渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。
阪神・淡路大震災から30年が経過し、南海トラフ大震災の発生危険率が高まっている中で、あらためて震災時の心構えや、用意しておくべき物などについて考える必要があります。
日本に移住して働く外国人も増え、法務省出入国在留管理庁によると2024年6月末現在における在留外国人数は358万8,956人となっており、過去最高を更新しています。
更に2024年の訪日外国人数が3,686万9,900人となり年間3,600万人超えで過去最高になったと報じられており、単純計算でも1日に外国人が日本に10万人を超える外国人が訪れている計算になります。
このように外国人が多く滞在する中でもし、南海トラフ大地震が発生してしまったら、日本語をしゃべれない外国人の人たちは一体どうなってしまうのでしょうか。
海外からの旅行者や働く外国人が増えるなかで、災害時に必要な情報を適切に伝える重要性が高まっており、「やさしい日本語(Easy Japanese)」が重要なキーワードになっています。
【東京都の外国人向けの防災リーフレット(令和2年3月発行)】

やさしい日本語とは
「やさしい日本語」とは、普段使われている言葉を、日本語を母国語としない外国人にも分かるように配慮した簡単な日本語のことで、日常的な場面や身近な話題で使われる日本語を「ある程度」理解できる人が使うレベルをさします。
1995 年に起きた阪神・淡路大震災で、日本にいた多くの外国人が、日本語を十分に理解できず、必要な情報を得られず、適切な行動を取ることができずに被災し、大変なおもいをしました。
このことを教訓に、災害発生時に、日本語が不慣れな外国人に、素早く的確に情報を伝えることを目的に考案されたのが「やさしい日本語」です。
それでも、東日本大震災では、当初交通機関が停止する状況で、十分な情報が外国人には伝わらず、大きな混乱を招いたとされています。
「やさしい日本語」を考案した当初は、災害時の情報伝達手段として使われていましたが、現在では、自治体や外国人支援団体で、生活情報や観光情報などを伝える手段としても使われるようになっています。
また、「やさしい日本語」は、外国人への情報伝達を目的に考案された言葉ですが、普通の日本語より簡単で、分かりやすい言葉であることから、小さな子どもや高齢者、障害を持った人などにも有効な情報伝達手段だと考えられるようになっています。
外国人対象の内容だけでなく、子ども、高齢者、障害を持った人などを対象に情報を発信する際にも、「やさしい日本語」は有効に活用するべきものです。

やさしい日本語の重要性と課題
東京都つながり創生財団の2022年の調査によると1都3県の在住、在勤、在学外国人への質問で、「知りたい情報のチラシなどをどの言語で読みたいか」尋ねたところ、38.5%と「やさしい日本語」が最も多くなっており、「やさしい日本語の有効性が確認されています。
日本に住む外国人の国籍の多様化は進んでおり、日本に住む外国人の国籍を見ると、1988年には全体の7割強が韓国・朝鮮でしたが、2019年には中国、韓国、ベトナム、フィリピン、ブラジルの5か国を合わせて7割強になっており、上位10の国籍・地域の公用語だけでも9言語に上ります 。
外国人が日本で安全に安心して生活するためには、法律などのルール、在留や社会保険などの手続、災害・避難情報をはじめとする国や地方公共団体からのお知らせなどを正しく理解することが必要です。
また、2020年8月に出入国在留管理庁と文化庁から出版された「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」によると、受け手である外国人の言葉のニーズとして、生活のための日本語に関する調査をした結果では、日常生活に困らない言語を日本語とした外国人は約63%に上り、英語と答えた外国人の44%を大きく上回っています。
また、法務省による調査でも、日本語で会話ができると答えた外国人は8割を超えており、さらに、東京都国際交流委員会の調査では、「希望する情報発信言語」として「やさしい日本語」を選んだ人が最も多く76%、「英語」が68%、「日本語」が22%、「機械翻訳された母国語」が12%、「非ネイティブが訳した母国語」が10%と、「やさしい日本語」に対するニーズが高いことがわかっています。
その一方で、文化庁が2020年に実施した国語に関する世論調査では「やさしい日本語」を知っている日本人が29.6%しかいないことがわかっており、発信する側の日本人と受け手である外国人とでは、「やさしい日本語」に対する認知度や重要性に関する意識が、かなり乖離している状態となっています。
当然、やさしい日本語の取組を進めることと同様に、多言語での情報の提供や、外国人の日本語学習の機会の確保が重要であることは、言うまでもなく、また、コミュニケーションの導入としてやさしい日本語を使い、複雑なことを伝える際は、多言語化された資料を用意するなど、使い分けも必要です。
また、先述した「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」ではポイントとして下記の事項をあげています。
ステップ1
・1文は短くする
・3つ以上のことは箇条書きにする
・回りくどい言い方や不要な繰り返しはしない
・外来語(カタカナ語)はなるべく使用しない
ステップ2
・二重否定は使わない
・受身形や使役表現をできる限り使わない
・簡単な言葉を使う
・曖昧な表現は出来る限り使わない
・文末は「です」「ます」で統一する
・重要な言葉はそのまま使い、<=・・・>で書き換える
・漢字の量に注意してふりがなをつける
・時間や年月日の表記はわかりやすくする
ステップ3
書き換え案ができたら、日本語教師や外国人に、わかりやすいかどうか、伝わるかどうかをチェックしてもらうとしています。

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