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リフォームしてから家を売るのは得なのか!?

渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

ご自身のマイホームを住み替え、又は、相続した家を売却する際に、果たして、リフォームしてから売却する方が高く売ることが出来るのでしょうか?

 

私の経験値から申し上げると、現在の市況では少なくとも、都心部及び近郊のマンションは、ご自身でリフォームしてから売却することは止めた方が良いと思います。

 

戸建に関しては築年数や物件の状況に応じて、戸建て業者に売買した方が良いのか、簡易なリフォームをする方が良いのか、修繕記録やシロアリ対策等はしっかり行っているのか?施工会社が大手ハウスメーカーなのか否かなどによってその都度変わってきます。

 

一時は、「売る前にリフォームした方が得」という見方が一般的でした。

 

これは、買い手がすぐに住める状態を求めていた時代の名残りです。

 

今は、再販買取会社(業者)がその役目を担っています。

 

買主の立場にたてば、個人の方が売主としてリフォームして、何か不具合があったとしても、一般的には、不具合の責任を持つのは3ヵ月ですし、契約不適合責任を免責にされてしまう物件もあります。

 

一方で、売主が業者の場合は最低2年間は契約不適合責任を負う必要があり、場合によっては独自にアフターサービスを10年間つけている業者もおり、中古物件を購入した後の安心感が全く異なります。

 

次に、現在建築費は非常に高くなっており、個人の方の取引と大量に工事を発注している業者とは、全く工事費用が違ってきます。

 

建築のプロでない個人の方はどこまで工事を行えばいいのかわからず、また、追加工事を建設会社から求められた場合に、その内容を精査することも出来ずに支払わないといけないことになりかねません。

 

そして、もうひとつ見過ごしてはいけない時代の大きな流れの変化があります。

 

それは、個人の方がご自身でリフォームをするという新たな選択肢の台頭です。

 

別に新築ではなく中古で良いという一次購入層の心の変化 

不動産の一次購入層である30代~40代のかたは、新築の物件価格が高すぎるという紛れの無い事実はありますが、中古物件に対してあまり嫌悪感を持っていません。

 

タイパ、コスパを重視し、車を持つことがステイタスではなく、その都度利用目的にあった車をカーシェアリングする、移動手段として電動キックボード「LUUP」を賢く利用するする一方で、ヴィンテージものや昭和の古き良き時代に憧れるかたも多く、ジーンズなどの自分自身が気に入った一点ものにはお金をかけても購入するという傾向にあります。

 

このような時代背景から、中古住宅を購入してからリフォームやリノベーションを施し、自分の好みに合わせた空間を作りたいと考える人が増えおり、自分で好きなように空間をカスタマイズする楽しみを重視する傾向があります。

 

このような買主にとって、売却前にリフォームされた住宅は、すでに他人の好みが反映された家と感じられ、場合によっては自分でリフォームする余地がないという判断になってしまいがちです。

 

 

たとえば、床材や壁紙の色、キッチン設備やデザインなどは個人の好みが分かれる部分です。

 

売却前のリフォームが売主のセンスで行われてしまうと、買い手にとってはむしろ、不要なコストが販売価格にオンされていると感じてしまいす。

 

また、リノベを好まれる方は、一旦住居内をスケルトンにしてから自分たちの好みにあわせる室内を一からつくる傾向が強く、そうなると、新たにリフォームされたものが全く無駄になってしまいます。

 

一方で、リノベは思ってように手軽にできる物ではありません。

 

自分のイメージにあった内装にや間取りにするためには、設計やインテリアプランナー等の助か江も必要になるし、建設会社も探す必要があります。

 

それに、どのような中古物件が、リノベーションに適しているかも見分ける必要があります。

 

このような状況下で、人々のニーズを掴んだのが、リノベ請負の専門会社です。

 

通常、一般の方が個人でリフォームすることはハードルが高く、例えば資金的な面でもハードルがあります。

 

