリアで、土地の評価が非常に高かったことと、既存の区分所有者が建物の持ち分を買い増しした事などによるものと思われ、非常に特殊なケースと思われます。
また住戸数が建替え前のマンションの住戸数と変わらなかったのは、先述した例外的なクレストフォルム南町田と2011年度に認可が下りたベルコリーヌ南大沢5-6団地で、建替え前も建替え後も、全く同じ地上14階5棟146戸です。
但し、ベルコリーヌ南大沢もある意味特殊な事例で、日本のマンション市場空前の欠陥住宅として裁判が何年も続いた、住宅都市整備公団の黒歴史物件のため、例外扱いをした方が良いかと思います。
そうなると、94の事例は実質92の事例となるので、ライオンズマンション一番町第2の1物件のみが、住戸数が唯一減った事例といえ、約98.9%の建替え事例が住戸数が増加した案件となり、住戸数が増加しないマンションの建替え事業は非常に事業成立が厳しいというのが現状かもしれません。
更に1997年(平成9年)9月1日に施行された改正建築基準法で、共同住宅(マンション)の共用廊下や共用階段の床面積を建築物の容積率の算定の基礎となる延べ面積に算入しなくても良くなったので、この規定以降のマンションは、恐らく、隣地の戸建や駐車場などの土地を一体として新たな再開発等をしない限り、余剰住戸を増やすことは出来ないと思います。
また、現在は建築費が非常に高く、分譲マンションの建築坪単価は200万円とも言われる世界なので、都心部の中でも特に希少性が高く、利便性に優れた立地にある築古マンションで無いとマンションの建替えは非常に厳しいかもしれません。
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