
渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。
「マンションすまい・る債」は、マンション管理組合が行う修繕積立金の計画的な積立てをサポートするための債券で、住宅金融支援機構が国の認可を受けて年1回発行しています。
2024年は10月に受付を終了しており2025年は春から受付が開始されると思います。
「マンションすまい・る債」の主な特徴は以下の4つです。
①利付年債で、毎年1回(2月予定)定期的に利息を受け取ることができ、利息は毎年段階的に増加します。
②1口50万円からで複数口購入可能で、最大10回継続購入できます。
同一口数であれば、1回以上最大回(毎年1回)まで継続購入して積み立てることができます。
③初回債券発行日から1年以上経過すれば、手数料なしで修繕工事等のために1口50万円単位で中途換金が可能です。
また、中途換金時には、購入金額(元本)に所定の利息を加えた金額で受取が可能です。
④住宅金融支援機構が国の認可を受けて発行している債券なので安心です。
またマンション管理組合の特典として、住宅金融支援機構の「マンション共用部分リフォーム融資」を利用した場合、「マンションすまい・る債」で積立てを行っていないマンション管理組合より融資金利が年率0.2%下がります。
返済期間が1年以上10年以内の融資金利は2025年2月現在で0.97%なので「マンションすまい・る債」で積立をしていれば、金利は0.77%に下がります。
更に、マンション管理計画認定制度(「マンションの管理の適正化の推進に関する法律(平成12年法律第149号)」に定める管理計画を作成し、都道府県等の⻑の認定を受けていることが必要)を取得していれば、更に0.2%金利が下がるので、金利は0.57%となります。
また、この融資を受ける際に、公益財団法人マンション管理センターに保証委託する場合には保証料が一般の管理組合よりも2割程度安くなります。
下記の表が保証料となります。

「マンションすまい・る債」で積立を行っていれば、特定管理組合に該当するので、上記表の下の保証料の計算方法になります。
そのため[保証料の計算方法]の例で示されている637,800円を510,000円の保証料に抑えることが出来ます。
料率で言うと、一般管理組合であれば保証料率に換算すると2.55%ですが、「マンションすまい・る債」で積立を行っていれば2.04%となります。
民間の金融機関の住宅ローンの保証率がだいたい2.2%なので、「マンションすまい・る債」で積立を行っていれば、それよりも安い保証料ということになります。
大規模修繕工事の際には借入れをしないで積み立ててきた修繕積立金だけで済ませるのが理想ですが、ただでさえ高騰している建築費が今後も上昇し続けた場合は、「マンション共用部分リフォーム融資」を受けざる得ない管理組合もかなりの数にのぼると予想されます。
そのような状況下で、「マンションすまい・る債」での積立を検討することは、一つの選択肢として頭の中にいれておいた方が良いかと思います。
マンションすまい・る債のしくみ
「マンションすまい・る債」は利付10年債で購入した年次以降は、毎年1回利息の支払いがあり、10年後の満期時には、毎年の利息に元本を加えた金額が支払われます。
そのため下記のグラフのように利息額は毎年段階的に増加していきます。

「マンションすまい・る債」は先述したように複数口購入することが出来ますが、購入金額については原則として、「マンション全体の1年あたりの修繕積立金額」と「前年度決算における修繕積立金会計の残高(残高から借入金額を除いた額)」の合計金額の範囲内となります。
また、先述したように継続購入は可能ですが、途中で1回あたりの購入口数の変更や、複数年分をまとめて購入することは出来ません。
継続購入を中断し、その後再び購入する場合や購入口数を変更する場合は、新規に応募して購入する必要があります。
マンションすまい・る債による修繕積立金の運用が増加
「マンションすまい・る債」の2024年度の応募数は前年度比で3割増しになっており、応募数は3,592管理組合で、直近の2年で約1.92倍にまで増加しています。
「マンションすまい・る債」の2024年10月発行分の利回りは税引き前で0.5%、マンション管理計画認定制度を受けてる管理組合の場合は0.55%となっており、メガバンクの普通預金の0.1%(3月から0.2%)と比較すれば、金利は高いですが、建築費の上昇分を補填できるような金利水準ではありません。
ここ数年で管理会社が物価高と人手不足を背景に、管理費をあげるる提示をしてきており、また、相次いで修繕積立金の増額も進んでいます。
このような状況下で、今まで多くの管理組合が普通預金で管理していたお金を、少しでも運用しないと修繕積立金の不足分を全く補えないと肌で感じ始めているのではないでしょうか。
特に大規模マンションの修繕積立金は数億円になることも珍しくありません。
仮に1億円を現在の普通預金の利率0.1%で普通預金に1年間預けた場合は10万円(実質8万円)の利息収入ですが、マンション管理計画認定制度を受けてる管理組合が同じ1億円で「マンションすまい・る債」を購入した場合、1年後には5.5倍の55万円(実質44万円)の利息収入が得られることになります。
国土交通省による「マンション総合調査(令和6年6月21日公表)」では、現在の積立額が計画に比べて不足しているマンションが36.6%にのぼり、その内、不足の割合が20%超えのマンションが11.7%となっています。
マンションの修繕積立金は万が一にも元本割れのリスクは避けたいので、自ずと運用は限られてしまう中では「マンションすまい・る債」はやはり魅力的な商品だと言えます。
日銀の追加利上げもあり、「マンションすまい・る債」も2025年の募集で金利が上がる可能性は高いので、今後も管理組合の資金運用の1つの手段としては、ますます注目されていくものと思われます。
【マンションすまい・る債の募集結果の推移】


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