リフォームする費用全額と購入諸費用を自己資金で賄うことができるくらい自己資金に余裕があり、建築に関係している仕事や大学の建築学科を卒業している人であれば、話は別ですが、リフォーム費用の精査は難しく、また、リフォーム費用と物件価格全額を住宅ローンで同じ金利で組める金融機関が増えてはいますが、まだまだ少数なのが実情です。

 

住宅ローンは住宅購入とその諸経費以外には使うことが出来ないので、住宅ローンを組む際には、同時に建設会社と請負契約を結ぶ必要があり、これも個人の方がご自身でリフォームするという選択肢が限られてしまう原因の一つでした。

 

更に、建設工事は追加工事がつきものなので、その追加した分を新たにローンに組み込むことは基本出来ないので、その分はいずれにしろ、自己資金が必要になります。

 

 

リノベ請負の専門会社は、これらの手続きを全て代行し、その手続き代行費用は建築費と設計費に諸経費としてオンする形で利益を出し、急成長を遂げてきました。

リノベ会社が中古物件の価格を押し上げている?? 

 

リノベ請負会社は、そもそも、お客様がリノベしていない中古物件を購入してくれないと仕事にならないので、通常であれば室内が汚れていれば値下げ交渉するのが当たり前のところを、「下手に値引きして競合が現れたら中古は1点ものなので買えなくなり一生悔やむことになります」と話し、お客様を納得させて、購入してもらいます。

 

20年程前は競合がまだまだ少なかったので、先述したような、値引き交渉はしないというスタイルではなく、値引交渉をしても、競合と言えば、再販買取会社だけで、再販買取会社の購入価格は二束三文でしたので、顧客のために、最大限のコスト削減のための努力も惜しまなかったのですが、2012年頃以降にはリノベ請負会社が次々と現れた結果、通常であれば値引きされる物件が値引きされずに成約していくことが常態化していき、その結果、不動産価格はじりじりと上昇していったのです。

 

但し、これが出来るのは不動産価格が上昇局面であるか、希少価値のある立地に位置する物件でないと厳しいです。

 

なぜなら金融機関は物件を担保として住宅ローンの融資を行っているので、そもそも諸経費まで貸した場合、直ぐにローンが不履行になったら、担保不動産だけでは貸した金額が返ってこないからです。

 

これにリノベ費用が加われば更に、貸したお金が返ってくる確率は低くなってしまいます。

 

リノベすれば価値が上がるというのは理屈でわかっても、それに責任を持てないのが金融機関の融資担当者ですが、確かに個人が行ったリノベーションは独自性が強い物件も多いので、新築物件のように評価できないのも致し方ないことです。

 

売却前のリフォームは全く必要ないのか? 

 

では、全く手をかけずに売り出した方が良いのかというと、一概にはそうとも言い切りません。

 

リフォームではなく、最低限のメンテナンスを行うことは一定の効果があります。

 

たとえば、外壁の塗装や、玄関のドアの補修、床のクリーニングなど、購入者が気になる部分をきれいにすることで大切に住まわれていた家という印象を与えることができます。

 

こうした手入れは、売却価格を大きく上げることは難しいですが、売却スピードを早める効果が期待できます。

 

つまり、あまりお金をかけずに少しでも印象を良くすることで、購入希望者が増えやすくなるメリットがあります。

 

もし、リフォームを行うのであれば、その費用を売却価格にどれだけ上乗せできるかを冷静に見極めることが大切です。

 

たとえば、数百万円をかけてフルリフォームを行っても、その分がそのまま売却価格に反映されるとは限りません。

 

なぜなら、住宅の立地や築年数、周辺の住宅相場といった要素も売却価格に大きな影響を与えるからです。

 

 

賢いやり方としては、リフォーム費用が売却額にどう反映されるかを事前に査定してもらうことです。

 

不動産会社に依頼し、地域の相場や需要を把握した上で、リフォームによる価値の上昇が見込めるかを相談し、リフォームを行うか、又は、行わなくても売却できるのか等を見極めることが重要です。