渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行っている株式式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。
管理不全マンションとは、維持・管理や修繕が適切に行われず、外壁が落下するなど周辺にも悪影響を与えている状態のマンションを指します。
また、管理不全の兆候がみられるマンションは、管理運営における体制の未整備や資金不足等により、維持・管理が適切に行われず、そのまま放置すると管理不全に陥る恐れがある状態のマンションを指します。
築年数が相当数経過したマンションには「建物老朽化」と「居住者(区分所有者)の高齢化」という2つの「老い」が迫っているとされています。
実際に東京都内の築40年以上のマンションの6割に30年以上の長期修繕計画がありません。
また、居住者の高齢化率も高く、マンションの管理がしっかりと行われておらず問題が発生しているマンションも相当数あると言われています。
このような状態を東京都は問題視しており、マンションポータルサイトで「管理」「耐震化」「建替え・改修・敷地売却」という3つのコーナーを設けて、事態の改善のために様々な対策を打ち出しています。
東京都住宅政策本部によると、2021年末時点で東京都内の分譲マンションの累積着工戸数は下記のグラフの通り約194.3万戸となっています。
管理方法を定める区分所有法が改正された1983年(昭和58年)※以前に建てられたマンションは2023年3月末時点で都内に1万1,459棟あり、このうち東京都の条例が義務づける管理状況の届出をしたマンションは1万440棟だったようです。
※一棟の建物を区分してその各部分ごとに所有権の目的とする場合におけるその所有関係を定めるとともに、 そのような建物及びその敷地等の共同管理について定めた法律
管理状況届出制度では、戸数や階数などのマンションの概要や、管理組合や長期修繕計画の有無などを記す必要があり、国土交通省のガイドラインでは長期修繕計画は30年以上とされていますが、届け出のあったマンションの6割にあたる約6,300棟で30年以上の長期修繕計画が作成されていない状況になっています。
また、都内の築40年以上のマンションの3割にあたる約2,800棟は長期修繕計画そのものが無く、また長期修繕計画があったマンションも計画が30年未満だったり、修繕の期間を定めていないなど、管理不全の兆候が見られる事態となっています。
管理状況の届出があった1万440棟のうち5.4%は修繕積立金がなく、管理組合がないマンションも5.0%という結果だったようです。
管理状況届出制度は2024年11月18日に掲載した「東京都におけるマンション管理状況届出制度」に内容を詳しく掲載していますので参考にしてください。
マンションは適切な管理と修繕を続けることで資産価値を維持又は場合によっては価値を上昇させることも可能です。
適切な修繕を続けていくには、時期や費用の長期的な計画を立て、区分所有者から修繕積立金を集める必要があります。
長期修繕計画がないと必要な資金の目途がたたず、重要な修繕ができなければ、外壁が剥離して落下するなど危険なうえ、マンションの資産価値に悪影響を及ぼしかねません。
先述したように東京都は適切な管理をしてもらう対策として、管理状況を届け出たマンションに対して、組合の求めなどに応じてマンション管理士を無料で派遣する仕組みなどを用意しています。
管理不全の兆候がある場合は5回まで無料とし、マンション管理士は長期修繕計画の作成や修繕積立金の設定に関する相談などに応じ、管理状況の無届けマンションに対しては届け出を呼びかけています。
管理状況届出制度は東京都の条例で定められており、2020年(令和2年)4月から開始しています。
届出が必要なマンションは1983年(昭和58年)12月31日以前に新築されたマンションのうち、居住の用に供する独立部分が6戸以上のものとなっていますが、要届出マンション以外のマンションであっても、東京都が、管理不全の兆候があると思われると判断した場合には、その管理組合は、管理状況を届け出なければならないと定められています。
また、要届出マンション以外のマンションであっても、任意に届出を行うことができます。
【東京都内の分譲マンションのストック数の推移】
要届出マンションの購入について
マンションの長期的な管理不全のリスクが高まるなか、同時に居住者の老いも懸念される事項になっています。
国土交通省によると、2022年末時点で築40年以上のマンションは全国で約126万戸あり、10年後には約261万戸、20年後には約445万戸に増える見込みとなっています。
国土交通省では管理組合や区分所有者のマンション管理の実態を把握するための調査を5年毎に行っており、最新の令和5年度(2023年度)マンション総合調査によると、完成年次が古いマンションほど70歳以上の割合が大きく、1984年(昭和59年)以前のマンションにおける70歳以上の割合は55.9%となっています。
また完成年次が同じく古いマンションほど、賃貸住宅があるマンションの割合が大きくなており、これも管理不全マンションに陥る可能性が高くなる兆候です。
2023年度マンション総合調査はまだ概要しか公表されていませんので、更に詳細なデータとして2018年度マンション総合調査を見てみると、1979年以前に完成したマンションでは、世帯主が60歳以上の割合は8割弱にのぼっており、2010年以降に建てられたマンションでは2割未満で、古いマンションほど居住者の高齢化が顕著となっている実態がわかるデータとなっています。
このようなマンションでは、マンション住人の高齢化が進むと管理組合の担い手が減り、管理不全に陥りやすくなり、負のスパイラル状態に陥る可能性が高くなります。
東京都23区内のマンションの価格の高騰がとまらない中、若い世代でマンションを購入しようと考えている人や都心部マストで専有面積が広いお部屋に住みたいという方は、築年数の経過したマンションに目が行きがちです。
そうなると必然的に要届出マンションを選択することになります。
もちろん、築年数が40年を経過したマンションであっても、新耐震基準を満たしていたり、築50年でも大規模修繕工事を行い、建替えではなく、更に長期的に維持保全を目指すマンションも相当数あります。
ただし、管理体制がしっかりしていない築古マンションは、知らず知らずの内に、建物と居住者の老いが連鎖して加速する可能性があり、負のスパイラルに陥る前に現状を正確に把握し、対策を急ぐ必要があります。
どうしても要届出マンションを購入するのであれば、あくまでも私の経験上での確率論のお話になってしまいますが、規模が100戸を超えるマンションの方が安全です。
100戸を超える要届出マンションは、規模が大きいために区分所有者の中に必ず1級建築士やマンション管理士、ゼネコンの社員や工務店や設備関係の社長がいたりするからです。
また、区分所有者の中には新築時から住んでいる方もおり、最低2回~3回は大規模修繕工事を経験しており、その経験値が活かされる可能性が高いからです。
これに加え、時代に応じた管理規約の改定や長期修繕計画の見直しなどを行っているマンションであれば、より安心度が高まると思います。
いずれにせよ、築年数が相当数経過したマンションにおいては、建物修繕だけでなく、そこに住む住人の老いの問題もあり、修繕等が進まないリスクが発生することも事実です。
その面からの考察としては、物件の購入を決める前に、そのマンション内の住戸が今までどれくらい再販されているか、担当の不動産会社の営業マンに確認してもらうのが良いかも知れません。
マンションはある程度の売り買いが発生することにより、マンション内の住人の流動化が進み、住む人の追いをある程度防ぐことが可能になります。
弊社が業務提携している、個人向けのリノベ会社が同じマンションでも複数回フルリノベしたことにより、マンションの住民が若返り管理組合が活性化したというウソのような本当の話があります。
そのマンションは私だけでも、複数人をご案内させて頂き、数年前ですが実際にご購入頂いたこともあります。
コメントをお書きください